張先生の受験対策講座

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。
- プロフィール張 百々代(はり ももよ)
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精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。
第7回 「精神保健福祉の理論と相談援助の展開②」
皆さん、こんにちは。学習は進んでいますか。本試験までに3~5回は3年分の過去問を解いて理解を深めておくことをおすすめします。中央法規出版から第23回から第25回までの過去問が掲載された『精神保健福祉士国家試験過去問解説集2024』が出版されています。
今回は、「精神保健福祉の理論と相談援助の展開」を取り上げます。では、最初に前回の課題の解説をしておきましょう。
- 第25回精神保健福祉士国家試験「精神保健福祉の理論と相談援助の展開」
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問題36 次の記述のうち、第二次世界大戦後のアメリカの精神保健福祉に関する説明として、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 クラブハウスモデルとしてファウンテンハウスが設立された。
- 2 精神科病院中心の医療からセクター制度への転換が進められた。
- 3 法律第 180 号を制定して公立精神科病院の閉鎖を国の政策とした。
- 4 精神科サバイバー・ネットワークがオヘイガン(OʼHagan, M.)らによって立ち上げられた。
- 5 「精神保健に関するナショナル・サービス・フレームワーク」が公表された。
- 正答1
- 1 〇 1940年代に、アメリカ・ニューヨークでのファウンテンハウスの自助活動をもとにクラブハウスモデルが発展していった。クラブハウスの特徴は、ハウスの運営をメンバーとスタッフが対等の立場で、共同で行う点にある。
- 2 × セクター制度への転換が進められたのは、フランスである。セクター制度とは、一定の人口規模を1つの区域として、精神科医療に必要なすべての施設を備え、地域の中で生活しながら精神科医療を受けられる制度である。
- 3 × 法律第180号(バザーリア法)を制定して公立精神科病院の閉鎖を国の政策としたのは、イタリアである。精神疾患の予防や精神医療・福祉は、地域精神保健センターが主に行うこととし、入院医療から地域ケアと外来医療に転換した。
- 4 × 精神科サバイバー・ネットワークがオヘイガン(OʼHagan, M.)らによって立ち上げられたのは、ニュージーランドである。
- 5 × 「精神保健に関するナショナル・サービス・フレームワーク」が公表されたのは、イギリスである。
解答解説
いかがでしたか。では、前回に続き「精神保健福祉の理論と相談援助の展開」のポイントを確認していきましょう
医療機関における精神科リハビリテーション(精神科専門療法を含む。)の展開とチーム医療における精神保健福祉士の役割
「精神科専門療法」としては、作業療法、集団精神療法、認知行動療法、レクリエーション療法、社会生活技能訓練(SST)を押さえておきましょう。
また、「代表的な実践モデル」として、治療モデルと生活モデル、ストレングスモデル、リカバリーモデル、再発予防モデル、職業リハビリテーションモデル等の特徴についても押さえておくとよいでしょう。

相談援助の過程及び対象者との援助関係
この分野は非常に出題率の高い分野です。相談援助における展開過程について、各段階での援助者として留意すべきことを整理しておきましょう。
ケース発見、インテーク、アセスメント、プランニング、インターベーション、モニタリング、エバリュエーション、ターミネーション、アフターケアのそれぞれの段階の援助内容と具体的な留意点の出題がみられます。今回は後ほど、この分野を取り上げて解説していきます。

相談援助活動のための面接技術
ここも出題率の高い分野です。面接室における面接、生活場面面接、電話面接と面接技法について具体的な事例問題が解けるようにしておきましょう。
面接技法として、明確化、励まし、要約、感情の反映、直面化、支持、言い換え等が出題されています。それぞれの違いを見分けることができるように、実際に問題を解いて理解を深めておきましょう。

相談援助活動の展開(医療施設、社会復帰施設、地域社会を含む。)
ケースワーク、グループワークの原則と展開方法など、事例で多く出題されています。グループワークでは、精神科デイケア、社会生活技能訓練(SST)、アルコール依存症や薬物依存症を対象としたプログラム等、疾病や障害特性を把握して事例問題に対応できるようにしておきましょう。

家族調整・支援の実際と事例分析
家族療法的アプローチや家族心理教育プログラムの内容を理解し、家族会の活用等も視野に入れて学習しておきましょう。
スーパービジョンとコンサルテーション
スーパービジョンの管理的・教育的・支持的機能と、個人スーパービジョン、グループスーパービジョン、ピアスーパービジョン、ライブスーパービジョンのそれぞれの形態と適用、スーパービジョンとコンサルテーションの違い、コンサルテーションの定義と特性等を理解しておきましょう。
地域移行・地域定着支援の対象及び支援体制
この分野は極めて出題頻度の高い分野で、出題されない年はほとんどありません。精神科病院からの精神障害者の地域移行体制について、制度面から十分に学習しておきましょう。特に、障害者総合支援法における地域移行支援・地域定着支援の内容を整理しておきましょう。
また、これらの支援における精神保健福祉士や退院後生活環境相談員の役割、障害者立支援制度等の関連諸制度についても正確な理解が求められます。

地域を基盤にした相談援助の主体と対象(精神障害者の生活実態とこれらを取り巻く社会情勢、医療、福祉の状況を含む。)
保健所や市町村の役割、就労支援、居住支援の体制、精神保健福祉センター、地域生活定着支援センター、ひきこもり地域支援センター等の相談支援機関の役割を把握しておきましょう。
専門職として、障害者職業カウンセラー、社会復帰調整官、相談支援専門員、精神保健福祉相談員、精神障害者雇用トータルサポーター等の役割についても理解を深めておきたいものです。
地域を基盤にしたリハビリテーションの基本的考え方
地域ネットワークの必要性とその種類としくみ、地域ネットワーク形成における精神保健福祉士の役割等について理解を深めておきましょう。
また、地域ネットワーク形成における社会資源の活用の仕方、住民の意識形成、当事者活動等、精神保健福祉士としての視点を意識して解答を導き出す訓練をしておきましょう。
精神障害者のケアマネジメント
精神障害者のケアマネジメントの意義、「障害者ケアガイドライン」におけるケアマネジメントの理念と人権への配慮、具体的なケアマネジメントのプロセスと各段階における留意点等をよく理解しておきましょう。

地域を基盤にした支援とネットワーキング
コミュニティソーシャルワークの概念とストレングスモデルによる地域アセスメント、ノーマライゼーションの理念と住民参加、社会資源の活用と開発、地域啓発活動、地域の人材育成等において、精神保健福祉士に期待されている役割を押さえておきましょう。
地域生活を支援する包括的な支援(地域精神保健福祉活動)の意義と展開
精神障害者支援における包括的支援体制の必要性と理念、精神障害者に対する社会的排除(ソーシャルエクスクルージョン)の要素と社会的包摂(ソーシャルインクルージョン)の理念の重要性と包括的支援体制について、学習しておきましょう。
リカバリー、エンパワメントの理念に基づいた地域精神保健福祉活動、地域資源開発のためのコミュニティソーシャルワークなど、社会的排除の対象となりやすい精神障害者を支援するための重要な理念に基づいて具体的に実践していく援助技法や支援体制も含めて学習しておきましょう。
以上、出題傾向の分析と対策についてみてきましたが、今回は相談援助の展開過程を取り上げていきます。
相談援助の展開過程
相談援助の展開過程には、ケースの発見・相談の受付、インテーク、アセスメント、プランニング、インターベンション、モニタリング、エバリュエーション、ターミネーション、アフターケアがあります。
インテーク
ケースの発見・相談の受付
インテークは、ケースの発見、あるいは相談の受付から始まります。
自分から相談に来るボランタリー・クライエントについては相談の受付から始まりますが、支援を必要としていても自分から相談に来られないインボランタリー・クライエントついては、まずケースを発見する必要があります。
ネットワークとアウトリーチによる発見
インボランタリー・クライエントを発見するためには、地域のネットワーク、民生委員や保健師など、地域の多様な社会資源を活用することが有効です。
精神障害者が自分から相談に来るケースは少なく、ニーズが潜在化しやすいため、ケース発見のためのアウトリーチが重要な役割を果たします。
リファーラル
インテークでは、クライエントの主訴を明確に把握し、課題がその機関の機能に合致するかどうかを判断します。クライエントの生活課題を自分の所属する機関が扱っていない場合は、相談内容に適合する他の相談支援機関に紹介します。これをリファーラルといいます。
受理面接
利用契約を結ぶ際は、クライエントと支援者に信頼関係が構築されていることが前提になります。
受理面接では、信頼関係に基づいて、①クライエントの主訴を傾聴してニーズを把握し、課題を明確化する、②サービス機関の機能や提供できるサービス内容を説明する、③クライエント自身がニーズとサービスを吟味し、利用契約について自己決定をするという手順を踏みます。

インテーク
ケースの発見、相談受付、信頼関係の構築、主訴の傾聴、課題の明確化、利用契約
アセスメント(課題分析)
利用契約を結んだら、アセスメントを開始します。アセスメントでは、利用者の現状とニーズを総合的に把握して評価し、そのニーズを充足するための社会資源を把握します。
アセスメントは、ストレングスの視点で人と環境に関する情報、問題解決に必要な情報を収集します。情報収集を行ったら、目標設定に向けて広い視野に立ち、包括的に現状を評価します。アセスメントには、プランニングの方向付けの役割があります。

アセスメント
- ・ストレングスの視点
- ・総合的に情報を収集し、包括的に評価
プランニング(支援計画の作成)
プランニングの際は、まず目標を設定します。目標設定は、利用者の主体的参加を促進し、説明と同意に基づいて行います。
計画の策定では、アセスメントで明らかになったニーズを充足する社会資源を選定します。この場合、フォーマルな社会資源だけでなく、インフォーマルな社会資源も活用していくことが大切です。

プランニング
- ・目標の設定
- ・ニーズ充足のための社会資源の選定
インターベンション(支援の実施)
支援計画が作成されたら、支援を実施する段階に移ります。多様な援助技術を駆使し、支援者と支援機関が利用者本人とチームを組み、支援していきます。社会資源の開発・調整、支援ネットワークの形成等も行います。

インターベンション
- ・多様な援助技術を駆使
- ・社会資源の開発等も含む
モニタリング(経過観察)
支援計画に基づいた支援が適切に実施されているか、状況の変化や新たなニーズの発生の有無を検証するために、モニタリングを実施し、利用者の満足度やサービスの質等を確認します。モニタリングの対象は利用者だけはなく、家族、サービス提供者、支援者等も含まれます。
モニタリングによって、支援計画を作成し直す必要があると認められた場合は、再アセスメントが行われ、新たな支援計画を作成し、それを実施することになります。

モニタリング
- ・支援の実施状況、新たなニーズを検証
- ・必要に応じ再アセスメント、再プランニング
エバリュエーション(事後評価)
終結が近づいてきたら支援の妥当性の論拠のために、支援者と利用者が効果測定と評価を行います。これをエバリュエーション(事後評価)といいます。
利用者のニーズがどれだけ充足されたか、また、計画における目標をどれだけ達成することができたかを客観的、総合的に精査し評価します。
活用した社会資源の種類と活用方法の確認とその効果なども評価します。支援の全体の振り返り、目標の達成度や課題の解決などの評価、利用者自身の満足度、リカバリーの到達度なども含めて評価します。

エバリュエーション
- ・目標の達成度を総合的に評価
- ・利用者の満足度等も評価
ターミネーション(終結)
支援計画の目標が達成され、利用者の問題解決が図られ、支援が必要でなくなった場合、支援は終了します。ターミネーション(終結)では、相談援助過程を振り返り、契約の終了に向けて準備します。
終結時には、感情の分かち合いを行い、不安等の感情に対する配慮も必要になります。支援者は利用者の不安な気持ちを受け止め、円滑な終結に向けて調整を行います。支援者と利用者がお互いに納得できるように終結することが大切です。

ターミネーション
- ・感情の分かち合い
- ・円滑な終結への配慮
アフターケア
終結の際に、支援が必要になった場合に再度支援する可能性があることを利用者に伝えておくことは、利用者に安心感を与えます。問題が再発しないように防止し、円滑に社会に適応できるよう、気楽に相談できる体制を整えておきます。必要に応じて、関係機関を紹介しておくのもよいでしょう。

アフターケア
- ・再度の支援の可能性を伝える
- ・気楽に相談できる体制を整えておく
いかがでしたか。次回は、「精神保健福祉に関する制度とサービス」を取り上げていきます。では、第25回の精神保健福祉士国家試験から今回の課題をあげておきますので、チャレンジしてみてください。
- 第25回精神保健福祉士国家試験「精神保健福祉の理論と相談援助の展開」
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問題42 次のうち、相談援助過程におけるモニタリングとして、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 援助関係の契約
- 2 支援の進捗状況や適切性の確認
- 3 支援ネットワークの形成
- 4 相談援助過程の総括
- 5 ニーズの背景を分析
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