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石橋先生の受験対策講座

石橋 亮一(いしばし りょういち)

忙しい日々の中で効率よく勉強するにはどうしたら?とお悩みのあなたに、ぴったりのガイド役となるのがこのコーナーです。介護の現場にも詳しい石橋亮一先生が受験勉強のポイントを講義します。

プロフィール石橋 亮一(いしばし りょういち)

介護福祉士/社会福祉士/介護支援専門員
社会福祉法人同胞互助会にて特別養護老人ホーム、在宅介護支援センター、株式会社ベネッセコーポレーションにてホームヘルプサービス、居宅介護支援事業等に従事。その後、地域や学校、介護サービス事業者・施設の研修講師・アドバイザー、介護認定審査会委員、東京都第三者評価員、介護サービス情報の公表制度調査員、特別養護老人ホームの施設長等に携わる。介護福祉士や社会福祉士、介護支援専門員などの受験対策講座も数多く行っている。

第44回 第33回介護福祉士国家試験・筆記試験を振り返って(前半)

 こんにちは。昨年4月から今年1月まで、筆記試験の受験勉強をご一緒させていただいた石橋です。受験された皆さんにおかれましては、本当にお疲れさまでした。結果はいかがでしたでしょうか。

 全体の内容は、難解なものもありましたが、少々難易度が高かった前々回(第31回)を除き、第25回以降の過去7回と、同じくらいの難易度と感じました。近年は、実務・実践的な表記での設問が増えていますね。いずれの科目も、介護の仕事に必要な知識、技術、理念について、一通り出題されたという印象です。

 今回と次回の2回にわたり、筆記試験を振り返ってみようと思います。受験した方、これから受験する方、各々の立場で参考にしてください。今回は、「午前」の問題です。なお、解答については、こちらをご覧ください。

人間の尊厳と自立

 人間の尊厳とは、「人間が生きている存在として、その生命や生活が、尊く厳かで、侵してはならない価値のあるもの」ということです。また、自立とは、「援助を受けていようといなくても、自らの生活を、自己選択、自己決定、自己責任の原則で管理していること」をいいます。介護福祉職は、介護が必要な利用者の、尊厳を保持し、自立を支援する役割です。そのような視点で、事例問題を正答できていればと思います。

 また、リッチモンドは、今から約100年前、ソーシャル・ケース・ワークという、今日の社会福祉士等が行う相談援助に関する技術を体系化しました。あわせて、利用者の主体性の尊重などの理念も唱えた人です。

人間関係とコミュニケーション

 コミュニケーションとは、「複数の人間が意思や感情、情報などの伝達を行い、互いに理解を深めてわかり合うこと」とされています。本科目では例年、利用者との良好な人間関係を築くために必要な、対人サービスにおけるコミュニケーションの基本について問われます。今回は、「言語メッセージと矛盾する内容を非言語メッセージで伝えている」利用者を理解する事例問題が、出題されました。

 また、人間関係における役割葛藤とは、「家族介護者が、仕事と介護の両立への期待に応えられるかどうか悩む」といった、個人が持つ複数の役割の間で、ジレンマ(板挟み)に陥る状態などを指します。

社会の理解

 本科目では、まず、介護や育児など生活上のニーズ(生活課題)に携わり、支える、家族地域について出題されます。近年の家族の変容として、核家族の中で、「ひとり親と未婚の子」の世帯が増加しています。また、今日、地域包括ケアシステムの構築を進めるなか、様々な生活課題を、自助・互助・共助・公助の連携によって解決する取り組みが求められており、患者会などのセルフヘルプグループは、自助を支える互助のグループといえます。

 次に、共助や公助を含む社会保障制度について、出題されます。出題頻度が最も高いのは、社会保険の1つである「介護保険制度」です。今回は、保険者(市町村及び特別区)や、ケアマネジャー(介護支援専門員)を軸とした具体的な制度利用(居宅サービス計画の作成は、原則として要介護認定の後に行う)などについて、出題されました。

 出題頻度の高いものには、「障害者総合支援法」もあります。今回は、障害者の定義(18歳以上の者)、サービスを利用するための障害支援区分を判定する組織(市町村審査会)などについて、出題されました。また、今回は、基本理念であるノーマライゼーション(障害があっても地域社会の一員として生活が送れるように条件整備をすること)が、本科目で出題されました。

 これら社会保障の財政において、2017(平成29)年度は約120兆円にも及ぶ、社会保障給付費は、年金:医療:福祉等が5:3:2程度になることが目標となっていることを、知っているとよいでしょう。

介護の基本

 利用者の生活を全体観でとらえるICF(国際生活機能分類)リハビリテーションといった、出題頻度の高い問題は、正答できましたでしょうか。

 介護サービスの理解について、今回は、訪問介護における自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助や、介護医療院に関して出題されました。また、尊厳を支える介護(施設利用者の多様な生活に配慮した介護福祉職の対応として、自宅で夜間に入浴をしていた人に、夕食後に入浴してもらった)、職業倫理(介護施設におけるプライバシーの保護として、個々の利用者の生活歴の情報を、ルールに従って介護職員間で共有した)、リスクマネジメント(ハインリッヒの法則〔一つの重大事故の背景には、多くの軽微な事故とヒヤリハットが存在する〕)などについて、出題されました。介護実践における連携として、福祉用具の利用については福祉用具専門相談員の助言を受けることが、適切ですね。

コミュニケーション技術

 本科目では、利用者の老化や病気・障害の特徴、症状などに合わせたコミュニケーションについて、出題されます。今回は、運動性失語症に関して出題されました。家族介護者とのコミュニケーションについて問われた事例問題では、利用者本人との適切なコミュニケーションと同様の対応であることを踏まえて、正解を導いていれば何よりです。

 また、本科目では、職員間のコミュニケーションについても、出題されます。今回は、介護記録を書くときの留意点(ほかから得た情報は情報源も書く)、報告者と聞き手の理解の相違をなくすための聞き手の留意点(不明な点を確認しながら聞く)について、出題されました。

 なお、介護福祉職が利用者と信頼関係を形成するためのコミュニケーション技術として、「介護福祉職自身の感情の動きも意識しながら関わる」ことは、大切です。

生活支援技術

 高齢者にとって安全で使いやすい扉の工夫、介護が必要な利用者の口腔ケア、口腔内が乾燥している人への助言、利用者を仰臥位から側臥位に体位変換するときの力点、標準型車いすを用いた移動の介護、胸髄損傷の利用者の身体機能に応じた車いすの特徴、加齢による嚥下機能低下が疑われる入所者への対応、慢性閉塞性肺疾患のある利用者の食事、入浴の身体への作用を踏まえた対応、四肢麻痺の利用者の手浴、利用者の状態に応じた清潔の介護、自己導尿を行っている利用者に対する介護福祉職の対応、下肢筋力の低下により立位に一部介助が必要な車いすの利用者が、トイレで排泄をするときの介護、衣服についたバターのしみを取るための処理方法、喘息のある利用者の自宅の掃除、ベッドに比べて畳の部屋に布団を敷いて寝る場合の利点、睡眠の環境を整える介護、死期が近づいたときの介護など、老化や病気・障害の特徴、症状などに合わせた、身体介護技術を中心とした生活支援のための技術や知識が、例年どおり幅広く出題されました。多くの設問について、受験勉強や実務経験などを通して解答できたことと思います。

 今回再確認した技術は、これからの仕事で改めて活かしていきましょう。

介護過程

 「利用者の生活の質の向上」を目的とする介護過程に関して、情報収集(五感を活用した観察を通して情報を集める)、アセスメント(利用者の生活課題を明確にすること)、目標の設定(実現可能な目標を段階的に設定する)など、一連のプロセスとそのポイントについて、出題されました。再アセスメントとそれにより見直した支援の方向性、主観的記録や優先すべき生活課題に関する事例問題は、正答できましたでしょうか。

 今後とも、介護過程を踏まえた計画に沿ったサービスを提供していきましょう。

 次回は、「午後」の問題について確認します。