受験対策講座
保育士・筆記試験の合格率は20%前後で難関といえます。この狭き門を突破するためには、ポイントを押さえた効率のいい学習が不可欠です。このコーナーでは、近年の各科目の出題傾向や今後の対策について、その秘訣をガイドします。
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第54回 令和6年前期・保育士試験「教育原理」の内容や難易度は? 傾向と対策のポイント
綾 牧子(あや まきこ)
学研アカデミー保育士養成コース専任講師、文教大学非常勤講師
令和6年前期試験の出題傾向
① 憲法・教育基本法・学校教育法
法令に関する問題は毎回必ず出題されます。
令和6年前期試験では、「日本国憲法」第23条、「教育基本法」第1条、「学校教育法」第3条の条文が出題され、その中から教育基本法の条文を選ぶ問題がありました(問1)。どの法令の条文なのか、たとえ覚えていなくても各法令の趣旨を押さえておくことで対応できる問題です。
「教育基本法」第1条を確認しておきましょう。
② 幼稚園教育要領など
幼稚園教育要領、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領において、整合性の図られた内容が出題される傾向が見られます。特に、「幼児教育を行う施設として共有すべき事項」についてはしっかり押さえておきましょう。
令和6年前期試験では、保育所保育指針の中から「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の「社会生活とのかかわり」が出題されました(問9)。
また、令和6年前期試験ではカリキュラムの類型に関して出題されました(問8)。
カリキュラム・マネジメントを学ぶ上で、カリキュラムの類型について知っておくと理解が深まります。
③ 西洋及び日本の人物と思想
教育・保育の歴史を学ぶ上で重要な「人名」、「有名な著書」、「理論」の内容が毎回出題されます。
令和6年前期試験では、西洋の人物・思想としてモンテッソーリが著した『幼児の秘密』の内容の一部から出題されました(問4)。
人名と著書を暗記しておくだけでなく、モンテッソーリの教育思想を理解しておかないと難しい問題でした。
日本の人物・思想としては、江戸時代の儒学者であり『和俗童子訓』を著した貝原益軒について、説明文から人名が問われました(問5)。
また、人名とキーワードを結び付ける問題として、世阿弥、北条実時、広瀬淡窓が出題されました(問6)。
ほかにも、『幼稚園真諦』の一部から著者名を問う問題もありました(問7)。倉橋惣三の保育思想を理解しておかないと難しい問題でした。
④ 子どもの権利
これまで「児童憲章」、「児童権利宣言」、「児童の権利に関する条約」に関する出題が見られます。
令和6年前期試験では、「児童憲章」の一部が出題されました(問2)。「児童憲章」は、それほど長くないので、常に見える場所に貼っておくとよいでしょう。
⑤ 教育制度及び教育行政
・国の教育政策
中央教育審議会の答申等からの出題がほぼ毎回見られます。
令和6年前期試験では、「学びや生活の基盤をつくる幼児教育と小学校教育の接続について~幼保小の協働による架け橋期の教育の充実~(審議まとめ):文部科学省 (mext.go.jp)」の内容について問われました(問10)。
穴埋め問題のため、覚えていなければ解答できないと考えがちですが、幼保小の協働の目的や重要性を理解していれば正解を導くことができます。
・諸外国の教育制度
令和6年前期試験では、諸外国の学校系統図から国名を問う問題がありました(問3)。
諸外国の学校系統図をすべて暗記しておかなくても、各国の特徴的な学校種の名前を押さえておくとよいでしょう。
今後の受験対策、勉強の進め方
① 教育の意義・目的と教育法規
憲法は、教育に関連している第23条(学問の自由)や第26条(教育を受ける権利、義務教育の無償)を押さえておきましょう。
教育基本法は、全条文(第1~17条)に目を通しておきましょう。特に、第10条(家庭教育)、第11条(幼児期の教育)は幼児教育に関連の深い条文です。
学校教育法は、特に第3章 幼稚園(第22~28条)に目を通しておきましょう。その他、小学校に関する条文も出題されることがあるので要確認です。
ほかにも、児童福祉法等の法令も出題されることがあります。特に法改正があった場合は出題される可能性が高くなります。
② 幼稚園教育要領、幼保連携型認定こども園教育・保育要領、保育所保育指針
幼稚園教育要領の「第1章 総則」は出題されやすい部分です。また、「健康・人間関係・環境・言葉・表現」の5領域に関する記述や「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」は、幼保連携型認定こども園教育・保育要領、保育所保育指針にも同様に記載されている部分です。内容をしっかり確認しておくことが重要です。
幼保連携型認定こども園教育・保育要領については、幼稚園教育要領と同様の内容となっている「幼稚園的機能」に関連する部分を押さえておきましょう。同時に「幼保連携型認定こども園として特に配慮すべき事項」についても確認しておきましょう。
③ 教育の思想と歴史的変遷(西洋及び日本の人物と思想)
「人名・国名」・「有名な著書」・「理論」を結び付けて理解しておくことで、どのような問題形式でも対応できます。まずは、紛らわしい人名・著書・理論などの表を作って整理すると覚えやすいです。
近年は、その人物の教育思想を理解していないと正解できない問題も多く見られます。その時代の社会背景を踏まえ、どのような教育・保育の考え方を持ち、どのような実践を目指したのかを確認しておくと理解が深まります。同年代に生きた人物との関係も押さえておくと良いでしょう。
④ 子どもの権利
「児童憲章」「児童権利宣言」「児童の権利に関する条約」「こども基本法」などの本文に目を通し、「子どもの権利」が意味している内容を理解しておきましょう。
また、男女共同参画関連の内容やいじめ、児童虐待といった具体的な社会課題から「子どもの権利」を捉えることも大切です。
2023(令和5)年4月に「こども基本法」が施行されたこともあり、子どもの権利について幅広い視点から理解しておく必要があります。
⑤ 教育制度及び教育行政
・戦前から戦後の教育制度
日本の学校教育制度の始まりである明治初期から大正時代、そして戦前から戦後までの教育制度のおおまかな流れについて確認しておくと良いでしょう。時代による教育観の違いがわかると理解が深まります。
・国の教育政策
中央教育審議会の答申や報告書がほぼ毎回出題されています。文部科学省のウェブサイトで閲覧できるので、新しい教育の動向や幼稚園教育要領等の改訂に関わる答申は概要を確認しておきましょう。
幼稚園教育要領と小学校学習指導要領との関連性を意識しながら読むと理解の度合いが深まります。
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・諸外国の教育制度と教育実践
近年の特徴的な教育・保育実践に関する出題が多いです。「名称」・「実践を提唱した人名と国名」をセットで確認しておきましょう。
特に、「レッジョ・エミリア・アブローチ」、「テ・ファリキ」、「イエナ・プラン」などの保育実践は理解しておきたいです。
⑥ 教育を取り巻く諸問題
国際的な動向や日本国内の教育問題について、日頃から関心を持っておくことが大切です。
国際的な内容としては、SDGs、OECDの学習到達度調査(PISA)などを押さえておきましょう。
国内の内容としては、生涯学習社会、GIGAスクール構想、特別支援学校など、最近のキーワードについて、テキスト等で理解しておきましょう。
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