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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第8回 「精神保健福祉に関する制度とサービス」

皆さん、こんにちは。今回は、「精神保健福祉に関する制度とサービス」を取り上げます。精神保健福祉法をはじめ、社会保障制度、更生保護制度、医療観察制度等の様々なサービスについて理解が求められる科目です。

まずは前回の課題の解説をしていきましょう。

第25回精神保健福祉士国家試験「精神保健福祉の理論と相談援助の展開」

問題42 次のうち、相談援助過程におけるモニタリングとして、正しいもの1つ選びなさい。

  • 1 援助関係の契約
  • 2 支援の進捗状況や適切性の確認
  • 3 支援ネットワークの形成
  • 4 相談援助過程の総括
  • 5 ニーズの背景を分析
正答2

解答解説

    • 1 × 援助関係の契約は、インテークで行われる。インテークでは、相談受付、信頼関係の構築、主訴の傾聴、課題の明確化、利用契約を行う。
    • 2 〇 モニタリングでは、支援計画に基づく支援の実施状況や新たなニーズの検証を行い、必要に応じて再アセスメント、再プランニングを実施する。
    • 3 × 支援ネットワークの形成は、インターベンションで行う。インターベンションでは、支援計画に基づき支援を実施し、社会資源の開発・調整、支援ネットワークの形成なども行う。
    • 4 × 相談援助過程の総括は、ターミネーションで行う。ターミネーションでは、相談援助過程を振り返り、契約の終了に向けて感情の分かち合いなど、利用者の不安等の感情に配慮して援助を終了する。
    • 5 × ニーズの背景の分析は、アセスメントで行う。アセスメントでは、総合的に情報を収集し、ストレングスの視点で包括的に現状を評価する。

いかがでしたか。では今回の「精神保健福祉に関する制度とサービス」について、出題基準と過去の出題傾向を分析して、頻出分野を中心に対策を立てていきます。


精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)の意義と内容

この分野は、精神保健福祉法の目的や、精神医療審査会、入院形態、精神障害者保健福祉手帳制度等について整理しておきましょう。

精神障害者の福祉制度の概要と福祉サービス

障害者総合支援法に基づく具体的なサービス内容は、頻出分野です。自立支援給付、地域生活支援事業、基幹相談支援センターの役割等の出題実績があります。

精神障害者に関連する社会保障制度の概要

健康保険、国民健康保険、後期高齢者医療制度、介護保険制度の給付内容、生活保護制度や年金制度、障害者に対する税制優遇措置などの経済的支援に関する制度の学習が求められています。

相談援助に係わる組織、団体、関係機関及び専門職や地域住民との協働

精神障害者にかかわる諸団体や地域住民の役割などを押さえておきましょう。保健所の精神保健福祉業務、当事者組織、家族会等が出題されています。

また、発達障害者支援センターの業務、職場のメンタルヘルスにおける労働基準監督署の役割等の出題実績があります。

更生保護制度の概要と精神障害者福祉との関係

更生保護制度の意義と目的、地方更生保護委員会・保護観察所の役割等、更生保護制度の仕組みを整理しておきましょう。更生保護の担い手としての保護観察官や保護司、更生保護にかかわる民間組織や団体の役割等についても理解しておきたいものです。後ほど、この分野を取り上げて解説します。

更生保護制度における関係機関や団体との連携

更生保護制度における司法・医療・福祉の連携の必要性と、それに対応するための更生保護施設、地域生活定着支援センター、自立更生促進センター等の役割について理解を深めておきましょう。

医療観察法の概要

医療観察法の目的と意義、医療観察制度の仕組み、地方裁判所や保護観察所長の役割等を整理しておくとよいでしょう。

医療観察法における精神保健福祉士の専門性と役割

保護観察所に配置される社会復帰調整官の業務として、生活環境の調査、生活環境の調整、精神保健観察などの具体的な内容を理解しておきましょう。

また、精神保健参与員の役割や精神保健福祉士の位置づけ等も確認しておきましょう。

社会資源の調整・開発に係わる社会調査の意義、目的、倫理、方法及び活用

社会調査の意義と目的や、社会調査における倫理や個人情報の取り扱いを学習しておきましょう。具体的な調査方法として横断調査と縦断調査、量的調査と質的調査についても理解を深めておきましょう。

以上全体を概観してきましたが、今回は、更生保護制度と更生緊急保護を中心に解説していきます。

更生保護

更生保護は更生保護法に基づき、犯罪をした者や非行少年等を社会の中で適切に処遇することによって、再犯を防ぎ、非行をなくし、これらの人の改善更生を助けるための制度です。

更生保護には、保護観察、応急の救護等および更生緊急保護、仮釈放・少年院からの仮退院等、生活環境の調整、恩赦、犯罪予防活動があります。

更生保護の対象は犯罪者や非行少年等であること、厚生労働省管轄ではなく法務省管轄であることに注意しておきましょう。

保護観察

犯罪をした者や非行のある少年を社会の中で更生するように指導や支援を行う制度を保護観察といいます。保護観察所がその実施機関となっています。

保護観察に関する機関には、地方更生保護委員会と保護観察所があります。

地方更生保護委員会

地方更生保護委員会は、法務省の地方支分部局として全国に8か所設置されています。この地方更生保護委員会は、刑事施設からの仮釈放や少年院からの仮退院等の申出を審理し、諾否や処分の取り消し等の決定を行う機関です。

保護観察所

保護観察所は、法務省の地方支分部局として全国に50か所設置されています。保護観察所には保護観察官が配置されています。

民間機関

民間の機関として、制度的ボランティアである保護司、更生保護施設を経営する更生保護法人、更生保護制度の啓発活動などを行う更生保護女性会、同世代の青少年を支援するBBS会、仮釈放者等の雇用に協力する協力雇用主がいます。

保護観察の対象者

保護観察の対象となる少年は、家庭裁判所から保護観察処分を受けた保護観察処分少年、家庭裁判所から少年院送致の処分を受けて少年院に入院し、その後少年院から仮退院した少年院仮退院者、成人は、保護観察付執行猶予者、刑事施設からの仮釈放者に分類することができます。法律上は婦人補導院からの仮退院者もありますが、実態として対象者が少なく出題実績もないため今回は省略します。

保護観察の流れ

少年が警察に補導された場合は、家庭裁判所に送致され、少年院への入院か、在宅での保護観察になるのか、いずれかの処分を受けます。

成人が警察に逮捕された場合は、検察に送致され、裁判所に起訴されたら、実刑か、保護観察付執行猶予の判決を受けます。実刑の場合は、刑事施設である刑務所に入所します。保護観察付執行猶予の場合は、在宅で保護観察を受けます。

保護観察の主な担い手

保護観察の主な担い手として、保護観察官、保護司があげられます。それぞれの役割は次のとおりです。

保護観察官 常勤の国家公務員。地方更生保護委員会と保護観察所に配置される。保護観察の実施、生活環境の調整、更生緊急保護、犯罪予防活動等を実施。
保護司 非常勤の国家公務員。報酬はない。保護観察所長が推薦し、法務大臣が委嘱。任期は2年、再任可能。保護観察官で十分でないところを補助する役割。

保護観察の内容

保護観察に付された者が守るべき事項には、すべての保護観察者が遵守すべき一般遵守事項と、対象者の改善更生の必要性に応じて、個別・具体的に設定される特別遵守事項があります。

●一般遵守事項

一般遵守事項には、保護観察官や保護司からの呼び出しに応じ、面談を受けること、生活実態の報告、住居の届け出、転居や7日以上の旅行はあらかじめ保護観察所長の許可を受けなければならないこと等が規定されています。

●特別遵守事項

特別遵守事項には、犯罪性のある者との交際や遊興による浪費、過度の飲酒など、犯罪や非行に結びつくおそれのある特定の行動の禁止、労働の従事・通学など健全な生活態度を保持するための特定の行動の継続、7日未満の旅行・転職等の特定の事項をあらかじめ保護観察官または保護司に申告すること、特定の犯罪傾向を改善するための処遇を受けること、一定の施設や居宅で宿泊して一定期間指導監督を受けること、社会的活動を行うこと等があります。

保護観察の内容

  • ・一般遵守事項(すべての保護観察対象者が対象)
  • ・特別遵守事項(必要に応じて個別に設定)

保護観察中の処遇

保護観察には、本人が遵守事項を守ることを目的として行う指導監督と、自立した生活を送れるように支援する補導援護があります。これらは、保護観察官および保護司が保護観察対象者の社会復帰のために協働して行います。

●指導監督

「指導監督」は、権力的・監督的性格を有するもので、面接などによって、保護観察対象者の仕事や通学の状況、収入や支出の状況、交友関係等の行状などを把握します。

●補導援護

「補導援護」は、保護観察の援助的・福祉的な性格を有する支援で、宿泊場所の確保、医療、職業補導・就労援助、教育訓練、生活環境の改善調整、生活指導、社会生活適応、助言等を行います。

保護観察中の処遇

  • ・指導監督(行状把握、生活指示、専門的処遇等)
  • ・補導援護(援助的、福祉的な支援)

更生緊急保護

最後に、緊急更生保護について取り上げます。

まず、更生緊急保護の対象は保護観察に付されていない者を対象にしているということを確認しておきましょう。

また、親族からの援助や、公共の福祉関係機関等から保護を受けることができない場合、または、これらの援助や保護だけでは改善更生することができない場合に限って行われる緊急で一時的な保護です。

実施者

更生緊急保護は国の責任で実施します。実施者は保護観察所長です。保護観察所長は、更生保護事業を営む者等に委託することができます。

更生緊急保護は、人権に深くかかわるため、本人からの申出がなければ行うことはできません。更生緊急保護の実施については、保護観察所長が検察官、その者が収容されていた刑事施設の長もしくは少年院の長の意見を聴いて決定します。

検察官、刑事施設の長、少年院の長は、刑事上の手続きまたは保護処分による身体の拘束を解く場合、必要があると認めるときは、更生緊急保護の制度と手続きについて教示しなければなりません。

更生緊急保護の内容と期間

更生緊急保護では、当面の生活に必要な範囲に限定した金品の給与や貸与、宿泊場所の提供、医療や療養を受けるための援助、教養のための訓練、就労支援、社会生活適応のための生活指導を行い、生活環境の改善や調整等を図ります。

更生緊急保護の期間は原則6か月で、必要な場合は6か月に限って延長が可能です。

更生緊急保護

  • ・対象は保護観察に付されていない者
  • ・国の責任で保護観察所長が実施
  • ・本人からの申出による

いかがでしたか。次回は、「精神障害者の生活支援システム」を取り上げます。では、第25回精神保健福祉士国家試験から今回の課題をあげておきますので、チャレンジしてみてください。

第25回精神保健福祉士国家試験「精神保健福祉に関する制度とサービス」

問題65 更生緊急保護に関する次の記述のうち、正しいもの1つ選びなさい。

  • 1 矯正施設の長からの申出により実施される。
  • 2 保護の期間は、最長で3年である。
  • 3 仮釈放中の者も対象に含まれる。
  • 4 公共の衛生福祉に関する機関等による保護が優先される。
  • 5 社会福祉法に規定されている社会福祉事業に含まれる。

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