馬淵先生のケアマネジャー受験対策講座
ケアマネジャー試験で出題される介護支援分野、保健医療サービスの知識等、福祉サービスの知識等の3分野の中から厳選した〈必ず知っておきたいテーマ〉を解説しています。 講師はケアマネ試験対策のプロ・馬淵敦士先生。いっしょに合格を目指しましょう!
介護保険の財源
今回のテーマは、「お金」です。介護保険は公的な保険ですので、税金(公費)が投入されます。また、被保険者から徴収した保険料も利用されます。その2つの財源割合が事業によって異なります。今のうちに正しく理解しておきましょう。最後には保険料の納め方についてまとめています。
介護保険の財政構造
費用は公費と保険料で構成される
まず、公費と保険料についてまとめておきましょう。
公費とは、国・都道府県・市町村の税金を指します。また、保険料は第1号被保険者の保険料(第1号保険料)と第2号被保険者の保険料(第2号保険料)を指します。
これだけならシンプルなのですが、この割合が変化したり使われなかったりするので、苦手な受験生が多いのです。ここでは混乱しないように、少し細かくお話ししていきます。
介護給付と予防給付の費用負担
公費と保険料の負担は「半分ずつ」が基本
介護保険の介護給付費(介護給付と予防給付)については、公費と保険料が半分(50%)ずつの負担となります。このような感じです。
介護給付費の負担割合

公費(50%)の内訳は、居宅給付費と施設等給付費で異なります。
居宅給付費と施設等給付費の内訳

居宅給付費では、公費50%のうちの半分である25%を国が負担し、残りの25%を都道府県・市町村が半分(12.5%)ずつ負担することになっています。また施設等給付費については、国と都道府県の割合が異なっています。
ちなみに、保険料の割合(第1号保険料23%・第2号保険料27%)は、居宅給付費と施設等給付費で共通となっています。表でまとめましたので、しっかりと覚えましょう。
【これだけは!】介護給付費の基本財政構造
(%)
国 | 都道府県 | 市町村 | 第1号保険料 | 第2号保険料 | |
---|---|---|---|---|---|
居宅給付費 | 25 | 12.5 | 12.5 | 23 | 27 |
施設等給付費 | 20 | 17.5 | 12.5 | 23 | 27 |
地域支援事業の費用負担
公費と保険料の負担は事業によって異なる
地域支援事業の内容については別の機会でお話しします。今回は財源に着目して説明します。地域支援事業は3つの事業で構成されています。
①介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業):居宅給付費と同じ
②包括的支援事業:第2号保険料が使われない
③任意事業:第2号保険料が使われない
さて、包括的支援事業と任意事業の「第2号保険料が使われない」とはどういうことか、イラストで確認してみましょう。

単純に27%が消えるわけではなく、第2号保険料の使われない分は公費が負担することになります。すなわち以下のようになります。
ここで「77%(50%+27%)」という数字が出てくるので公費負担の割合を複雑に感じてしまうのですが、シンプルに考えてみてください。公費負担のうち、半分が国負担(77÷2=38.5%)となり、残りを都道府県・市町村が半分ずつ負担(38.5÷2=19.25%)するだけです。
このように、細かい数字を覚えるより、ルールを覚えておけば試験で出題されても答えることができます。
【これだけは!】地域支援事業の基本財政構造
(%)
国 | 都道府県 | 市町村 | 第1号保険料 | 第2号保険料 | |
---|---|---|---|---|---|
総合事業 | 25 | 12.5 | 12.5 | 23 | 27 |
包括的支援事業 | 38.5 | 19.25 | 19.25 | 23 | 0 |
任意事業 | 38.5 | 19.25 | 19.25 | 23 | 0 |
財政安定化基金とは?
費用が不足したときの「大きな貯金箱」
公費と保険料でまかなわれる介護保険財政ですが、実は不足してしまうことがあります。財源が不足すると保険給付が行えなくなります。もちろん被保険者の介護保険サービスをなくすことはできませんので、どこかで費用を調達しなければなりません。そのときに使われるのが、都道府県に設置されている財政安定化基金です。
財政安定化基金のイメージは、都道府県に設置される「大きな貯金箱」です。国・都道府県・市町村が貯金していて、何かあったとき(市町村に財政不足が生じたとき)にその貯金箱を割る、という感じでしょうか。
財政安定化基金の貸付・交付の要件
国・都道府県・市町村がコツコツ積み立てたお金ですから、大切に使われなければなりません。そこで、そのお金を使う要件が決まっています。
- 1 通常の努力を行ってもなお生じる保険料未納により不足
→2分の1交付・2分の1貸付 - 2 見込みを上回る給付費の増大等により不足
→全額貸付
全額交付、という要件はありません。また、当然ですが、貸付を受けた分は財政安定化基金に返済しなければなりません。
保険料の納め方
第1号被保険者と第2号被保険者で異なる
最後に、保険料の納め方についてお話をしておきます。
第1号被保険者:普通徴収と特別徴収の2パターン
第2号被保険者:医療保険者が医療保険料と合わせて徴収
第1号被保険者の多くは、公的年金から天引きされる特別徴収という形で介護保険料が徴収されています。「多く」と表現したのは、公的年金の額が一定額(年額18万円)以上の人が対象だからです。それ未満の人は、保険者が納入通知書を送付して納める普通徴収という形で徴収されます。
第2号被保険者は、医療保険に加入していることが被保険者要件になっています。そのため、全員が医療保険者に医療保険料の一部として徴収されることになります。
まとめ
数字がたくさん出てくると、覚えるのが大変だと感じてしまいます。意味のない数字をただ覚えようとするよりは、その数字の意味を理解したほうが頭に入りやすくなります。覚え方も工夫していくことが大切です。引き続き学習を進めていきましょう。

馬淵敦士(まぶち あつし)
ベストウェイケアアカデミー学校長。介護福祉士、ケアマネジャーの受験対策講座を各地で開催し、アカデミー受講者の合格率は全国合格率を大幅に上回る。『ケアマネジャー試験過去問解説集』(中央法規)の代表執筆を務める。