張先生の受験対策講座

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。
- プロフィール張 百々代(はり ももよ)
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精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。
第15回 「福祉行財政と福祉計画」
皆さん、こんにちは。今回は「福祉行財政と福祉計画」です。この科目は苦手な受験生が多いようですが、「福祉行政」「福祉財政」「福祉計画」の3分野に整理して学習していくと理解が進みます。ぜひ今回の学習をきっかけに得意科目にしていきましょう。
まず前回の課題の解説をしておきます。
- 第25回精神保健福祉士国家試験「地域福祉の理論と方法」
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問題37 地域福祉の推進に向けた役割を担う、社会福祉法に規定される市町村地域福祉計画に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 市町村地域福祉計画では、市町村社会福祉協議会が策定する地域福祉活動計画をもって、地域福祉計画とみなすことができる。
- 2 市町村地域福祉計画の内容は、市町村の総合計画に盛り込まれなければならないとされている。
- 3 市町村地域福祉計画では、市町村は策定した計画について、定期的に調査、分析及び評価を行うよう努めるとされている。
- 4 市町村地域福祉計画は、他の福祉計画と一体で策定できるように、計画期間が法文上定められている。
- 5 市町村地域福祉計画は、2000年(平成12年)の社会福祉法への改正によって策定が義務化され、全ての市町村で策定されている。
- 正答3
- 1 × 市町村地域福祉計画は社会福祉法に基づく行政計画で、市町村地域福祉活動計画は市町村社会福祉協議会が作成する民間計画である。相互に補完的な関係の計画であり、地域福祉活動計画をもって地域福祉計画とみなすという規定はない。
- 2 × 市町村総合計画は、住民全体で共有する自治体の将来目標や施策を示す計画である。地域福祉計画と総合計画は、計画相互の調和を図るという関係である。
- 3 〇 市町村地域福祉計画を策定したら、定期的に、調査、分析及び評価を行うよう努めることとともに、必要があると認めるときは、計画を変更することとされている。
- 4 × 市町村地域福祉計画の計画期間は、社会福祉法上に規定はない。「地域福祉計画策定指針の在り方について」に、概ね5年とし3年で見直すことが適当であるとされている。
- 5 × 市町村地域福祉計画の策定は、2000年(平成12年)の社会福祉法への改正時点では任意規定であったが、2017年(平成29年)の法改正により、努力義務になった。
解答解説
いかがでしたか。それでは、「福祉行財政と福祉計画」について出題傾向を分析し、対策を立てていきます。
福祉行政の実施体制
国の役割
国と地方自治体との関係を把握し、法定受託事務と自治事務の具体的な事務内容を確認しておきましょう。
法定受託事務は、本来国が果たすべき事務を都道府県や市町村が受託する第1号法定受託事務と、本来都道府県が果たすべき事務を市町村が受託する第2号法定受託事務があります。法定受託事務以外の事務は、すべて自治事務です。
法定受託事務と自治事務の具体例をあげておきます。
法定受託事務 | 生活保護の決定・実施、児童扶養手当・特別児童扶養手当等の社会手当の支給事務、社会福祉法人の認可、福祉施設の認可等 |
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自治事務 | 社会福祉関係各法による措置、福祉サービス利用者からの費用徴収、自治体独自事業、介護保険事務、国民健康保険事務、障害者手帳交付事務、児童福祉・老人福祉・障害者福祉サービスの利用事務等 |
厚生労働省には、わが国の社会保障制度について審議するために社会保障制度審議会が設置されています。社会保障制度審議会は、わが国の社会保障制度の方向性や枠組みを審議する機関です。
都道府県の役割
都道府県は広域的な地方公共団体であり、市町村を支援し、人材養成や専門性の高い事業を実施する主体です。
市町村の役割
市町村は住民に一番身近な地方公共団体なので、基礎的自治体という位置づけになっています。また、福祉サービスの実施主体です。実施主体とは、責任をもって事業を行う行政機関という意味です。

福祉の財源
福祉の財源として、まず、税の仕組みを理解しておきましょう。
国は国税を徴収し、その一部を一般財源である地方交付税と、特定財源である国庫支出金として、地方公共団体(都道府県、市町村)に交付・補助します。地方公共団体(都道府県・市町村)は、自ら集めた地方税と、国から交付された地方交付税や国からの国庫支出金で、様々な事業を実施します。
なお、この分野では、様々な福祉に関する事業に要する費用における国、地方公共団体の負担割合を押さえておきましょう。

福祉行政の組織及び団体の役割・福祉行政における専門職の役割
福祉事務所、児童相談所、身体障害者更生相談所、知的障害者更生相談所、婦人相談所、地域包括支援センター、母子健康包括支援センター、保健所等の設置義務、配置職員、専門職の任用資格などを整理しておきましょう。

福祉行財政の動向
福祉財政は、国の福祉財政と地方公共団体の福祉財政をそれぞれ整理しておきましょう。
国の財政
国の福祉財政については、社会保障関係費が一般会計に占める割合や、社会保障関係費の内訳が頻出分野です。また、各分野の福祉サービス費の財源構成や、国の義務的経費である国庫負担金と任意的経費である国庫補助金の性格の違いについても理解しておきましょう。
地方財政
毎回、地方財政白書が出題されています。一般会計歳出に占める民生費の割合と民生費の内訳が頻出です。都道府県、市町村それぞれの民生費の「目的別歳出内訳」と「性質別内訳」の順位を押さえておきましょう。

福祉計画の意義と目的
各法律に基づく福祉計画には、それぞれの計画の意義と目的が規定されています。福祉計画を策定する目的をよく理解しておくことで、盛り込むべき内容についての理解も深まります。
福祉計画の主体と方法/福祉計画の実際
これらの分野について、試験では横断的な理解が求められますので、両者をまとめて取り上げていきます。
各分野の福祉計画について、根拠法、計画の策定主体、計画期間、計画に盛り込むべき内容、計画相互間の関係、計画策定における地域住民の意見反映措置等を整理しておきましょう。
出題率が高いのは、地域福祉計画、老人福祉計画、介護保険事業計画、障害者基本計画、障害福祉計画、子ども・子育て支援事業計画、医療計画等です。
計画相互の関係について、一体のものとして作成すべきもの、整合性の確保が図られたものとして作成すべきもの、調和が保たれたものとして作成すべきものの違いが出題されていますので気をつけておきましょう。
また、福祉計画の評価方法として、ニーズ調査、プロセス指標、インプット指標、費用効果分析等の難度の高い問題も出題されています。福祉計画も評価が重視されるようになっているため今後も出題の可能性があります。基礎的な内容を押さえておきましょう。

以上全体を概観してきましたが、今回は福祉行政における国、都道府県、市町村の役割に関して取り上げていきます。
国の役割
国の役割は、様々な福祉施策に関して、それぞれの分野の方向性を示す役割をもっています。厚生労働省だけで施策を進めるものについては、厚生労働大臣が方針や計画を策定します。
多省庁がかかわる必要がある施策については、内閣府管轄になり、内閣総理大臣が計画や方針を策定します。子ども・子育て支援法、男女共同参画社会基本法、DV防止法、障害者基本法等に関する施策は内閣府の管轄になります。

- ・国の役割:方向性と枠組みを示す
- ・厚生労働省管轄:厚生労働省だけがかかわる施策
- ・内閣府管轄:多省庁がかかわる施策
都道府県の役割
都道府県は、市町村を支援し、広域的な事業の実施、専門性の高い事業、人材の養成や資質の向上等に関する事業を実施する役割を担っています。具体的には、介護支援専門員実務研修受講試験等を実施します。
また、都道府県は、障害福祉サービス事業者(特定相談支援事業者を除く)、介護保険サービス事業者(地域密着型事業者、介護支援事業者等を除く)の指定権者です。指定権者は、事業者に不正があった場合は指定を取り消すことができます。
社会的養護を要する児童の児童養護施設への入所については、都道府県が入所措置権をもっています。これは児童の人権を護るという考え方によるものです。
なお、都道府県は、厚生労働大臣が定める基準をふまえて、福祉施設の設備及び運営に関する基準を都道府県議会の議決によって条例で定めることとされています。

都道府県の役割
- ・市町村の支援、広域的な事業、専門性の高い事業、人材の養成等
- ・福祉サービス事業者の指定
- ・社会的養護施設の入所措置
- ・福祉施設の設備基準・運営基準を条例で定める
市町村の役割
市町村は、住民に一番身近な基礎的地方公共団体として、様々な事業の実施主体となっています。市町村が実施主体である代表的なものは、介護保険制度、障害福祉サービス、保育の実施、子ども・子育て支援等があります。
福祉サービス事業の実施主体である市町村は、事業に関する計画を策定し、それを計画的に実施しなければなりません。また、必要に応じて事業を評価し、ニーズの変化に応じて新たな計画を策定していきます。
介護保険制度における支給決定、介護サービス費の支給、障害者総合支援法に基づく介護給付費等の支給決定、介護給付費等の支給、子ども・子育て支援法に基づく小学校就学前の子どものための教育・保育給付の認定と支給等を行います。
福祉サービス事業者の指定については、障害福祉サービスでは特定相談支援事業者を、介護保険制度では地域密着型サービス事業者、居宅介護支援事業者、介護予防支援事業者を指定するのは市町村の役割です。
なお、市町村には、養護老人ホーム、特別養護老人ホームへの入所措置権があります。

市町村の役割
- ・事業の実施主体
- ・一部の福祉サービス事業者の指定権
- ・養護老人ホーム、特別養護老人ホームへの入所措置
いかがでしたか。次回は「社会保障」を取り上げます。では、第25回の精神保健福祉士国家試験の問題から今回の課題をあげておきますのでチャレンジしてみてください。
- 第25回精神保健福祉士国家試験「福祉行財政と福祉計画」
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問題43 次のうち、福祉行政における、法に規定された都道府県知事の役割として、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 介護保険法に規定される居宅介護サービス費の請求に関し不正があったときの指定居宅サービス事業者の指定の取消し又は効力の停止
- 2 老人福祉法に規定される養護老人ホームの入所の措置
- 3 子ども・子育て支援法に規定される地域子ども・子育て支援事業に要する費用の支弁
- 4 社会福祉法に規定される共同募金事業の実施
- 5 「障害者総合支援法」に規定される自立支援給付の総合的かつ計画的な実施
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