張先生の受験対策講座

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。
- プロフィール張 百々代(はり ももよ)
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精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。
第9回 「精神障害者の生活支援システム」
皆さん、こんにちは。今回は「精神障害者の生活支援システム」を取り上げます。この科目は、精神障害者の生活を支援するために必要な居住支援や就労支援のシステム、障害者総合支援法における障害福祉サービスと精神保健福祉士の役割についての知識が求められています。精神障害者を地域で包括的に支援するための具体的な方法について、諸制度を含めて十分に学習しておきましょう。
最初に、前回の課題の解説をします。
- 第25回精神保健福祉士国家試験「精神保健福祉に関する制度とサービス」
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問題65 更生緊急保護に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 矯正施設の長からの申出により実施される。
- 2 保護の期間は、最長で3年である。
- 3 仮釈放中の者も対象に含まれる。
- 4 公共の衛生福祉に関する機関等による保護が優先される。
- 5 社会福祉法に規定されている社会福祉事業に含まれる。
- 正答4
- 1 × 更生緊急保護は、本人からの申出により実施される。保護観察所長が検察官、刑事施設の長、少年院の院長の意見を聴いて決定する。
- 2 × 保護の期間は、原則6か月で、必要な場合はさらに6か月まで延長可能(最長1年)である。
- 3 × 更生緊急保護の対象者は、保護観察に付されていない者である。仮釈放者は保護観察に付されるため、対象外である。
- 4 〇 更生緊急保護は、親族からの援助や公共の衛生福祉に関する機関等から保護を受けることができない場合等に限定されている。
- 5 × 更生緊急保護は、社会福祉法が規定されている社会福祉事業には該当しない。
解答解説
では、「精神障害者の生活支援システム」について、出題基準と過去問の分析に基づいて対策を立てていきます。
精神障害者の概念
この分野では、精神障害の特性と、精神障害者の生活支援における精神障害の捉え方、仲間同士の交流や活動範囲の拡大、活動や参加の有効性など、精神障害の疾病の特性についての理解を深めておきましょう。また、精神保健福祉法における精神障害者の定義は必須の知識です。
精神障害者の生活の実際
精神障害者の生活実態として、厚生労働省調査による精神障害者の現状、障害者全体に占める精神障害者の割合、外来患者・入院患者の現状、精神障害者の居住状況や就労状況、生活保護受給状況、経済状態などを障害者白書などで確認しておくとよいでしょう。
精神障害者の生活と人権
この分野からは、精神障害者の生活支援の理念として、生活者である本人を主体とした生活モデルやリカバリーの理念、精神障害者の入院形態や退院請求権、個人情報の取り扱い、成年後見制度、障害者虐待防止法、障害者の権利条約等を押さえておきましょう。
具体的な事例での出題に対応できるように、精神障害者の人権にかかわる諸制度について整理し、障害者に対する差別や偏見、障害者虐待の実態と防止対策についても理解しておきましょう。
精神障害者の居住支援
精神障害者の居住支援は、大変出題率が高い分野です。障害者総合支援法における居住支援に関するサービス体系や、宿泊型自立訓練、共同生活援助、福祉ホーム、住宅入居等支援事業等が出題されています。
障害者総合支援法に基づく地域移行支援・地域定着支援のための指定一般相談支援事業等の具体的な内容は頻出分野です。しっかり理解しておきましょう。

精神障害者の就労支援
居住支援と同様、この分野も大変出題率が高いです。障害者雇用促進法における障害者の雇用促進施策、法定雇用率、障害者雇用納付金制度、職業リハビリテーション機関としての公共職業安定所、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、障害者総合支援法における就労支援事業等の諸機関、諸事業の役割と、それぞれの機関に配置されている就労支援のための専門職の役割等について、制度面の正確な知識を習得しておきましょう。
地域障害者職業センターの業務、就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型)、就労継続支援事業(B型)、就労定着支援事業等、障害者総合支援法および障害者雇用促進法に基づく就労支援のための諸制度が頻出です。精神障害者雇用トータルサポーター、障害者職業カウンセラー、サービス管理責任者、就労支援員、職業指導員等の配置先、役割を整理しておきましょう。今回は後ほど、障害者総合支援法に基づく訓練等給付の分野を取り上げて解説していきます。

精神障害者の生活支援システムの実際
海外における生活支援モデルとして、クラブハウスモデル、元気回復行動プラン(WRAP)、包括型地域生活支援プログラム(ACT)、IPS、ピープルファースト運動、自立生活センター等を押さえておきましょう。
ソーシャルサポートネットワークの分野では、当事者運動、家族会、セルフヘルプグループ、ピアサポートシステム、フォーマルサポートとインフォーマルサポート等の概念と具体的実践についても理解を深めておきましょう。

市町村における相談援助
この分野は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス、市町村の精神保健福祉相談員の業務、障害者総合支援法に基づく障害者相談支援事業体系とその具体的な内容、基幹相談支援センターの役割等についても理解しておきましょう。
その他の行政機関における相談援助
この分野からは、精神保健福祉センター、保健所のそれぞれの役割と業務、市町村と都道府県の役割、様々な障害者を支援する機関の機能、諸事業における専門職の位置付け等についても十分学習しておきましょう。

以上全体を概観してきましたが、今回は障害者総合支援法に規定されている訓練等給付について解説していきます。
訓練等給付
障害者総合支援法に規定されている訓練等給付費には、自立訓練(生活訓練・機能訓練)、就労移行支援、就労継続支援A型(雇用型)、就労継続支援B型(非雇用型)、就労定着支援、自立生活援助、共同生活援助があります。
自立訓練(生活訓練)
自立訓練には、生活訓練と機能訓練があります。
自立訓練の生活訓練は、入所施設や病院から退所・退院する障害者や、特別支援学校卒業者、地域で継続した通院により症状が安定している障害者に対して、生活能力の維持・向上などのための訓練を行います。標準利用期間は原則24か月で、長期間入院・入所者の場合は36か月です。
自立訓練の生活訓練の中に宿泊型自立訓練があります。宿泊型自立訓練は、生活訓練の対象者のうち、日中、一般就労や障害福祉サービスを利用している障害者で、一定期間、居住の場を提供して、生活訓練、入浴、整容、着替えなどの支援、生活等に関する相談、助言、健康管理などの生活能力等の維持・向上のための訓練を行うサービスです。利用期間は、原則2年間で、長期入院者などについては3年間とされています。
自立訓練(機能訓練)
自立訓練の機能訓練は、入所施設や病院から退所・退院する障害者や、特別支援学校卒業者について、身体機能の向上のための理学療法、作業療法等、必要なリハビリテーション等を行います。標準利用期間は18か月です。

自立訓練
- ・自立訓練(生活訓練):生活能力の維持・向上
- ・宿泊型自立訓練(生活訓練):居住の場での生活能力の維持・向上
- ・自立訓練(機能訓練):身体機能の向上
就労移行支援
就労移行支援は、一般就労を希望する65歳未満で、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる障害者等に、一定期間、生産活動、職場体験その他の活動の機会の提供を通じて就労のために必要な知識や能力の向上のための訓練等を行います。
標準利用期間は原則2年です。就労移行支援事業所には、就労支援員が配置されています。
就労継続支援
就労継続支援には、A型(雇用型)とB型(非雇用型)があります。
就労継続支援のA型(雇用型)は、企業等に就労することが困難な障害者であって、雇用契約に基づいて就労することができる者に、生産活動の機会の提供、知識・能力の向上のために必要な訓練等を行います。利用期間の制限はありません。
就労継続支援のB型(非雇用型)は、通常の事業所に雇用されることが困難な障害者に、生産活動の機会の提供等必要な訓練等を行います。利用期間の制限はありません。

就労移行支援:一般就労を目指す
就労継続支援(A型:雇用型):雇用契約による就労
就労継続支援(B型:非雇用型):福祉的就労
就労定着支援
就労定着支援は、就労移行支援等を利用して、通常の事業所に雇用された障害者の就労の継続のため、関係機関との連絡調整、雇用に伴い生じる諸問題への支援を行います。利用期間は1年ごとに更新が必要ですが、最長3年間は利用できます。
具体的には、雇用した企業・事業所・自宅などへの訪問や、障害者の来所による月1回以上の相談によって、生活リズムや体調の管理など、就労に伴い生じている生活面の課題を把握し、就業先の担当者や障害福祉サービス事業者、医療機関などと連絡をとりながら課題解決に向けて、指導・助言などの必要な支援を行います。
自立生活援助
自立生活援助は、単身で生活している障害者等の居宅に訪問し、障害者からの相談に応じ、必要な情報の提供、助言、相談、関係機関との連絡調整等の援助を行います。
具体的には、定期的に利用者の居宅を訪問し、食事・洗濯・掃除など日常生活の課題や公共料金や家賃の支払い、体調や通院状況、地域住民との関係など、居宅での自立した日常生活を営むための各問題について、状況の把握や確認を行い、必要な情報の提供、助言や相談、関係機関との連絡・調整など、自立した日常生活を営むための環境の整備に必要な援助を行います。また、定期的な訪問だけではなく、利用者からの相談・要請があった場合には、訪問、電話、メールなどによる随時の対応も行います。
利用期間は1年で、必要と認められた場合は更新が可能です。
対象者は、①施設などから退所・退院した人、②すでに地域で一人暮らしをしていて支援が必要な人、③障害、疾病などのある家族と同居していて一人暮らしをしようとする人等です。

就労定着支援:雇用に伴い生じる諸問題への支援
自立生活援助:定期訪問・随時対応による自立生活の援助
共同生活援助
共同生活援助は、主として夜間、共同生活を営む住居で相談、入浴、排せつまたは食事介護等の日常生活上の援助を行います。訓練等給付は、本来、障害支援区分認定を必要としませんが、この共同生活援助の利用者で、介護を必要とする場合は、障害支援区分認定が必要です。
共同生活援助には、「介護サービス包括型指定共同生活援助」「外部サービス利用型指定共同生活援助」「日中サービス支援型共同生活援助」「サテライト型住居」があります。
介護サービス包括型指定共同生活援助は、指定共同生活援助事業者自らが入居者に介護の提供を行います。
外部サービス利用型指定共同生活援助は、指定共同生活援助事業者が介護の提供をするのではなく、外部の指定居宅介護事業者に入居者の介護の提供を委託します。
日中サービス支援型共同生活援助は、日中もサービスが提供される形態です。このサービスは、障害者の重度化・高齢化に対応するために創設された共同生活援助の新たな類型で、短期入所を併設し、地域で生活する障害者の緊急一時的な宿泊の場を提供します。施設等からの地域移行の促進や地域生活の継続等、地域生活支援の中核的な役割を担うことが期待されています。
サテライト型住居は、本体居住施設から約20分以内の場所で民間アパートを借りて一人で生活する居住形態です。食事や余暇等は、本体施設で提供が可能で、本体住居の職員が定期巡回を行い、安否確認や相談助言を行います。

共同生活援助
- ・介護サービス包括型:事業者が介護を提供
- ・外部サービス利用型:外部事業者が介護を提供
- ・日中サービス支援型:事業者が常時の介護を提供
- ・サテライト型:本体施設職員が定期巡回・安否確認を実施
いかがでしたか。今回で専門科目をいったん終わります。次からは共通科目を取り上げます。次回は「人体の構造と機能及び疾病」です。
それでは、第25回の精神保健福祉士国家試験にチャレンジしてみてください。
- 第25回精神保健福祉士国家試験「精神障害者の生活支援システム」
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問題75 次のうち、「障害者総合支援法」に規定される自立生活援助として、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 医療機関における機能訓練及び日常生活上の世話
- 2 主として夜間において、相談、入浴、排せつ又は食事の介護その他の日常生活上の援助
- 3 身体機能又は生活能力の向上のための訓練
- 4 一定期間にわたる、定期的な巡回訪問等による相談、助言等の援助
- 5 障害者が行動する際の危険回避のために必要な援護
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