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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第16回 「社会保障」

皆さん、こんにちは。受験勉強は順調に進んでいますか。社会福祉振興・試験センターのホームページに、第26回の精神保健福祉士国家試験の「試験概要」と「受験申し込み手続き」が掲載されていますので、確認して早めに手続きすることをおすすめします。

今回は「社会保障」を取り上げます。この科目は苦手意識がある受験生が多いようですが、5つの社会保険に関する基礎的内容を習得すれば対応力が上がりますので、着実に学習を進めていきましょう。

最初に前回の課題の解説をしていきます。

第25回精神保健福祉士国家試験「福祉行財政と福祉計画」

問題43 次のうち、福祉行政における、法に規定された都道府県知事の役割として、正しいもの1つ選びなさい。

  • 1 介護保険法に規定される居宅介護サービス費の請求に関し不正があったときの指定居宅サービス事業者の指定の取消し又は効力の停止
  • 2 老人福祉法に規定される養護老人ホームの入所の措置
  • 3 子ども・子育て支援法に規定される地域子ども・子育て支援事業に要する費用の支弁
  • 4 社会福祉法に規定される共同募金事業の実施
  • 5 「障害者総合支援法」に規定される自立支援給付の総合的かつ計画的な実施
正答1

解答解説

    • 1 〇 都道府県知事は、指定居宅介護サービス事業者の指定権者なので、事業者に不正があった場合は、指定の取消し、効力の停止をすることができる。
    • 2 × 養護老人ホームの入所の措置を行うのは市町村である。市町村には、養護老人ホーム、特別養護老人ホームへの入所措置権がある。
    • 3 × 地域子ども・子育て支援事業の実施主体は市町村である。実施主体は事業に要した費用を支弁することとされている。
    • 4 × 共同募金事業を実施するのは、共同募金会である。
    • 5 × 障害者総合支援法に規定される自立支援給付の実施主体は市町村である。

いかがでしたか。では今回の「社会保障」について出題傾向を分析し、対策を立てていきます。この科目は、出題基準の大項目別に分類しますと、内容が重複する分野がありますので、今回は出題実績をもとに解説していきます。


現代社会における社会保障制度の課題

人口動態の変化、少子高齢化と社会保障制度の関係、労働環境の変化等を「厚生労働白書」や「総務省人口推計」等で確認しておきましょう。

社会保障の概念や対象及びその理念

社会保障制度審議会の1950年勧告、1995年勧告の内容、社会保障の役割と意義、理念、機能、対象について学習しておきましょう。

わが国の社会保障制度の発展の経緯は、医療保険制度、公的年金制度の沿革、労働保険制度、介護保険制度等の歴史的展開について、時代背景をふまえて理解しておくとよいでしょう。

社会保障の財源と費用

この分野も出題率が高いです。社会保障の財源構成、国民負担率、社会保障給付費の部門別構成割合、対国内総生産比、対国民所得比やその国際比較などについて、国立社会保障・人口問題研究所のホームページなどで確認し、整理しておくとよいでしょう。

社会保険と社会扶助の関係

社会保険制度と公的扶助の基本的な性格について、救貧的機能・防貧的機能、個別給付・画一給付、給付要件、給付対象、財源等を比較して整理しておきましょう。

社会保障制度の体系/年金保険制度の具体的内容/医療保険制度の具体的内容

きわめて出題率の高い分野です。

わが国の社会保険制度は、「年金保険」「医療保険」「介護保険」「労災保険」「雇用保険」の5種類の社会保険によって構成されています。それぞれの社会保険制度の目的、仕組み、保険者、被保険者要件、給付要件、給付内容、財源構成を整理しておきましょう。

また、家族手当制度についても確認しておきましょう。

年金保険制度

被用者、非被用者の年金制度の基本的枠組みを理解しておきましょう。第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者の被保険者要件、保険料免除制度、老齢年金・障害年金・遺族年金のそれぞれの受給要件と給付内容等についてよく学習しておきましょう。

医療保険制度

医療保険制度の仕組み、国民健康保険と健康保険の違い、後期高齢者医療制度、医療保険の給付内容、自己負担割合、高額療養費等の全体の枠組みを整理しておきましょう。今回は、後ほどこの分野を取り上げて解説していきます。

介護保険制度

生活保護と介護保険の関係、介護保険料、介護保険の財源構成等の出題がみられます。介護保険制度と医療保険制度・労災保険制度等、他制度との関係もよく理解しておきましょう。

労災保険制度

業務災害・通勤災害の定義、労災保険給付の対象要件、給付内容、事業主の保険料負担、通勤災害の認定要件等も含めて、事例問題に対応できるようにしておきましょう。

雇用保険制度

雇用保険の仕組み、保険者、被保険者、雇用保険料の事業主と被用者の負担割合、財源、雇用保険法と求職者支援法との関係等を押さえておきましょう。

雇用保険の給付内容として、基本手当、就業促進手当、教育訓練給付、育児休業給付、介護休業給付等が頻出分野です。法改正も含めて基本的な知識を積み重ねていきましょう。

家族手当制度

児童手当、児童扶養手当等について学習しておきましょう。児童手当と児童扶養手当の関係、所得制限、支給対象児童、財源、諸手当の併給を理解しておきましょう。

諸外国における社会保障制度

諸外国の社会保障制度が出題されています。ドイツ、フランス、イギリス、スウェーデン、アメリカなどの先進主要国における社会保障制度の概要について、それぞれの国の社会保障制度の発展の歴史的経緯をふまえて現在の社会保障制度体制を把握しておきましょう。

アメリカの医療保障制度としてのメディケア・メディケイド、ドイツの介護保険制度、イギリスの国民保健サービス制度(NHS)、フランスの医療保険における償還払い制度等、各国の社会保障制度の特徴を整理しておきましょう。

いかがでしたか。それでは、日本の医療保険制度について解説していきます。

医療保険制度の仕組み

医療保険制度全体は大きく分けて、被用者を対象とする職域保険と居住要件による地域保険、75歳以上の人が加入する後期高齢者医療制度に分類されます。

被用者保険(職域保険)

被用者を対象とする「職域保険」には、健康保険法に基づく全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)組合管掌健康保険(組合健保)、船員組合法に基づく船員保険、各種の共済組合法に基づく共済組合があります。

全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)

協会けんぽは、組合管掌健康保険に加入していない民間の中小企業の被用者が加入する保険です。保険者は全国健康保険協会で、保険料率は都道府県ごとに設定し、給付内容は法定給付だけです。

組合管掌健康保険(組合健保)

事業所で働いている被保険者が常時700人以上、または2つ以上の事業所が共同して設立する場合は被保険者が常時3000人以上の場合、厚生労働大臣の認可によって健康保険組合を設立することができます。

組合を設立すると、一定の範囲内で組合ごとに自主的に保険料率を設定でき、従業員の保険料負担割合を労使折半より低く設定することができます。また、法定給付以外の付加給付を行うことができ、企業の福祉厚生として疾病予防のための事業などを実施することも可能になります。

船員保険

船員保険法に基づく船員保険は、海上で働くという特殊性に鑑み、独立した法律で医療保障を行おうとする制度で、通常の医療保険給付以外にも独自給付があります。運営は全国健康保険協会が実施しています。

共済組合

共済組合には、公務員を対象とする国家公務員共済組合地方公務員共済組合、私立学校教職員を対象とする私立学校教職員共済組合があります。被用者の年金制度は、公務員、民間被用者すべて厚生年金制度に一元化されていますが、医療保険に関しては、公務員等は別建ての共済組合によって実施されているということに注意しておきましょう。

被用者保険

  • ・協会けんぽ(中小企業):都道府県ごとに保険料率設定、法定給付のみ
  • ・健保組合(大企業):組合ごとに保険料設定、法定給付+付加給付
  • ・船員保険(船員):保険者は全国健康保険協会
  • ・共済組合(公務員等):国家公務員共済、地方公務員共済、私学共済

都道府県等が行う国民健康保険

都道府県等が行う国民健康保険は、都道府県と市町村が保険者です。都道府県は、財政運営の責任主体で、安定的な財政運営や効率的な事業運営を確保する役割があります。市町村は、被保険者資格の管理、保険料の徴収、保険給付の決定と実施等の役割があります。給付内容は法定給付だけです。

病院への入院や介護保険施設、障害者支援施設への入所により、被保険者が入院・入所先の市町村に住所を変更した場合は、変更前の住所の市町村の被保険者になります。これを住所地特例制度といいます。

国民健康保険組合

国民健康保険組合は、医師や弁護士、美容師、土木建築業等が同業種ごとに、主たる事務所の所在地の都道府県知事の認可を受けて設立します。

保険料率は一定の範囲内で組合ごとに設定することができ、保険給付として法定給付以外に独自の付加給付を行うことができます。この2点が「都道府県等が行う国民健康保険」と大きく異なる点です。

地域保険

  • ・国民健康保険:保険者は都道府県と市町村、法定給付のみ
  • ・国保組合:保険者は組合、法定給付+付加給付

後期高齢者医療制度

後期高齢者医療制度は、高齢者の医療の確保に関する法律に基づいて、都道府県を単位に全市町村が加入する後期高齢者広域連合が保険者となります。被保険者は、75歳以上の高齢者65歳以上75歳未満の一定の障害の状態にあると認められた者です。ただし、生活保護受給者は被保険者になりませんので、気をつけておきましょう。

被保険者は、家族の被扶養者であっても個人として保険料を支払う義務が生じます。保険料は後期高齢者広域連合が決定し、市町村が徴収します。保険料の算出方法は、均等割額と所得割額を合計して個人単位で算出します。

財源構成は、被保険者の保険料が1割、後期高齢者支援金(若年者の保険料)が4割、公費が5割です。公費の5割の内訳は、国が4割、都道府県が1割、市町村が1割になっています。

後期高齢者医療制度

  • ・保険者:後期高齢者医療広域連合
  • ・保険料:後期高齢者医療広域連合が決定
  • ・保険料徴収:市町村
  • ・財源構成:保険料1:支援金4:公費5

自己負担割合

医療保険制度における自己負担割合は、年齢と所得によって異なります。

小学校就学前の人は2割負担、小学校入学から70歳未満の人は3割負担、70歳以上75歳未満の人は所得に応じて2割負担または3割負担、75歳以上の人は所得に応じて1~3割負担に分かれています。

いかがでしたか。次回は、「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」を取り上げます。第25回の精神保健福祉士国家試験問題にチャレンジしてみてください。

第25回精神保健福祉士国家試験問題「社会保障」

問題52 公的医療保険における被保険者の負担等に関する次の記述のうち、正しいもの1つ選びなさい。

  • 1 健康保険組合では、保険料の事業主負担割合を被保険者の負担割合よりも多く設定することができる。
  • 2 「都道府県等が行う国民健康保険」では、都道府県が保険料の徴収を行う。
  • 3 「都道府県等が行う国民健康保険」の被保険者が、入院先の市町村に住所を変更した場合には,変更後の市町村の国民健康保険の被保険者となる。
  • 4 公的医療保険の保険給付のうち傷病手当金には所得税が課せられる。
  • 5 保険診療を受けたときの一部負担金の割合は、義務教育就学前の児童については1 割となる。

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