張先生の受験対策講座

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。
- プロフィール張 百々代(はり ももよ)
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精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。
第17回 「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」
皆さん、こんにちは。暑さが厳しくなってきましたが学習は進んでいますか。本試験まで長期戦ですから、健康に留意して学習を進めていきましょう。今回は「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」を取り上げていきます。
まず、前回の課題の解説をします。
- 第25回精神保健福祉士国家試験「社会保障」
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問題52 公的医療保険における被保険者の負担等に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 健康保険組合では、保険料の事業主負担割合を被保険者の負担割合よりも多く設定することができる。
- 2 「都道府県等が行う国民健康保険」では、都道府県が保険料の徴収を行う。
- 3 「都道府県等が行う国民健康保険」の被保険者が、入院先の市町村に住所を変更した場合には,変更後の市町村の国民健康保険の被保険者となる。
- 4 公的医療保険の保険給付のうち傷病手当金には所得税が課せられる。
- 5 保険診療を受けたときの一部負担金の割合は、義務教育就学前の児童については1 割となる。
- 正答1
- 1 〇 健康保険組合は、付加給付を行ったり、被保険者の保険料負担割合を減らしたりすることができる。健康保険の保険料の負担割合は原則2分の1であるが、健康保険組合の場合は、事業主の負担割合を増やして被保険者の負担割合を減らすことができる。
- 2 × 保険料の徴収を行うのは、市町村である。都道府県は財政運営の責任主体で、安定的な財政運営・効率的な事業運営の確保、市町村は被保険者資格の管理、保険料の徴収、保険給付の決定と実施等のそれぞれの役割がある。
- 3 × 入院先の市町村に住所を変更した場合には、変更前の市町村の国民健康保険の被保険者となる。これを住所地特例制度といい、入院医療機関だけではなく、介護保険施設や障害者支援施設に入所した場合も適用される。
- 4 × 保険給付には、所得税を課すことはできないと規定されている。
- 5 × 義務教育就学前の児童の自己負担割合は、2割である。小学校入学から70歳未満は3割負担、70歳以上75歳未満は所得に応じて2~3割負担、75歳以上は所得に応じて1~3割負担に分かれている。
解答解説
いかがでしたか。年金、介護、労災、雇用の各社会保険の給付内容についても学習しておきましょう。では、「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」について、出題基準に沿って過去問題の出題傾向を分析し、対策を立てていきます。
障害者の生活実態とこれを取り巻く社会情勢、福祉・介護需要
「生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」からの出題がみられます。この調査は5年ごとに実施されます。直近の調査は令和4年ですが、結果はまだ公表されていないため、現時点では平成28年のデータが最新になります。
障害者を取り巻く社会情勢として、障害者差別解消法、障害者優先調達推進法の理念、対象、諸制度と実際の適用について理解しておきましょう。
障害者福祉制度の発展過程
この分野からは、毎回出題があります。国際的な障害者施策とわが国の障害者福祉施策の発展過程を障害者関連の法整備とともによく理解しておきましょう。
国際障害者年、身体障害者福祉法、精神薄弱者福祉法(現在の知的障害者福祉法)、障害者基本法、障害者自立支援法(現在の障害者総合支援法)、障害者虐待防止法等の法律制定の背景、法律の目的と対象、性格等を押さえておきましょう。

障害者総合支援法
障害者総合支援法の概要は、大変出題率の高い分野です。サービス利用のプロセス、障害福祉サービス・障害者支援施設の種類とそのサービス内容、自立支援医療、地域生活支援事業など、全体の仕組みと具体的なサービス内容についてしっかりと理解しておきましょう。今回は後ほど、サービス利用のプロセスについて解説していきます。
障害者総合支援法における組織及び団体の役割と実際
国・都道府県・市町村の役割は頻出分野です。国は障害福祉計画策定のための指針を策定します。都道府県は障害福祉サービスの指定権者であり、市町村はサービスの実施主体です。そのほか、指定サービス事業者、国民健康保険団体連合会等についてもそれぞれの役割を整理しておきましょう。
障害者総合支援法における専門職の役割と実際
相談支援専門員、サービス管理責任者、サービス提供責任者、居宅介護従事者の役割等について、事例問題の解答を導き出すことができるようにしておきましょう。
障害者総合支援法における多職種連携、ネットワーキングと実際
この分野は、あまり出題実績はありませんが、医療関係者・精神保健福祉士との連携、障害支援区分判定時やサービス利用時における連携、労働関係機関関係者や教育機関関係者との連携について理解しておきましょう。
相談支援事業所の役割と実際
障害者の相談支援体系について、基本相談支援と地域相談支援(地域移行支援と地域定着支援)を行う一般相談支援事業所、基本相談支援と計画相談支援(サービス利用支援と継続サービス利用支援)を行う特定相談支援事業所のそれぞれの支援内容についてよく学習しておきましょう。

身体障害者福祉法/知的障害者福祉法/精神保健福祉法
この分野は、大項目では各法律に分かれていますが、押さえるべきポイントが重複しますのでまとめて説明します。
身体障害者・知的障害者・精神障害者の各法律における定義、障害者手帳制度、身体障害者更生相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、身体障害者福祉司、知的障害者福祉司等の役割を確認しておきましょう。

児童福祉法(障害児支援関係)
児童福祉法に基づく障害児の通所系サービス、入所系サービスのそれぞれのサービス内容、障害児相談支援等について整理しておきましょう。
発達障害者支援法
発達障害の定義、発達障害者支援センターの役割、発達障害児・者の早期発見と早期支援についての市町村と都道府県のそれぞれの役割、保育や教育・就労における配慮規定などを確認しておきましょう。
障害者基本法
障害者基本法の性格と目的、2004年改正、2011年改正のそれぞれのポイントを整理しておきましょう。2011年改正の目的規定や障害者の定義の見直し、地域社会における共生、社会的障壁の概念と合理的配慮などを理解しておきましょう。
障害者虐待防止法・医療観察法・バリアフリー新法・障害者雇用促進法
障害者虐待防止法については、障害者虐待の定義、障害者虐待の実態や障害者虐待防止センターの役割等を押さえておきましょう。
障害者雇用促進法については、法定雇用率、障害者雇用納付金制度等が出題されています。障害者雇用推進者、障害者職業生活相談員、雇用率未達成企業への障害者雇入れ計画の作成命令等、障害者雇用促進に関する制度を十分学習しておきましょう。

以上全体を概観してきましたが、今回は障害者総合支援法における介護給付費等の「支給決定プロセス」について取り上げていきます。

介護給付の支給決定までのプロセス
障害支援区分認定調査
介護給付サービスの利用を希望する場合は、実施主体である市町村に申請を行います。市町村は支給申請を受けたら、調査員を派遣し、障害支援区分認定のための調査を実施します。このとき市町村は、この調査を指定一般相談支援事業者等に委託することができます。
障害支援区分
障害支援区分とは、障害者等の障害の多様な特性その他心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合を総合的に示すものです。支給決定プロセスの透明化・明確化のため、公正・中立・客観的な指標として設定されており、支援区分は区分1から区分6までの6段階となっています。
障害児
障害児に対しては、発達の途上にあり、成長とともに障害の状態が変化することなどから、障害支援区分認定は必要とされていません。
サービス等利用計画の作成
認定調査を実施した市町村は、市町村審査会の審査の結果を受けて障害支援区分を認定します。市町村は、申請者に指定特定相談支援事業者が作成するサービス等利用計画案の提出を求めます。申請者はサービス等利用計画案の作成を指定特定相談支援事業者に依頼し、市町村に提出します。
市町村は、提出された計画案や勘案すべき事項をふまえて支給決定をします。指定特定相談支援事業者は、支給決定された後にサービス担当者会議を開催し、サービス事業者等と連絡調整を行い、実際に利用するサービス等利用計画を作成します。
その後、利用者はサービス等利用計画に基づいて、障害福祉サービス事業者と利用契約を結び、サービスの利用が開始されます。

介護給付
- ・障害支援区分認定が必要
- ・認定調査は指定一般相談支援事業者等に委託可能
- ・障害児は障害支援区分認定を必要ない
- ・サービス等利用計画案提出後に支給を決定
訓練等給付の支給決定のプロセス
訓練等給付サービスの利用を希望する場合は、実施主体である市町村に申請を行います。訓練等給付サービスの場合は、共同援助で介護を要する者以外は、障害支援区分認定は行いません。その後のプロセスは、介護給付と同様です。
暫定支給
訓練等給付には、暫定支給という制度があります。暫定支給は、利用者本人の希望を尊重し、より適切なサービス利用を図る観点から、①継続利用についての本人の最終的な意向の確認、②継続利用が適切かどうかの客観的な判断等を目的として、短期間の支給決定を行うものです。
暫定支給決定の対象となるサービスは、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援A型です。暫定支給決定の有効期間は、最長2か月です。

訓練等給付
- ・原則、障害支援区分認定は実施しない
- ・暫定支給制度がある
いかがでしたか。次回は「低所得者に対する支援と生活保護制度」を取り上げます。それでは、今回の課題をあげておきますのでチャレンジしてみてください。
- 第25回精神保健福祉士国家試験「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」
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問題57 「障害者総合支援法」における介護給付費等の支給決定に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。
- 1 市町村は、介護給付費等の支給決定に際して実施する調査を、指定一般相談支援事業者等に委託することができる。
- 2 障害児に係る介護給付費等の支給決定においては、障害支援区分の認定を必要とする。
- 3 就労定着支援に係る介護給付費等の支給決定においては、障害支援区分の認定を必要とする。
- 4 市町村は、介護給付費等の支給決定を受けようとする障害者又は障害児の保護者に対し、支給決定後に、サービス等利用計画案の提出を求める。
- 5 障害支援区分は、障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合を総合的に示すものである。
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