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張先生の受験対策講座

張 百々代(はり ももよ)

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。

プロフィール張 百々代(はり ももよ)

精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。

第45回 第25回精神保健福祉士国家試験 共通科目の講評

 皆さん、こんにちは。試験の結果発表が待ち遠しい日々を過ごしておられることと思います。前回の専門科目に続いて今回は共通科目の出題傾向を分析していきます。

人体の構造と機能及び疾病

 思春期の心身の変化、ICFの概念と分類、疾病予防については一般的な知識で解ける内容でした。疾病と障害の概要として、パーキンソン病、脳梗塞による片麻痺、注意欠如・多動症(ADHD)の出題がありましたが、やはり基礎的な知識で対応できるものでした。

 がん(悪性新生物)の部位別死亡順位を男女別に問われるのは久しぶりだったので、学習していなかった受験生には難度が高かったかもしれません。また、今回は「心身機能と身体構造の概要」の分野からの出題がなかったのが目を引きました。

 全体的に特に難問といえる問題はなかったので、取り組みやすかったのではないでしょうか。

心理学理論と心理的支援

 動機づけ理論、集団理論、ストレス対処法、心理検査、心理療法に関しては、従来を踏襲した定番問題でした。パーソナリティ論に関しては、従来よりも踏み込んで、ビッグファイブの1つの「外向性」の特徴が出題されました。特に難易度が高いものではありませんでしたが、今後はビッグファイブのそれぞれの特徴まで押えておく必要があるでしょう。

 子どもの発達については、共同注意や社会的参照などしばらく出題されていなかった発達に関する用語の概念が出題されました。また、今回は、感覚・知覚、条件づけ理論、学習理論の出題はみられませんでした。

 科目全体でみると、難易度はそれほど高くはなかったと思われます。

社会理論と社会システム

 ヴェーバーの合法的支配、社会変動論、ライフサイクル論、役割理論、社会的ジレンマ、逸脱理論とすべて基本的な知識で対応できる内容でした。今回は、人口論、都市化論、家族論の出題はありませんでした。

 統計に関する問題としては、男女共同参画白書が出題されました。一般的な常識の範囲で解けるものもありましたが、細かいデータまで把握していた受験生は多くはなかったと思われますので、解答を導き出すのに少々手間取ったのではないでしょうか。

現代社会と福祉

 国が進めている地域共生社会の実現に関して前回に続いて出題されました。福祉政策論や福祉の先駆者の人物・業績、生活困窮者自立支援法、福祉サービスの利用については定番問題でした。

 福祉に関する思想や運動、福祉ニーズと充足については、今までの試験で出題されたことのない名前もありましたが、それらがわからなくても正しい選択肢を選べるような問題でしたから心配はなかったでしょう。

 わが国の福祉の発展の経緯については、今回は福祉六法制定時の制度内容が問われました。法制定時の時代背景と法律の目的と対象についての理解があれば対応できたのではないでしょうか。

 日本の人口動向については、日ごろニュースを見ていれば正解を導き出せたことでしょう。また、男女雇用機会均等法におけるハラスメント対策、女性活躍推進法における女性活躍一般事業主行動計画、非正規雇用職員の育児休業取得、男性労働者の育児休業取得等の男女雇用均等政策についてもニュースで取り上げられていた内容です。社会情勢にアンテナを張っておく重要性を感じる出題内容であったといえるでしょう。

地域福祉の理論と方法

 地域福祉の基礎的な理念や概念、地域福祉の多様な参加形態、社会福祉法に規定されている地域福祉に関する記述、市町村地域福祉計画、共同募金、災害時の支援体制については従来の問題を踏襲したものでした。

 短文事例の自立相談支援機関の社会福祉士の対応、一人暮らし高齢者の保佐人である社会福祉士の対応についても援助の理念を理解していれば選択できる内容でした。

 地域共生社会の実現に向けた厚生労働省の取り組みの経緯については、すべての報告書やとりまとめを理解していた受験生は多くはないと思われますので、難度の高い問題でした。

 全体的にみると、他の科目に比べて、得点が伸び悩む科目だったといえるでしょう。

福祉行財政と福祉計画

 社会保障審議会、都道府県知事の役割、社会福祉に係る法定機関・施設の設置、地方財政白書における民生費内訳は定番問題でした。都道府県地域福祉支援計画は国、都道府県、市町村の役割と性格がわかっていれば、特に問題はなかったでしょう。

 市町村に策定が義務づけられている計画、福祉計画に定める事項についても頻出分野でした。ただ、福祉計画の分野は苦手な受験生が多いので、どこまで得点を伸ばせたかが気になるところです。

 特に難問はありませんでしたが、福祉計画の根拠法と性格、市町村計画と都道府県計画に定める内容の違いがわかっていたかどうかで、得点に差が生まれたのではないかと思われます。

社会保障

 社会保障の歴史的展開が1問、社会保険制度全般が1問、社会保険の加入に関して1問、社会保険制度の適用が1問、年金保険制度が1問、医療保険制度が1問、労災保険が1問、という構成でした。社会保険制度全般について横断的に問う問題が3問あったのが特徴的でした。

 それぞれの分野の社会保険制度の内容は出題実績のあるものが多く、受験生にとっては取り組みやすい内容だったと思われます。社会保険の加入に関する短文事例については、時間の制限がある中で素早く事例の内容を把握する必要があり、難度は高かったといえるでしょう。今後も社会保険全般について横断的に出題される傾向が続くと思われます。

障害者に対する支援と障害者自立支援制度

 例年通り、障害者福祉制度の発展の経緯、障害者総合支援法における障害福祉サービスと専門職、障害者関連法として身体障害者福祉法、精神保健福祉法という出題構成でした。

 事例問題は、視覚障害者のための障害福祉サービスの種類、精神科病院の入院患者の退院支援の際の障害福祉サービスに関する内容でした。全体的に特に難問といえるものはなく、過去問をやっていれば対応可能な内容でした。

低所得者に対する支援と生活保護制度

 被保護者調査、生活保護法の理念と目的、保護の補足性の原理、保護基準、8扶助の種類と内容、生活福祉資金貸付制度は、定番問題で取り組みやすい内容でした。

 生活扶助基準の設定方式については、今回のように詳しく出題されたのは久しぶりでした。標準生計費方式は聞きなれない受験生も多かったと思われますが、わからなくても正しい選択肢は選べる問題でした。

 生活困窮者自立支援制度については、通常の問題と短文事例の2問出題されました。短文事例は実践力を試すために、今後も出題数が多くなることが予想されます。

保健医療サービス

 医療保険制度、後期高齢者医療制度、診療報酬制度、医療提供体制については、頻出分野で取り組みやすかったと思われます。国民医療費の概況も過去の出題形態を踏襲したものでした。

 医療ソーシャルワーカーについての短文事例も制度の知識があれば対応できる内容でした。チームアプローチについては具体的な事例から選択する必要があり、少々難度の高い問題でした。

 科目全体でみると、他の科目に比べて難度が高かったという印象があります。

権利擁護と成年後見制度

 憲法が1問、成年後見制度が3問、消費者被害が1問、家庭裁判所の役割が1問、日常生活自立支援事業の実態が1問という構成で、今回は民法と行政法に関する出題はありませんでした。

 憲法については基本的人権の最高裁判例に関する出題でした。近年、最高裁判例の出題が多くなっています。成年後見制度、消費者被害については、事例問題も含めて過去の出題傾向を踏襲する内容でした。

 日常生活自立支援事業については、実態のデータを把握している受験生は多くはなかったと思われますから難しく感じられたことでしょう。家庭裁判所の役割についても今までの出題実績は少ないので、少々難度が高かったといえます。

 科目全体でみると、他の科目に比べて難度が高かったという印象があります。

 以上共通科目を分析してきましたが、共通科目全体をみると、科目によってはばらつきがありますが、全体では昨年度と同様あるいは少々難度が上がっているという感触をうけました。

 さて、2回にわたり本試験問題の分析を行ってきましたがいかがでしたか。

 今回で本年度の講座は終了です。1年間、熱心にご愛読いただき心から感謝申し上げます。精神障害者の人権を護り、精神障害者のために良き援助者となろうという、高い志をもった皆さんと一緒に学習を進めることができたことを、心から嬉しく思っています。

 昨年に続いて、今年も新型コロナとインフルエンザの同時流行の中で、健康管理に留意しながらの受験で大変だったことと思います。今までの皆さんの努力は、必ず報われると信じています。

 結果が出るまでは不安だと思いますが、皆さまが合格の栄冠を勝ち取られますことと、これからの皆様のご活躍を心から応援しています。

 一年間ご愛読いただきまして、本当にありがとうございました。


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