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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第20回 「権利擁護と成年後見制度」

皆さん、こんにちは。今回は「権利擁護と成年後見制度」を取り上げます。苦手に感じる受験生が多いかもしれませんが、身近な行為を法律的な視点で考える訓練をしていきましょう。

まず前回の「保健医療サービス」の課題の解説をしていきます。

第25回精神保健福祉士国家試験「保健医療サービス」

問題72 診療報酬制度に関する次の記述のうち、正しいもの1つ選びなさい。

  • 1 診療報酬の点数は、通常3年に1度改定される。
  • 2 診療報酬点数表は、医科、歯科、在宅医療の3種類が設けられている。
  • 3 療養病棟入院基本料の算定は、出来高払い方式がとられている。
  • 4 地域包括ケア病棟入院料の算定は、1日当たりの包括払い方式がとられている。
  • 5 診療報酬には、選定療養の対象となる特別室の料金が設けられている。
正答 4

解答解説

    • 1 × 診療報酬の点数は、2年に1度改定される。社会保障審議会が基本方針を決定し、その方針に基づいて中央社会保険医療協議会が審議し、その答申に基づいて厚生労働大臣が決定する。
    • 2 × 診療報酬点数表は、「医科診療報酬」「歯科診療報酬」「調剤報酬」の3種類に分かれている。診療報酬の単位は、1点10円で全国一律となっている。
    • 3 × 療養病棟入院基本料の算定は、包括払い方式がとられている。出来高払い方式をとっているのは、通院医療である。
    • 4 〇 包括払い方式とは、入院1日あたりの医療サービスの費用に基づいて、患者の入院日数に応じて診療報酬を設定する方法である。
    • 5 × 選定療養の対象となる特別室の料金は、診療報酬には含まれない。なお、選定療養、評価療養、患者申出療養は保険診療との併用が認められており、選定療養、評価療養、患者申出療養の部分は全額自己負担となるが、保険診療の一部負担以外の部分は保険外併用療養費として支給される。

いかがでしたか。それでは、今回の「権利擁護と成年後見制度」について、出題基準に沿って過去の出題傾向を分析し対策を立てていきます。


相談援助活動と法

相談援助活動において想定される法律問題

福祉サービスを提供する事業者と利用者の契約行為、消費者保護のための消費者契約法について整理しておきましょう。

日本国憲法の基本原理の理解

憲法における基本的人権の自由権、平等権、社会権、参政権、受益権について、それぞれの権利の内容を確認しましょう。基本的人権の外国人への適用、最高裁判例、国民の義務等も確認しておきましょう。

民法の理解

意思能力、行為能力、制限能力者等の意味を押さえておきましょう。民法における典型契約、双務契約・片務契約、有償契約・無償契約等の契約の類型の内容も理解しておきましょう。

この分野は、親族、親権、扶養、相続、遺言等、非常に範囲が広く、どの分野が出題されるか予想が困難なので、基礎的な内容は幅広く押さえておきたいものです。

相続については、法定相続順位と相続割合、遺言による指定相続遺留分制度、遺言能力と遺言の効力などを学習しておきましょう。この分野からは、具体的な相続割合、生前贈与の扱いなどが出題されています。

行政法の理解

この分野で基本となる法律は、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法が代表的なものです。これらの法律における行政行為、行政手続、行政不服申立制度、行政事件訴訟の類型、国家賠償の基本的考え方について理解を深めておきましょう。

成年後見制度

成年後見制度には、民法に基づく法定後見制度任意後見契約に関する法律に基づく任意後見制度の2種類があります。

法定後見制度

法定後見制度については、成年後見人、保佐人、補助人それぞれに付与される権限の違いや代理権、同意権、取消権の付与と範囲、申立てにおける本人の同意の必要の有無、市町村長申立て等の法定後見制度の概要を整理しておきましょう。

後見人の責務として、本人の意思尊重義務善管注意義務、本人と法定後見人との利益相反時の対応、法定後見人の辞任、後見登記、成年後見人の欠格事由などが出題されています。

任意後見制度

任意後見制度における任意後見契約締結要件、契約の法的効果の発生要件、任意後見監督人選任請求権者、任意後見制度と法定後見制度の関係等を学習しておきましょう。また、家庭裁判所や東京法務局の役割などを整理しておきましょう。

民法における親権や扶養の概要

未成年に対する親権の範囲、扶養義務、普通養子縁組と特別養子縁組の違い、養子縁組制度における家庭裁判所の役割等を整理しておきましょう

成年後見制度の最近の動向

この分野からは、毎回、出題が見られます。裁判所のホームページに「成年後見制度の概況」が掲載されていますので、審理期間、後見、保佐、補助の申立件数、申立ての動機、成年後見人等と本人との関係、市区町村長申立て件数等を最新データで押さえておきましょう。

日常生活自立支援事業

根拠法、実施主体、利用対象者、利用手続きのプロセス、事業内容、成年後見制度との関係等についての基本的内容を整理しておきましょう。また、事業の実施状況について最新の動向を把握しておきましょう。

成年後見制度利用支援事業

利用対象者、事業の内容を押さえておきましょう。成年後見制度利用支援事業は、障害者総合支援法における市町村の地域生活支援事業の必須事業として位置付けられています。

成年後見制度利用促進法の出題実績があります。成年後見制度利用促進基本計画、成年後見制度利用促進会議等について確認しておきましょう。

権利擁護に係る組織、団体の役割と実際

家庭裁判所、法務局、弁護士、司法書士、社会福祉士の活動の実際について、それぞれの役割を理解し、事例問題にも対応できるようにしておきましょう。市町村長申立てとその対象、市町村における市民後見人等の人材育成についても押さえておきたいものです。

権利擁護活動の実際

この分野からは、事例問題での出題が多く見受けられます。認知症高齢者に対する成年後見活動の実際、高齢者、児童、障害者の各虐待防止法における虐待の定義、悪質商法による認知症高齢者の被害への対応等が出題されていますので、実践力を身につけておきましょう。

以上全体を概観してきましたがいかがでしたか。今回は、成年後見人等の利益相反について解説していきます。

利益相反とは

成年後見制度において、利益相反行為とは、ある法律行為によって成年後見人等と成年被後見人等との利益が相反することをいいます。

特別代理人選任請求

民法では、成年後見人が成年被後見人と利益が相反する場合、成年後見人は、家庭裁判所に対して、特別代理人の選任の請求をしなければならないと規定されています。特別代理人の選任請求をすることができるのは、親権者、成年後見人等、利害関係がある者です。

特別代理人の選任請求を行わないで、成年後見人が直接行った利益相反行為は、無権代理行為となり、成年被後見人による追認がない限り、無効となります。無権代理行為により本人に損害が生じた場合は、成年後見人は損害賠償請求を受けることになります。

特別代理人が選任されても、成年後見人としての地位を失うわけではありません。また、成年後見人に成年後見監督人が選任されている場合は、成年後見監督人が成年被後見人を代表するため、特別代理人を選任する必要はありません。

保佐人・補助人

保佐人と被保佐人との利益相反の場合や、補助人と被補助人との利益相反の場合は、保佐監督人、補助監督人がいる場合を除いて、保佐人臨時保佐人の選任請求を、補助人臨時補助人の選任請求を家庭裁判所に対して行わなければなりません。

成年後見人の場合は特別代理人ですが、保佐人、補助人の場合は、臨時保佐人、臨時補助人であることに気をつけておきましょう。

利益相反の際の家庭裁判所への選任請求

  • ・成年後見人:特別代理人選任請求
  • ・保佐人:臨時保佐人選任請求
  • ・補助人:臨時補助人選任請求

特別代理人・臨時保佐人・臨時補助人の法的効力

家庭裁判所の選任審判書には、利益相反に関する法律行為が記載されます。特別代理人、臨時保佐人、臨時補助人は、その記載されている法律行為に関してのみ代理する権限があります。成年後見人等に付与されているすべての法律行為に関する代理権が与えられているのではないということに注意しましょう。

特別代理人・臨時保佐人・臨時補助人の法的効力

利益相反にかかわる特別な法律行為に関してのみ代理権が付与される

利益相反行為の具体例

成年後見人等と成年被後見人等との利益相反行為としては、次のようなものがあります。

  • ・成年被後見人等の財産を、成年後見人等に贈与する
  • ・成年後見人等が、成年被後見人等の不動産を買う
  • ・成年後見人等が、銀行からお金を借りる際に、成年被後見人等を保証人にする
  • ・成年後見人等が、銀行からお金を借りる際に、成年被後見人等の不動産を担保に入れる
  • ・成年後見人等と成年被後見人等が共同相続人である場合に、遺産分割協議や相続放棄をする

次のような行為は利益相反に該当しません。

  • ・成年後見人の財産を成年被後見人等に贈与する
  • ・成年被後見人等が借金をする際に成年後見人を保証人にする
  • ・法定相続分での相続登記
  • ・成年後見人等と成年被後見人が共同相続人であっても、成年後見人が相続放棄した後なら利益相反にならない

今回まで、共通科目について過去の出題傾向を分析して対策を立ててきました。次回は「精神疾患とその治療」についてポイントを絞って解説をしていきます。では、第25回精神保健福祉士国家試験から今回の課題をあげておきますので、チャレンジしてみてください。

第25回精神保健福祉士国家試験「権利擁護と成年後見制度」

問題79 事例を読んで、成年後見人の利益相反状況に関する次の記述のうち、最も適切なもの1つ選びなさい。

〔事 例〕
共同生活援助(グループホーム)で暮らすAさん(知的障害、52歳)には弟のBさんがおり、BさんがAさんの成年後見人として選任されている。先頃、Aさん兄弟の父親(80歳代)が死去し、兄弟で遺産分割協議が行われることとなった。

  • 1 Aさんは、特別代理人の選任を請求できる。
  • 2 Bさんは、成年後見監督人が選任されていない場合、特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。
  • 3 Bさんは、遺産分割協議に当たり、成年後見人を辞任しなければならない。
  • 4 特別代理人が選任された場合、Bさんは、成年後見人としての地位を失う。
  • 5 特別代理人が選任された場合、特別代理人は、遺産分割協議に関する事項以外についても代理することができる。

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