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介護職に就いた私の理由(わけ)

さまざまな事情で介護の仕事に就いた方々の人生経緯と、介護の仕事で体験したエピソードを紹介していきます。「介護の仕事に就くことで、こんなふうに人生が変わった」といった視点からご紹介することで、さまざまな経験を経た介護職が現場には必要であること、そして、それが大変意味のあることだということを、あらためて考えていただく機会としたいと考えています。
たとえば、「介護の仕事をするしかないか・・」などと消極的な気持ちでいる方がいたとしても、この連載で紹介される「介護の仕事にこそ自分を活かす術があった・・」というさまざまな事例を通して、「介護の仕事をやってみよう!」などと積極的に受け止める人が増えることを願っています。そのような介護の仕事の大変さ、面白さ、社会的意義を多くの方に理解していただけるインタビュー連載に取り組んでいきます。


●インタビュー大募集
「このコーナーに出てみたい(自薦)、出してみたい(他薦)」と思われる方がいらっしゃったら、
kawase@chuohoki.co.jp
までご連絡ください。折り返し、連絡させていただきます。

花げし舎ロゴ

花げし舎ホームページ:
http://hanagesisha.jimdo.com/

プロフィール久田恵の主宰する編集プロダクション「花げし舎」チームが、各地で取材を進めていきます。
久田 恵(ひさだ めぐみ)

北海道室蘭市生まれ。1990年『フイリッピーナを愛した男たち』(文藝春秋)で、第21回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。
著書に『ニッポン貧困最前線-ケースワーカーと呼ばれる人々』(文藝春秋・文庫)、『シクスティーズの日々』(朝日新聞社)など。現在、読売新聞「人生案内」の回答者、現在、産経新聞にてエッセイを連載中。

第132回 ここではゆったりと時間が流れていくんです 
私は、細く長く一生介護の仕事を続けていきたい

荒井冬美さん(24歳)
小規模多機能型居宅介護事業所 ユアハウス弥生
介護福祉士

取材・文:石川未紀

私にできるなら、と家族全員介護の仕事に

 私、なぜかよく話しかけられるタイプで、おじいちゃんやおばあちゃんにもよく道を聞かれていました。高校生のとき、高齢者相手の仕事が向いているかもしれないと、自分で施設に電話して3日間体験させてもらったんです。

 これが楽しかったんですね。
 やっていける、と思いました。私が生まれるころ、祖父母が交通事故で亡くなっていたので、おじいちゃんやおばあちゃんという存在を知らずに育ってきたんです。だから、あこがれみたいなものもあったんだと思います。

 卒業後、埼玉・朝霞の施設で働きながらヘルパー二級の資格をとりました。私は二人姉妹の長女ですが、母にも妹にも、私にできることは自分にもできると思われていて(笑)、お姉ちゃんができるなら、とまずは妹が有料老人ホームで、母も小規模多機能型居宅介護事業所の施設で働きはじめ、家族全員介護職なんですよ。

納得できない介護を目の当たりにして

 その後、施設系の高齢者向け住宅や老健などでも働きました。老健で働いていた時のことなんですが、認知症の方のお部屋に鍵をかけていて…。職員の方は、どこかへ行ってしまうからと言うのですが、納得できなかったんです。虐待なんじゃないかなと。それを上司に告げると気まずくなり、居づらくなってしまいました。

 今のところは、そんなときに相談に乗ってくれて、ここはもっと余裕をもって働けるからと誘っていただきました。移ってきて、ちょうど一年が経ちます。

ご利用者の方を第一に、自由に過ごせるのがいい

 ここは、小規模多機能型居宅介護事業所で、通い、訪問、宿泊ができます。週に一度は社内別事業部の訪問介護にも出かけます。最初、訪問には抵抗がありました。料理に自信がなかったし、入浴でもいわゆる施設の箱モノのなかでやるのとは、全然違います。最初のころは、料理も濃いとかうすいとかよく怒られていましたけれど、最近慣れてきて料理にも少し自信が出てきました。

 通いでは、一日だいたい15名の方がいらっしゃいます。ご利用者の方を第一に考えてやりたいことを自由にやってもらうというコンセプトがはっきりしているんですね。働く側も服装は自由だし、ネイルなんかも大丈夫なんです。むしろ、働く人もそれぞれが個性を出してふるまうことが自然だと。ご利用者の方にとっても「こんなファッションが流行っているの?」とか「ネイルってきれいね」とか、刺激にもなるんです。髪も染めていると、「私もその色に染めてみたい」と言われる方もいらっしゃいます。外食にも行きます。当日になってから「今日は○○を食べに行きたい」と言えば、スタッフ同士で調整して出かけることもあります。

 私が好きすぎて、担当を志願したおばあちゃんが黒柳徹子の舞台を観たいと言って、上司に相談したら、ご家族の方にお話してくれて、一緒に舞台を観に行きました六本木だったんですけれど、クレープが食べたいと言うのでクレープ屋さんにも寄りました。肝心の舞台は疲れてしまって1時間半くらいで出てしまいました。最後には、今日は楽しかった、ありがとうと言ってくれたんです。なんか、思いは通じたのかなと。六本木には車いすを押して電車で行ったのですが、電車はいいですね。行く前は、すごい大変なんじゃないかと思っていたけれど、みんな親切にしてくれて、スムーズに行けました。

 そのおばあちゃんと先日、六義園にも出かけたのですが、寒い中、車いすでお尻が痛くなってしまうかなと心配しましたが、一時間じっくりと楽しみました。自然の力ってすごいんだなという発見がありました。

パートになって、ずーっと長く介護の仕事がしたい

 ヘルパー二級、介護福祉士と取得して、来年はケアマネにも挑戦したいと思っています。常勤なので、夜勤もありますが、平日休めたり、遅番で朝寝坊できる日もあったり、他の職業よりも融通がきくので、かえって続けやすいと思っています。

 夢がないねって言われてしまうのですが、将来はパートになりたいなと。結婚して子どもを産んで、パートになって…。それでもずーっと介護の仕事を少しずつでも続けていきたいと思っています。そういう余裕があってやっているほうが、私もですが、ご利用者の方もゆったりできるんじゃないかなと。ここの人たちは働く人同士も仲がいいですし、ご利用者さんとも仲がいいんです。産休中の方が、子どもを連れて来られますし、それをまたみんなが温かく迎えてくれる環境なんです。ご近所に住んでいる方が週に一回だけ働きに来られている方もいて、いいなあと思っています。

 こんな私でも介護の仕事を続けたいと思うので、もっとたくさんの人がこの世界に入ってくれたらなと。私の周りにも転職はよくないからとひどい職場環境で続けている人がいるけれど、思い切って飛び込んできてほしいと思っています。

大好きなおばあちゃんと黒柳徹子の舞台へお出かけ

【久田恵の視点】
 介護の仕事は、かかわる人がゆったりと自然であることが大事ですね。高齢者の時間の流れに寄り沿って動ける若い人は、そう多くはありませんから荒井さんは天性の介護人資質の持ち主のように思われます。