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介護福祉士のしごと体験記

介護福祉士を取得し、これから新たに働くという方、もう働いているけれども有資格者として新たな1歩を踏み出すという方。
それぞれにいろいろな不安があると思います。


そこで、みなさんよりも一足早く介護福祉士になられて現場で活躍されている/キャリアアップされた方々にお話を伺いました。
ここでのお話を参考に、新たな職場・キャリアでのイメージを膨らまし、不安解消に役立てていただければと思います!


「介護福祉士」としての自信

 「介護職の離職が多い」と思われがちですが、実は離職率は年々下がり続け、2020年14.9%と過去最低を記録。全産業(14.2%)並みになっています。
 今では多くの方が介護の仕事を長く続けているということです。

 そこで気になるのは介護福祉士としての自身の10年後、20年後の姿(キャリア・キャリアプラン)ではないでしょうか。
 今回は公益社団法人日本介護福祉士会の会長で、株式会社かいごラボの代表取締役も務める及川さんにご自身の経験をもとに介護福祉士のキャリアについてお話を伺いました。

 及川さんは、病院の看護助手から介護職としてのキャリアをスタートし、介護福祉士の生涯研修体系に位置づく認定介護福祉士養成研修など、様々な研修を受講しご自身のキャリアを積み上げながら、25年を超える年月を介護業界で過ごしてきました。
 及川さんが介護を始めるに至ったきっかけと、認定介護福祉士養成研修を受講するまでの経験を是非参考にしていただければと思います。

及川さん

病院のケアワーカーで働いたことがきっかけ

 28歳まで一般企業で働いた自分が、介護の世界に入ったのは2人目の子供が生まれてからだった。病院で働いてみたいと思い、医療事務の資格を取得したが、幼い子供を抱えた身では難しいことに気が付いた。

 ちょうど病院のケアワーカーという聞いたこともない職種の求人を見て、託児所付きということもあり、就職した。
 大きな紙おむつを持たされた私は、その排せつ介助の方法に驚いたが、なぜか辞めたいと思うことはなかった。
 高齢者に特化した病院であったので、大勢の方の食事介助、入浴介助、排せつ介助、服薬支援、そして、看護師の処置を手伝う看護助手という業務に就いた。

 ルーチンワークでの業務を、正確性とスピードを求めて、なかなかに仕事のできるケアワーカーと評価された。

「痴呆」の女性との出会いを機に介護福祉士へ

 この病院で、その頃の言葉でいう「痴呆」の症状が顕著なある女性と出会った。
 私がこの仕事を続けていくうえで、大きな転機だった。
 「痴呆」の方の表す症状に、何も解決策を持っていない自分の「無力さ」を痛感した。このままではいけないと思った。

 その後、介護福祉士の国家試験を受験した。3年の経験と、テキストの情報だけの受験であった。
 それから、様々な人に出会った。様々な指導者の中でも医療職の存在とその知識や技術指導を受けたのは大きかった。
 また、学習する機会が大切だと先を示す先輩介護福祉士や、介護福祉士会という職能団体との出会いは、この先の私にとって大きな力となった。

「介護福祉士」「管理職」としての自信が持てない…

 今振り返ると、介護福祉士となって、介護職員の指導役や利用者に対するケアマネジメント役を担う機会が増えていった。そしてそれを精一杯努めた。

 その後、介護保険制度が始まって、すさまじいスピードと膨大な情報量に翻弄された。
 実は、「施設の介護」や、「在宅介護」での利用者さんの課題解決の一つひとつに、そのやりがいを感じていたが、同時に、介護福祉士としての自分や管理職となった自分には、なぜか「自信」が持てなかった。

 仕事は楽しかった。「目の前の利用者さんの生活を少しでも良い方向に向けられたら」と考えながら、チームケアに夢中になった。

指導者として活動しながら管理職としてのスキルも積み上げる

 ちょうどその頃、静岡県介護福祉士会の役員を務めることになった。自己研鑽の場を提供する職能団体の活動に参加し、指導者養成講習を受けた。
 静岡県介護福祉士会が主催する研修の企画から講師まで担うようになった。そこでの仲間との出会いと、貴重な経験は、多忙を極めたが、楽しさも感じられ、充実した時間であった。

 自分の住まいの近くに新設の施設が立つというので、「施設準備室長」の肩書をもらい、職場を変えた。ここでは様々なマネジメント力が求められた。
 この時の不安は、職能団体の仲間やその関係で知り合った他の団体の方々からのアドバイスや情報が、私の盾になり払拭できた。この時期も、夢中になって充実した時間を過ごした。そして2年後、この特別養護老人ホームの施設長に就任することになった。

 施設長になるための研修も受講し、就任してからも管理職としてのスキルを積み上げることになるのであるが、想像を絶するような事象が目の前で次々に起こる。そのたびに「不安」と「自信のなさ」が再燃するのである。それでも目の前の課題をつぶすことに翻弄し、何とか形になる。そんな時間を過ごしていた。

認定介護福祉士の道へ

 そんなとき、「認定介護福祉士養成研修」モデル研修の情報が入り、職能団体の推薦を受け申し込んだ。今まで以上に多忙な毎日となったが、研修はとても面白かった。

 そこでは、私の「知らないこと」「わかってないこと」が露見した。「やっぱり」はわかってなかった。と感じることが多くあった。何とかこの知識を身に付けたいと必死でその授業に向かい、事前事後課題をこなした。

 受講を続けながら感じたことは、私自身が学びの時間から獲得する「自信」を欲していたことであった。
 25年以上の経験を持っていながら、いつも自信がなかったように思う。3年の介護経験と独学で学んだ知識は、どうしても自信につながらなかった。
 特に後半の組織マネジメント等の授業は難しかったが、知識が広がり、実践への意欲が上がるものとなった。

 この研修は、自分の中の介護福祉士としての在り方を再考するものとなった。国家資格を持つ者として、国民に、地域に何ができるか、自分たちの役割はどこにあるのか、これまで自分があまり考えてこなかったフィールドをしっかり見せられたようであった。

 これから「認定介護福祉士」と呼ばれている自分に、次のステージが用意されているようで、ワクワクしているが、しっかり務めていきたいとも思っている。この養成研修でつけてもらった「自信」を、地域や介護に従事する仲間たちに、様々な形でしっかり働きかけたいと考えている。

 また、この研修で一緒に学んだ仲間たちに感謝している。立場だけが大きくなった自分に、ストレートに違うことは違うと、少し傲慢な考えではないかと意見してくれる仲間である。この研修で獲得した一番の力はこの仲間たちである。

 介護のしごとを続け、この仕事の尊さを改めて感じている。様々な生活環境の中で、自分たちと利用者とともに過ごす場面であふれ出す笑顔を見せていただくたびに、この笑顔をもっと見たいと願い、痛みや苦しみをなるべく少なくしてさし上げたいと多職種も含めたチームで検討を繰り返す。
 この仕事に大きなやりがいを感じているのは私一人ではない。この仕事を志す人々とも大いに語りたいものである。

株式会社かいごラボ代表取締役
公益社団法人日本介護福祉士会会長
 及川ゆりこ