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受験対策講座

保育士・筆記試験の合格率は20%前後で難関といえます。この狭き門を突破するためには、ポイントを押さえた効率のいい学習が不可欠です。このコーナーでは、近年の各科目の出題傾向や今後の対策について、その秘訣をガイドします。
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第57回 令和6年前期・保育士試験「造形」の内容や難易度は? 傾向と対策のポイント

喜多﨑薫(きたざき かおる)
総合学園ヒューマンアカデミーチャイルドケアカレッジ東京校非常勤講師、あさか保育人材養成学校講師


近年の出題傾向

令和5年の後期試験では、造形の出題数が久しぶりに5問に戻りましたが、令和6年の前期試験では再び4問となり、「表現技法」についての問題は出題されませんでした。
今回を含めた過去10回の出題回数を見ると、「発達年齢と造形表現の特徴」は8回、「色彩の知識」は10回、「表現技法」は7回、「表現活動の材料」は10回、「形態と構成の理解」は10回となっていて、「発達年齢と造形表現の特徴」と「表現技法」のどちらかということが5回ありましたが、どちらが割愛されるかはその年によりますから、これまで通りの学習が必要と考えて良いでしょう。

(1)発達年齢と造形表現の特徴

近年の出題ではピアジェやリュケ、ローエンフェルド、ケロッグなどの研究者や教育者が唱えた発達理論が問われることが増えていましたが、令和6年前期<問題8>では、子ども達の描く絵画の特徴的な表現からの出題でした。
これまでに見られない出題としては、「発達年齢と造形表現を指標と考え技術指導を行う」や「海外の幼児との共通性は見られない」などが適切か不適切かという記述で、いずれも不適切が正解ですが、単に名称と表現の特徴を覚えるだけではなく、より子ども達に寄り添った学習が求められるものでした

(2)色彩の知識

令和6年前期<問題9>で、色水をモチーフに保育士が話し合っている事例の穴埋め問題が出題されました。色水の混色による結果を、色相環で近しい場所にある類似色や離れた場所にある反対色、完全に180度の位置にある補色など、それぞれの混色結果の知識とあわせて解答しなければならないため、やや難易度の高いものでした。
色彩は理論を理解するだけでなく視覚的な理解も必要なので、合格テキストの解説ページだけでなく、巻頭のカラーページと対応させた学習が効果的です。

(3)表現技法

これまでモダンテクニックから名称と技法を結びつける問題や、用いる材料の準備や制作手順など、幅広い知識が出題されていましたが、令和4年後期、令和5年前期の2回に続き、令和6年前期でも表現技法として単独の知識が問われる出題はありませんでした。
令和5年後期はフィンガーペインティングに関する記述の正誤を問う出題がありました。これまでの出題でも、バチック、コラージュ、スタンピング、フロッタージュ、デカルコマニー等々のモダンテクニック単独の技法についてが多く出題されていますので、傾向は特に変わっていません。
また、表現技法では、画材や素材、用具や道具などの表現活動の材料の特徴がそのまま技法の特徴となったり、身近な絵本の中で用いられている表現技法についての出題もありますので、「造形」の分野を単独で考えるのではなく、「表現」として大きく捉えることも必要です。

(4)表現活動の材料

画材や素材、用具や道具などの知識は、毎年必ず出題されているのでとても重要なテーマです。
令和6年前期<問題10>では「でんぷん糊」について出題されました。「のり」など接着剤については、過去10年ほどを振り返っても出題されたことはなく、はじめての出題でした。選択記述にある「カゼイン」は、牛乳などから加工した動物性たんぱく質の接着剤で、工業用に用いられ一般的ではありませんが、カゼインを知らなくても、でんぷん糊が穀物や芋類など植物性の接着剤であると理解できていれば選択肢が限られるので、困惑させるための記述でした。
のりだけでなく表現活動の材料は、使い方にもそれぞれに特徴があり、間違った使い方では機能が活かせず、また、危険を伴うこともあります。実際に子ども達と表現活動をする場面を想像し、学習した知識だけではない、より実践的で応用的な考え方が求められています。

(5)形態と構成の理解

令和6年前期<問題12>では「切り紙あそび」について、折って切り取った形の完成形を選ぶ出題がありました。紙を折ったときと広げたときの形の関係を想像しなければならないため、難易度の高い問題となっています。
この「切り紙あそび」については、近年でも令和3年前期、令和5年後期に出題されていて、過去10年でも出題回数が多い傾向があります。今回の出題のように、造形の出題には折り方や切り方などの構造や、動きの仕組みなどが理解できないと解答できない問題が例年出題されており、一方向からでなく上下左右や裏側など、形態を3次元的に想像する力、応用的な造形感覚が求められています。

今後の試験に向けた受験対策、勉強の進め方など

基本的な学習の仕方

造形の分野では、5つの項目についての基礎知識がもっとも重要です。
「発達年齢と造形表現の特徴」は、造形の分野の中では応用的な出題が少なく、知識でほとんどカバーできる部分ですから、しっかり押さえておきましょう。
近年の特徴として、保育の現場で起こりうる事例形式の出題が多くなってきました。また、穴埋め問題では、まったく関連性のない語句が記載されていることもありますので惑わされず、前後の文章にも注意して読み解くことが必要です。
出題される事例のように、実際の現場では、基本的な知識だけでは解決できない、わからないことが多くあります。その時に大切なのが知識に基づいた複合的な応用力です、テキストではテーマに分けられていますが、ひとつのテーマやジャンルにこだわらず、広く「表現」について考えられる柔軟性をもちましょう。

覚えるだけでなく体験する

「表現」は、文字で覚える以上に、実際の体験がとても力になります。テキストだけに頼らず、少しでも実際に絵の具を使って混色したり、糊で貼ったり、はさみで切ってみたりすることを心がけましょう
またモダンテクニックも実際に表現してみると、手順の重要さや注意点が理解できます。お手本を作るのではなく、気軽にやってみて、できれば「うまくいかない」体験もしてください。その時に考えたことは、いちばんの力になります。小さくてもよいので実際にやってみることをおすすめします。

造形感覚を養う

例年出題される<形態と構成の理解>の応用問題は、「構造や仕組み」、「加工の前と後の変化」が大きな特徴ですが、試験問題では、実際にその場で動かしたり、切ったりできるわけではないので、どうしても図だけを頼りに「頭の中で想像する力」が必要になります。
知らないこと、体験したことがないことはなかなか想像しづらいので、一度やってみましょうと言いたいところですが、出題される領域があまりに幅が広いので現実的には無理です。
ここで助けになるのが「ものを見る力」です。日常生活で目にする物、触ったり、動かしたりするものを、少しゆっくり角度を変えて観察してみましょう。牛乳パックやアイスクリームのカップ、ヨーグルトの容器など、リサイクルのために広げたら、どんな形になっているでしょうか。ドアのレバーを下げたらどうして開くのでしょうか。こうしたちょっとした観察での「へえ〜こんな形なんだ」とか、「こうなっているんじゃないか?」という経験や想像が「造形感覚」を養います。

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