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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第12回 「社会理論と社会システム」

皆さん、こんにちは。今回は「社会理論と社会システム」を取り上げます。この科目は苦手意識をもっている受験生が多いようですが、理解が深まると学ぶ楽しさを味わうことができます。ぜひ、楽しみながら学習を進めていってください。

最初に前回の課題を解説していきましょう。

第25回精神保健福祉士国家試験「心理学理論と心理的支援」

問題13 心理検査に関する次の記述のうち、最も適切なもの1つ選びなさい。

  • 1 乳幼児の知能を測定するため、WPPSIを実施した。
  • 2 頭部外傷後の認知機能を測定するため、PFスタディを実施した。
  • 3 投影法による人格検査を依頼されたので、東大式エゴグラムを実施した。
  • 4 児童の発達を測定するため、内田クレペリン精神作業検査を実施した。
  • 5 成人の記憶能力を把握するため、バウムテストを実施した。
正答1

解答解説

    • 1 〇 ウェクスラー式知能検査には、乳幼児用知能検査としてのWPPSI、児童用知能検査としてのWISC、成人用知能検査としてのWAISがある。
    • 2 × PFスタディ(絵画欲求不満テスト)は人格検査である。フラストレーション場面の絵画を提示し、その絵画の吹き出しに、被検者が言葉を書き入れ、それを分析し評価する。
    • 3 × 東大式エゴグラムは、質問紙法による性格検査である。5つの自我の状態を点数化してわかりやすくグラフ化して分析し、自我の状態を把握する。
    • 4 × 内田クレペリン精神作業検査は、職業適性検査などに使用される人格検査である。一桁の単純な数字を連続して加算し、その作業曲線のパターンから性格を判定する。
    • 5 × バウムテストは、実のなる木を書いてもらい、その筆跡や空間分割等を分析することによって人格を分析する検査方法である。

いかがでしたか。では今回の「社会理論と社会システム」に入っていきましょう。出題基準に沿って過去問の出題傾向を分析し、分野ごとに対策を立てていきます。


現代社会の理解

社会システム

社会現象をシステムとしてとらえる考え方や、社会の文化や規範、社会の構造や発展に伴う社会意識の変化等についての理解を深めておきましょう。

パーソンズのシステム理論、階層の概念、社会移動(垂直移動、水平移動、世代間移動、世代内移動)等の意味を理解しておきましょう。また、社会指標、幸福度指標の意味も押さえておきましょう。

法と社会システム

ヴェーバーの支配類型論、合法的支配の意味、抑圧的法、自律的法、応答的法それぞれの意味を学習しておきましょう。

経済と社会システム

市場、交換、互酬性の概念、裁量労働制、ワーク・ライフ・バランス等の概念を理解しておきましょう。ジニ係数、完全失業率、同一労働同一賃金、男女間の賃金格差、就業状況、消費社会論等も押さえておきましょう。

社会変動

近代化や産業化、情報化による社会の変化と特質を整理しておきましょう。デュルケム、ヴェーバー、ジンメル等の出題実績があります。社会の変化は、家族形態やライフサイクル等にも影響を与えています。社会生活の各分野に、社会変動がどのような影響をもたらしているか、という視点で学習しておくとよいでしょう。

人口

わが国の少子化の実態、合計特殊出生率とその推移、諸外国との比較、平均寿命、65歳以上人口割合等について、「社会保障・人口問題研究所」等のホームページで確認しておきましょう。

地域

コミュニティの概念、都市化、過疎問題について学習しておきましょう。コミュニティ解放論、同心円地帯理論、アーバニズム等を整理しておきましょう。

社会集団及び組織

クーリーの第一次集団と第二次集団、テンニースのゲマインシャフトとゲゼルシャフト、コミュニティとアソシエーション等を押さえておきましょう。近代化に伴って、集団の性格がどのように変化していったかという視点で学習しておくことをおすすめします。

生活の理解

家族

家族の概念、家族の変容、家族構造や形態、家族の機能の変化について理解しましょう。また、定位家族、生殖家族、核家族、拡大家族、直系家族、複合家族等の家族形態を整理しておきましょう。

「国民生活基礎調査」(厚生労働省)で、世帯人員別、世帯類型別、児童のいる世帯、65歳以上のいる世帯の特徴等を確認しておきましょう。

生活の捉え方

ライフサイクル、ライフコース、コーホート、ライフイベント等の概念が出題されています。生活時間や生活の質等についても学習しておきましょう。

人と社会との関係

 

社会関係と社会的孤立

パットナムの社会関係資本(ソーシャルキャピタル)の概念を理解しておきましょう。

社会的行為

ヴェーバーによる価値合理的行為と目的合理的行為等、ハーバマスのコミュニケーション的行為と戦略的行為等、パーソンズの主意主義的行為論等について理解を深めておきましょう。

社会的役割

役割期待、役割取得、役割形成、役割演技、役割葛藤、役割距離、ミードの自我理論等を押さえておきましょう。

社会的ジレンマ

個人の合理的行為とそれがもたらす集団への影響、社会的ジレンマの定義、共有地の悲劇、囚人のジレンマ、フリーライダー、選択的誘因等について、それぞれの意味をよく理解しておきましょう。

社会問題の理解

社会問題の捉え方

逸脱理論として、ラベリング理論、構築主義、社会統制論、社会緊張理論、文化学習理論等が出題されています。社会病理逸脱の考え方を理解しておきましょう。

具体的な社会問題

ジェンダー、環境問題、貧困問題、失業、非行、社会的排除、ハラスメント、DV、児童虐待、いじめなど、現代の社会のおける諸問題について理解しておきましょう。

以上、全体を概観してきました。今回は「社会変動論」について解説していきます。コント、スペンサー、デュルケム、ヴェーバー、ジンメル、パーソンズ、ルーマンについてみていきましょう。

コント

コントは、学問としての社会学を創設した人物、『実証哲学講義』で三段階の法則を提唱しました。三段階の法則とは、人間の精神世界の発展と現実世界の発展を対比させて展開した理論です。精神世界が神学的な時代は、現実世界は軍事的、精神世界が形而上学的な時代は、現実世界は法律的、精神世界が実証的な時代は、現実社会は産業的であるとしました。

スペンサー

スペンサーは『綜合哲学体系』で、社会進化論の立場から、社会は産業の発展によって分業と機能の分化が進むとしました。社会の発展により、画一的・統制的な軍事型社会から、個人の意志を尊重する産業型社会に進化するという理論です。

デュルケム

デュルケムは『社会分業論』で、近代化による分業の進展により、社会は同質的な人々による機械的連帯から異質的な人々による有機的連帯へ変化するとしました。また、社会的規範の崩壊や無規制状態による不安をアノミーと名付け、この不安が社会的自殺を生み出すとするアノミー的自殺論を提示しました。

ヴェーバー

ヴェーバーは『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』で、資本主義を発展させたのはプロテスタンティズムの世俗内禁欲主義であるとしました。

支配類型論も提唱し、支配類型を「伝統的支配」「合法的支配」「カリスマ支配」に分類しました。ヴェーバーは、近代化により合法的支配の社会になったとし、近代社会の合理的組織形態を官僚制と名付け評価しました。

ジンメル

ジンメルは、社会学を人間の心理や行動における相互作用に焦点を当てる社会学を提唱しました。従来の社会全体に焦点を当てて社会を分析するマクロ的な視点の立場ではなく、人間と人間の相互作用、人間と社会の相互作用に焦点を当てるミクロ的な視点に立つ社会学の立場で、ミクロ社会学の祖といわれています。

パーソンズ

パーソンズは、産業が発展し分業化が進んでいく社会秩序が維持されている状態をシステム論の視点から分析し、AGIL図式を提唱しました。

「A:適応」(たとえば経済)、「G:目標達成」(政治)、「I:統合」(法制度)、「L:潜在的パターン維持」(教育・文化・家族)を社会システムが満たすべき機能要件としました。これらのサブシステムが相互に作用して、社会は維持されているという理論です。

ルーマン

ルーマンは、時代の変化に伴い、社会構造は種族、村落、家族等から形成される環節的分化から、聖職、貴族、民衆、農奴等によって分化されていく階級的分化に移行し、近代化による分業の発展により、経済、政治、法、教育等のシステムの機能が分化した機能的分化に移行したとしました。

社会変動論

  • ・コント:三段階の法則
  • ・スペンサー:社会進化論
  • ・デュルケム:「機械的連帯」から「有機的連帯」へ
  • ・ヴェーバー:「伝統的支配」「合法的支配」「カリスマ支配」
  • ・ジンメル:形式社会学
  • ・パーソンズ:AGIL図式

近代化と集団の性格の変化

産業の発展により近代化が進み、分業が進展したことにより、集団の性格も変化していきました。

テンニース

テンニースは、近代化以前の集団の特性は、本質意志に基づいた結合による自然的、基礎的な集団であるとし、これをゲマインシャフトと名付けました。家族、友人、仲間、近隣などを構成員とし、成員、感情的、全人格的にかかわる社会集団類型です。

近代化以降の集団を人為的な選択意志に基づいた結合の機能的集団であるとし、ゲゼルシャフトと名付けました。企業や大都市等が該当し、成員は人為的な利害や打算で結合している社会集団類型です。

テンニースは、産業の発展による近代化により、集団の性格がゲマインシャフトからゲゼルシャフトに移行するとしました。

クーリー

クーリーは、近代化以前の集団の特質を直接的接触に基づいた結合による集団であるとし、第一次集団と名付けました。地縁や血縁による成員が該当し、地域集団や家族等で構成されています。

近代化以降の集団の特質を間接的接触に基づいた結合による集団であるとし、第二次集団と名付けました。特定の利益と関心による成員が該当し、会社や学校等で構成されています。

クーリーは、産業の発展による近代化により、集団の性格が第一次集団から第二次集団に移行するとしました。

集団理論

  • ・テンニース:「ゲマインシャフト」から「ゲゼルシャフト」へ
  • ・クーリー:「第一次集団」から「第二次集団」へ

脱工業化・情報化論

近代から現代への移行に伴い、産業構造がどのように変化していくかを論じたのは、ベルトフラーです。ベルの脱工業化社会論、トフラーの第三の波を取り上げます。

ベル

ベルは、先進諸国は21世紀には工業社会から、知識や情報を中心とする専門性や技術階層の役割が大きくなる脱工業社会に向かうとする脱工業化論を提唱しました。

トフラー

トフラーは、農業化社会を第一の波、産業化社会を第二の波とし、それに続く情報化社会第三の波と名付けました。情報化社会では、人は時間と空間から自由にされ、在宅勤務など、生活様式の変化、情報産業を中心とする経済構造の変動を指摘しています。

脱工業化・情報化

  • ・ベル:脱工業化論
  • ・トフラー:第三の波

いかがでしたか。次回は「現代社会と福祉」を取り上げていきます。では、第25回精神保健福祉士国家試験から今回の課題をあげておきますので、チャレンジしてみてください。

第25回精神保健福祉士国家試験「社会理論と社会システム」

問題16 社会変動の理論に関する次の記述のうち、最も適切なもの1つ選びなさい。

  • 1 ルーマン(Luhmann, N.)は、社会の発展に伴い、軍事型社会から産業型社会へ移行すると主張した。
  • 2 テンニース(Tonnies, F.)は、自然的な本質意志に基づくゲマインシャフトから人為的な選択意志に基づくゲゼルシャフトへ移行すると主張した。
  • 3 デュルケム(Durkheim, E.)は、産業化の進展に伴い、工業社会の次の発展段階として脱工業社会が到来すると主張した。
  • 4 スペンサー(Spencer, H.)は、近代社会では適応、目標達成、統合、潜在的パターン維持の四つの機能に対応した下位システムが分出すると主張した。
  • 5 パーソンズ(Parsons, T.)は、同質的な個人が並列する機械的連帯から、異質な個人の分業による有機的な連帯へと変化していくと主張した。

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