張先生の受験対策講座

受験勉強のガイド役となるのがこのコーナーです。受験対策のプロである張(はり)先生が、あなたの合格までの道のりをサポートします。
- プロフィール張 百々代(はり ももよ)
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精神保健福祉士・社会福祉士。児童養護施設、老人福祉施設での勤務を経て福祉系専門学校講師に。
現在は受験対策講座講師、各大学での受験対策に従事しており、第三者後見人として精神障害者・知的障害者の成年後見活動にも携わっている。
第44回 第25回精神保健福祉士国家試験 専門科目の講評
皆さん、受験おつかれさまでした。新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行の中での2日間にわたっての試験、緊張の連続だったことと思います。今は達成感と合格発表までの不安が入り混じっているのではないでしょうか。
けあサポでは解答速報を出していますので、得点の目安を確認することができます。事例問題等で解釈の相違によって解答が分かれる可能性もあるので、数点の幅をもって予測しておかれるとよいでしょう。
一番気になるのが合格ラインだと思いますが、試験センターの発表があるまであきらめずに、最後まで希望をもって発表を待ちましょう。
第25回試験の出題形式は、例年通り五肢択一問題をベースに五肢択二問題が散在するという形態でした。事例問題についても、短文事例と長文事例という出題形態は変わらず、全体的に大きな変化はみられませんでした。
今回は、専門科目の出題内容の分析をしていきます。
精神疾患とその治療
今回は、精神医学的な専門的な知識を問う問題はみられず、一般的、基礎的な知識で十分対応できる内容でした。
代表的な疾患と症状についても、神経性大食症の代償行為、統合失調症の陰性症状、うつ病の心気妄想、アルツハイマー型認知症の物盗られ妄想、強迫性障害の儀式行為など、出題実績のある解きやすい問題でした。
認知症スクリーニングテスト、ベックの認知行動療法、統合失調症の維持期の治療、入院形態なども基礎的な内容でした。精神保健福祉法の改正内容に関する問題は、従来はあまりこの科目では出題されていませんでしたが、内容自体は特に難易度の高いものではありませんでした。
科目全体でみると、代表的な疾患と症状の出題数が5問とウエイトが高かったこと、薬物療法と副作用に関する出題がなかったのが目を引きました。全体的に解きやすかったといえるでしょう。
精神保健の課題と支援
エリクソンの発達課題は、共通科目の「心理学理論と心理的支援」と重なる分野でした。ストレスへのアプローチ方法、グリーフケア、災害時のDPAT、施設コンフリクトについては、出題実績があり難度は高くありませんでした。
日本いのちの電話連盟、自殺の際の報道に関する「WHOの手引き」についても常識の範囲で解答を導き出せるものでした。
労働と精神保健については、根拠法と施策内容についてある程度の知識が求められる問題でした。また、第2期アルコール健康障害対策推進基本計画は内容を読み込んでいた受験生は少ないと思われますので、難度は高かったといえるでしょう。
精神保健福祉相談援助の基盤
精神保健福祉士法の改正、ソーシャルワーカーの機能、ソーシャルワーク専門職のグローバル定義、相談援助の理念、インテーク、精神科医療機関の専門職については頻出内容で対応しやすかったと思われます。
権利擁護の機能は頻出分野ですが、近年の出題傾向を反映して、具体例で問う形式での出題でした。短文事例問題は制度系で基礎的な内容でした。
うつ病の長文事例問題は、ブトゥリムのソーシャルワークの価値、チームビルディングの段階、障害の受容と、多角的な視点からこの科目の要点を押さえた、非常によく考えられた良問でした。統合失調症の長文事例問題も基本的な理念や考え方を問うものでした。
この科目も特に難問といえるものはなく、全体的に取り組みやすかったといえるでしょう。
精神保健福祉の理論と相談援助の展開
諸外国の精神保健福祉、エンパワメント、アドヒアランス、プランニング段階でのストレングスの視点における支援、解決志向アプローチ、モニタリング、デイケアのグループワーク、コミュニケーション技法、スーパーバイズの具体例、退院支援、精神障害者への理解の促進、精神障害者のケアマネジメント等は基礎的な知識で対応できるものでした。
統合失調症、覚醒剤使用、アルコール依存症に関する長文事例問題は、基本的な知識で対応できたと思われます。コミュニティソーシャルワークに関する長文事例問題は従来はみられなかった内容であったため、正答を導き出すために時間がかかったのではないでしょうか。今後、精神保健福祉士に期待されるコミュニティソーシャルワーカーとしての役割を先取りする斬新な問題でした。
全体的にみて、出題基準がバランスよく出題されており、難度もそれほど高くなかったといえるでしょう。
精神保健福祉に関する制度とサービス
精神保健福祉法、障害者基本法、介護保険制度、生活保護制度、医療観察法、精神保健参与員などは定番問題でした。
社会調査の分野から2問出題されているのが目を引きました。オプトアウトについては理解していた受験生は多くなかったと思われますので、難問の部類だったといえるでしょう。
統合失調症の再発による入院の長文事例問題では、医療保護入院の市町村長同意、入院中の所得保障としての傷病手当金、障害者総合支援法の障害福祉サービス制度について問われましたが、基礎的な知識で対応できる内容でした。
精神障害者の生活支援システム
障害者差別解消法、障害者総合支援法の障害福祉サービス、保健所の精神保健福祉業務は定番問題でした。居住サポート事業の内容を詳しく知っていた受験生は多くなかったと思いますが、消去法で解けたでしょう。障害者短時間トライアルコースについては、共通科目の「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」とも共通する部分でした。
長文事例問題の統合失調症患者の一般就労については、障害者総合支援法の基本的知識で対応できる内容でした。
以上、各科目の出題傾向と難易度をみてきましたが、今回の全体の出題傾向をみると、出題基準に則ったオーソドックスな良問が多かったといえると思います。
受験生の皆さんは、試験が終わりほっとしていることと思います。1年間、大変な中、本当に頑張ってこられましたね。今までの皆さんの頑張りに、心からの拍手を送ります。
合格発表までは、落ち着かない日々を過ごされると思いますが、今までの自分の頑張りを褒めてあげて、しばらくは受験勉強から解放され、ゆっくりとリラックスして明日の活躍に備えてください。本当におつかれさまでした。
次回は、共通科目の出題傾向を分析していきます。
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