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高室成幸の「ケアマネさん、あっちこっちどっち?」

男性介護者の悲鳴!

 昨年から、アセスメント研修のなかで「性差」(ジェンダー)の内容を盛り込んでいます。これが結構、受講生のみなさんに好評です。
 どうしてこの内容を始めたのか? ADLは男女の差なく、だれもが行う日常的な「生理的行為」(食事、排泄)であり、それを行うために必ず付随する「活動」(移動)と生活を心地よくすごす「快適行為」(入浴、整容)によって構成されています。

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 ところが…IADLとなるとそうはいきません。
 IADLには「性差」が歴然と現われます。特に戦前・戦後と日本の社会は「性差分業別社会」がきていますから、「男子厨房に入らず」が当然なわけです。男性たちがIADLで「自立していない」のは当たり前なのですね(もちろん例外もあるし、できる男性は理想です)。

 さらに虐待研修の研究を進めると、虐待事例の7割が、加害者は夫や息子の男性が占めています。虐待を読み解くために、「性差の視点」は避けて通ることができません。ですから、虐待予防研修会でも性差の話題は必ず取り上げるようにしています。

 前置きが長くなってしまいました。
 介護保険がスタートして約10年が経過しました。
 予想外の変化が顕著になってきていますが、そのひとつが男性介護者の急増です。かつて「7人に1人」だったのが、「4人に1人」になり、今後はさらに増え続けていくでしょう。しかしその実態は「悲鳴」に近い現実があり、虐待や心中という悲劇が全国で頻繁に起こっています。

 これらを背景に今年7月、全国から160人の方々が集まり、京都で「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」(略称:男性介護ネット)が発足しました。そして先月、152人の方々の寄稿をまとめた「男性介護者100万人へのメッセージ~男性介護体験記~」が同会から発行されました。タイトルの一部を紹介しましょう。
・「無知を悔やんで9年目~若年性認知症の妻を看取って」(77歳男性 介護歴13年)
・「男の介護~義母から実母へ~」(64歳男性 介護歴10年)
・「ばあさんは俺の親をみてくれたから」(82歳男性 介護歴17年)
・「先の見えない介護~負け犬の独り言~」(62歳男性 介護歴9年)
・「老老老介護」(81歳男性 介護歴5年)
・「若い頃、妻に苦労をさせたから」(82歳男性 介護歴5年)

 私が印象に残った一文です。
 「どうして、何で、から始まった妻の認知症の介護は今年で6年目。初めは『咎めては我を咎める繰り返し』でした。この時期が私たちの一番つらい時でした。大丈夫だよ、私がお前を守るから、と夕食時2人で泣いた事を今でも忘れません」(77歳男性 介護歴6年)
 「壊れゆく君との面会つらいけど 会おうと思えば会える幸せ…60歳の妻は若年性アルツハイマーの後期に入って、食事も排泄も入浴もできなくなり会話も成り立たなくなって、歩行も弱くなりつつあります。(中略)最後の瞬間まで僕と結婚してよかったと思わせることが、僕の介護の目標です」(61歳男性 介護歴6年)

 男性介護者には、積極的にやろう派から仕方ない派(しょうがない派)まであり、さらに手抜きができる人から凝りに凝ってしまう人までいます。もともと器用な人もいれば極めつけの不器用な人もいます。
 さらにやってもらうことが当たり前できた人から、そこそこ自分のことはやってきた人もいます。

 男性介護者のタイプと介護力、そして家事力を見抜くこともケアマネジャーの皆さん(8割が女性)の眼力とアセスメント力が問われてくることになります。

ムロさんの写メ日記

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宮崎県西諸県介護支援専門員等研修会の主催者のみなさんです。主に野尻町と小林市を中心としたケアマネジャーの方が対象で、73名の参加でした。お土産にいただいたブドウがとても美味でした!(^^)!

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ケアタウン総合研究所主催の「文章と記録の上達術」の連続講座の1日目です。文章の「単文、重文、複文」の説明をしているところ

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途中、皆さんにテストをやって、理解度をチェック(^_^;)!

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今日は羽田から長崎に移動です。雲が水平線のようです

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機内で、このブログを執筆しました

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着陸時の長崎空港は、とっても雨! 滑走路に降り立ったタイヤからの水しぶきに思わずシャッターを押しました
 今週のメールマガジン「元気いっぱい」第196号は「地産地消と地域ケア」です。ケアタウンの公式HPではバックナンバーまで見ることができます。


コメント


 厚生労働省のデータでは、虐待を行ったとして通報された方のうち同居の息子が約38%、夫が約15%だそうです。
 ただ、専門職としては、こういったデータを踏まえた上で、虐待に至る個々の関係性や経緯をアセスメントする力も必要でしょうね。
 願わくば、このようなデータをもって男性介護者を色眼鏡で見るような風潮が生じないことを祈ります。
 虐待とはいかないまでも、高齢者の尊厳を侵すケースもあり、私の職場では、今年から権利擁護の研修に力を入れたところ、多くの方が受講されました。虐待や権利擁護が多くの方の関心事になっているのでしょうね。


投稿者: 研修の裏方 | 2009年10月06日 17:17

 こんにちは、高室さんのケアマネジャーの質問力読ませていただきました。
 質問力はいつも仕事に行かせています、いろんな方に読ませたいですね。
 是非石垣島にも講演に来て欲しいです。



投稿者: 石垣島より | 2009年10月14日 21:53

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
高室成幸
(たかむろ しげゆき)
ケアタウン総合研究所所長。日本の地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと新しい介護・福祉の人材の育成を掲げて活躍をしている。「わかりやすく、元気がわいてくる講師」として全国のケアマネジャー、社協・行政関係、地域包括支援センター、施設職員等の研修会などで注目されている。主な著書に『ケアマネジメントの仕事術』『介護予防ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『ケアマネジャーの質問力』(以上、中央法規)、『地域包括支援センター必携ハンドブック』(法研)など著書・監修書多数。

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