張先生の受験対策講座

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。
- プロフィール張 百々代(はり ももよ)
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精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。
第18回 「低所得者に対する支援と生活保護制度」
皆さん、こんにちは。厳しい暑さが続きます。毎日の忙しさの中での学習は困難を覚えることと思います。健康に留意しながら、効率的な学習を進めていきましょう。
今回は「低所得者に対する支援と生活保護制度」を取り上げます。この科目では、生活保護法をしっかり学習しておけば一定の得点を確保できますので、ぜひ生活保護法に習熟しておきましょう。ではまず、前回の課題の解説をします。
- 第25回精神保健福祉士国家試験「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」
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問題57 「障害者総合支援法」における介護給付費等の支給決定に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
- 1 市町村は、介護給付費等の支給決定に際して実施する調査を、指定一般相談支援事業者等に委託することができる。
- 2 障害児に係る介護給付費等の支給決定においては、障害支援区分の認定を必要とする。
- 3 就労定着支援に係る介護給付費等の支給決定においては、障害支援区分の認定を必要とする。
- 4 市町村は、介護給付費等の支給決定を受けようとする障害者又は障害児の保護者に対し、支給決定後に、サービス等利用計画案の提出を求める。
- 5 障害支援区分は、障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合を総合的に示すものである。
- 正答 1、5
- 1 〇 このほか、指定特定相談支援事業者、指定障害者支援施設等にも委託できる。
- 2 × 障害児の障害の状態は変化しやすいなどの理由で、障害支援区分の認定は必要としないとされている。
- 3 × 就労定着支援は訓練等給付に該当し、訓練等給付に該当するサービスを利用するときは、共同生活援助の利用者で介護を必要とする場合以外は、障害支援区分認定は必要としない。
- 4 × サービス等利用計画案の提出を求められるのは、支給決定前である。市町村は、サービス等利用計画案が提出されたら、それが適切であった場合、支給決定を行う。
- 5 〇 障害支援区分は区分1~区分6の6段階に分かれており、区分6が支援の度合が最も高い。認定調査員の調査結果と主治医の意見書により一次判定が行われ、それをもとに市町村審査会が二次判定をし、最終的に市町村が障害支援区分の認定を行う。
解答解説
いかがでしたか。では、「低所得者への支援と生活保護制度」について出題基準に沿って近年の出題傾向を分析し、対策を立てていきます。
低所得階層の生活実態とこれを取り巻く社会情勢、福祉需要と実際
生活保護の被保護者調査が頻出です。被保護実人員数、保護率、被保護世帯数、保護の種類別扶助人員、保護開始・保護廃止の主な理由等について最新データで確認しておきましょう。
また、国民生活基礎調査における世帯類型別の平均所得金額を押さえておきましょう。
貧困の概念と格差、相対的貧困率の定義、ジニ係数、貧困の再発見、貧困の連鎖等も押さえておきたいものです。

生活保護制度
この分野は最も出題率が高く、毎回3~5問の出題がみられます。生活保護の理念、公的扶助と社会保険の性質や機能の違い等も理解しておきましょう。
生活保護法の目的・基本原理・基本原則
この分野は頻出です。生活保護法の目的や、「国家責任の原理」「無差別平等の原理」「最低生活保障の原理」「保護の補足性の原理」の4原理、「申請保護の原則」「基準及び程度の原則」「必要即応の原則」「世帯単位の原則」の4原則について、それぞれの基本的な考え方と具体的な対応を押さえておきましょう。
保護の種類と内容
保護の種類と内容は、ほとんど毎回出題されています。生活保護の8つの扶助のそれぞれの給付内容について丁寧に学習しておきましょう。介護保険料加算、就職支度費、小学生の校外活動参加費、入学準備金、高等学校等就学費等がどの扶助に該当するかを整理しておきましょう。現物給付と金銭給付の違いも確認しておきましょう。今回は後ほど、この分野を取り上げて解説します。
保護の実施機関と実施体制
社会福祉法における福祉事務所に関する設置義務規定、任意設置規定、配置職員、福祉事務所を設置しない町村長の役割等を整理しておきましょう。
保護の財源・保護施設の種類・被保護者の権利及び義務
保護の財源として国と実施機関の負担割合、5種類の保護施設のそれぞれの役割の違い、保護の不利益変更の禁止など被保護者の権利と、指導指示に従う義務等の被保護者の義務について整理しておきましょう。
また、不服申立制度についても学習しておきましょう。

生活保護制度における組織及び団体の役割と実際
国、都道府県、市町村のそれぞれの役割と、福祉事務所の組織と役割、被保護者に対するハローワークの役割等を確認しておきましょう。
生活保護制度における専門職の役割と実際
福祉事務所の現業員、査察指導員の役割と位置付け、それぞれの権限、指揮監督系統等を学習しておきましょう。
生活保護制度における多職種連携、ネットワーキングと実際
福祉事務所の就職支援コーディネーターとハローワークの就職支援ナビゲーターの役割、地域包括支援センター、要介護認定実施機関、介護支援専門員の役割等、被保護者への支援のために連携すべき行政機関、活用すべき様々な諸制度について学習しておきましょう。
福祉事務所の役割と実際
福祉事務所の活動の実際として、要保護者の発見から、申請受付、資力調査、要否判定、決定、受給、訪問調査等についてそれぞれの段階で留意すべきことを押さえ、相談援助活動について短文事例問題を想定して対応できる力を身につけておきましょう。
自立支援プログラムの意義と実際
自立支援プログラムによる支援の進め方について、様々な状況における専門職としての対応について優先すべきこと、自立支援の考え方等を押さえておきましょう。
低所得者対策/低所得者への住宅政策/ホームレス対策
生活福祉資金の概要
生活福祉資金貸付制度の実施主体、制度の目的、貸付対象、利用手続き、貸付内容、貸付条件と貸付利率、保証人の必要性の有無、費用返還等について整理しておきましょう。
低所得者に対する自立支援の実際
生活困窮者自立支援制度の出題率が高くなっています。生活保護に至る前の第二のセーフティネットとして位置づけられているこの制度は、現在とても重視されています。
公営住宅
低所得者への住宅対策として公営住宅制度の概要、また生活困窮者自立支援法における住居確保給付金、無料低額宿泊所等の内容を理解しておくとよいでしょう。
ホームレス対策
近年の出題率は下がっていますが、ホームレス自立支援法、ホームレス自立支援基本方針、ホームレスの実態調査結果等を押さえておきましょう。

以上、出題傾向を分析してきました。それでは、生活保護の種類と内容について取り上げていきます。
扶助の種類と給付方法
生活保護の扶助には、生活扶助、教育扶助、住宅扶助、介護扶助、医療扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助の8種類の扶助があります。このうち、原則として、介護扶助と医療扶助だけは現物給付で、その他の扶助は金銭給付となっています。また、生活保護施設はすべて現物給付になっています。

保護の種類と給付方法
- ・8扶助の種類と内容
- ・現物給付と金銭給付の違い
生活扶助
生活扶助は、衣食その他、日常生活の需要を満たすために必要なものを給付します。
基準生活費
生活扶助は、基準生活費として、食費、被服費などの個人的な需要を満たすための必要である第1類と、光熱水費や家具什器類など世帯の需要を満たすための第2類に分かれています。第2類には地区別冬季加算が含まれます。
なお、病院や介護施設等に入院・入所している被保護者に対しては、全国一律の額が支給される入院患者日用品費や介護施設入所者基本生活費があります。これは、第1類、第2類に代わって、被服費、教養娯楽費、交際費として支給されるものです。
加算
生活扶助には、特別な需要を補填することを目的としており、妊産婦加算、母子加算、障害者加算、介護施設入所者加算、在宅患者加算、放射線障害者加算、児童養育加算、介護保険料加算の8種類の加算があります。
母子加算は父子家庭も対象としていること、児童養育加算の対象児童は高校修了までの児童を養育している者を対象としていること、介護保険料加算は介護保険の第1号被保険者で普通徴収の対象者に加算されることなどに注意しておきましょう。
期末一時扶助・一時扶助
生活扶助には、12月に支給される期末一時扶助と、保護の開始時の家具什器の準備や出産時の産着代の費用など、一時的、緊急的な需要を満たすための一時扶助があります。
生活保護施設
救護施設と更生施設、日常生活支援住居施設は、生活扶助の対象となっています。

生活扶助
- ・基準生活費:第1類、第2類の違い
- ・8種類の加算の内容
- ・期末一時扶助、一時扶助の違い
教育扶助
教育扶助は、義務教育だけが対象です。教科書、教材費、学校給食費、学用品費、通学費、修学旅行費、校外学習費等、義務教育に伴って必要な費用が給付されます。
住宅扶助
住宅扶助は、家賃や家の補修や維持のための費用で、原則金銭給付です。

教育扶助
- ・義務教育だけが対象、校外学習費等も含む
住宅扶助
- ・家賃、補修費、維持費等が対象
介護扶助
介護扶助は、介護保険法の給付サービスと同一のサービスが現物給付として給付されます。65歳以上の場合は、1割の利用者負担分が現物給付になります。40歳以上65歳未満の要介護・要支援の被保護者は、必要な介護サービスすべてが介護扶助として現物給付されます。
医療扶助
医療扶助は、医療機関における診察、検査、治療、手術、看護、薬剤等のサービスを現物給付として給付されます。医療機関は、生活保護法による指定医療機関に委託して行われます。

介護扶助
- ・第1号被保険者は1割負担分が現物給付
- ・40歳以上65歳未満はすべて現物給付
医療扶助
- ・指定医療機関、医療保護施設における現物給付
出産扶助
出産扶助は分娩のための介助や措置、脱脂綿やガーゼなどの必要な衛生材料のための費用で、原則金銭給付です。
生業扶助
生業扶助は、困窮に陥っている者だけでなく、困窮に陥るおそれのある者も対象としています。これは自立の助長を目的としているためです。
生業扶助には、生業費、技能修得費、就職支度費の3種類があります。生業費は、小規模の事業を営むための費用です。技能修得費は必要な技能を習得するための費用で、高等学校等就学費はこの技能習得費に該当します。就職支度費は、被保護者が就職するときに必要な衣類などを購入するための費用です。生業扶助は、授産施設は現物給付ですが、それ以外は、原則金銭給付です。
葬祭扶助
葬祭扶助は、遺体の検案、死体の搬送、火葬・埋葬、納骨などに要する費用で、葬祭を執り行う者が生活に困窮している場合に支給されます。葬祭扶助の基準額は、級地別、大人・小人別に設定されています。葬祭扶助は原則、金銭給付によります。

出産扶助
- ・出産のために必要な費用
生業扶助
- ・高等学校就学費が含まれる
葬祭扶助
- ・級地別、大人・小人別に設定
いかがでしたか。次回は「保健医療サービス」を取り上げていきます。
第25回の精神保健福祉士国家試験問題にチャレンジしてみてください。
- 第25回精神保健福祉士国家試験「低所得者に対する支援と生活保護制度」
-
問題65 生活保護の種類と内容に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 生業扶助には、高等学校等就学費が含まれる。
- 2 生活扶助は、衣食住その他日常生活の需要を満たすために必要なものを給付する。
- 3 教育扶助は、原則として現物給付によって行うものとする。
- 4 介護扶助は、原則として金銭給付によって行うものとする。
- 5 葬祭扶助は、原則として現物給付によって行うものとする。
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