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介護職に就いた私の理由(わけ)

さまざまな事情で介護の仕事に就いた方々の人生経緯と、介護の仕事で体験したエピソードを紹介していきます。「介護の仕事に就くことで、こんなふうに人生が変わった」といった視点からご紹介することで、さまざまな経験を経た介護職が現場には必要であること、そして、それが大変意味のあることだということを、あらためて考えていただく機会としたいと考えています。
たとえば、「介護の仕事をするしかないか・・」などと消極的な気持ちでいる方がいたとしても、この連載で紹介される「介護の仕事にこそ自分を活かす術があった・・」というさまざまな事例を通して、「介護の仕事をやってみよう!」などと積極的に受け止める人が増えることを願っています。そのような介護の仕事の大変さ、面白さ、社会的意義を多くの方に理解していただけるインタビュー連載に取り組んでいきます。


●インタビュー大募集
「このコーナーに出てみたい(自薦)、出してみたい(他薦)」と思われる方がいらっしゃったら、
kawase@chuohoki.co.jp
までご連絡ください。折り返し、連絡させていただきます。

花げし舎ロゴ

花げし舎ホームページ:
http://hanagesisha.jimdo.com/

プロフィール久田恵の主宰する編集プロダクション「花げし舎」チームが、各地で取材を進めていきます。
久田 恵(ひさだ めぐみ)

北海道室蘭市生まれ。1990年『フイリッピーナを愛した男たち』(文藝春秋)で、第21回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。
著書に『ニッポン貧困最前線-ケースワーカーと呼ばれる人々』(文藝春秋・文庫)、『シクスティーズの日々』(朝日新聞社)など。現在、読売新聞「人生案内」の回答者、現在、産経新聞にてエッセイを連載中。

第126回 人のために何かやるのが好きなんです 
デイだと体の状態だけでなく、その人全体がわかるのがいいですね

宮島大光さん(44歳)
株式会社 すばる ステップリハビリ・高輪
介管理者
介護福祉士・鍼灸師

取材・文:石川未紀

誰かの役に立つ仕事が向いていると思ったんです

 大学を中退後、いろいろな仕事についてきました。自分には何が向いているのか探したかったのだと思います。いまとなっては貴重な時間でした。そのなかで、会社のデスクワークや刺激の少ない仕事は向いていない、スーツを着て仕事するのはいやだ、人相手の仕事は好き、誰かのためになる仕事はやりがいを感じる等々、だんだんと、自分はどんな仕事がいいのかが見えてきた気がします。
 それで、26歳の時、鍼灸師になろうと決心しました。思い立ったら即実行というタイプなのですぐに専門学校への入学手続きをしました。サラリーマンよりも独立できる仕事がいいと思ったんです。それに誰かの役に立つ仕事が、僕にはあっていると思いました。
 資格取得後は、比較的若い方が多く来る治療院で2年くらい働きました。そこもやりがいはあったのですが、介護保険が始まっていましたし、将来を見据えて高齢者の世界も覗いてみたいと思いました。それで、リハビリのデイに就職したんです。今の事業所に移ってきたのが2011年のことです。

デイだと利用者の方を深く理解できる

 リハビリに特化したデイにいらっしゃる方は健康を意識していらっしゃる方が多いですね。それにここに来られる方は、考え方がしっかりしている。「元気になりたい」「お出かけを楽しみたい」「足腰を鍛えたい」と、それぞれ目的を持っています。こちらとしても、目的にあわせて、どんなトレーニングを取り入れようとか、工夫しがいがあって楽しいですね。
 もともと鍼灸師なので、ストレッチや筋トレの重要性はよくわかっています。鍼灸師として働いている時は、自分がいくら一生懸命マッサージや鍼などをしても、やはりその場限りでは限界がある。日ごろからストレッチや筋トレをしてこそ、効果が明らかになる部分があるんです。ここでは、マッサージをしながら、ストレッチや筋トレのメニューも考えることができるのがいいですね。全身の状態をトータルで見ていけるというのは、喜びを感じます。
 それにデイだと長い時間一緒にいますから、いろいろな会話を通してこれまでの生きてきた歴史とか、これからどうなりたいとか、どんな性格かということもわかってきます。前向きに考えていらっしゃる方も多くて、尊敬できる方がたくさんいるんです。そういう方たちの手助けができているのは、心が満たされるというか、僕にとってはうれしいことなんです。

利用者に寄り添いながらサポートをしたい

 僕自身、確固たる介護観があったというわけではないし、この世界に入ったのも、鍼灸師という資格から入ってきたので、介護の知識や経験もなかった。でも、それがかえって柔軟に考えられた部分はありましたね。いろんなことが素直に受け入れられる。自分の理想を押し付けるのではなく、利用者の方はどう考えているのか、それに沿って自分は何ができるのかという発想ができているのは、結果的にはよかったと思っています。
 介護福祉士の資格をとったのは、ここにうつってきてからです。資格にそれほど興味があったわけではないのですが、いろんなことが知識としてつながってよかったですね。将来的には社会福祉士の資格もとって、福祉の世界をトータルで見られるようになりたいと思っています。
 今は、管理者として自由にやらせてもらっています。リハビリは午前午後としっかりやっていますが、みんなで一緒にレクリエーションをやるというのが苦手という方もいるので、ほかの時間は、わりとゆったりとそれぞれの方がやりたいことをやりたいようにやっています。
 地域密着型ではないのですが、結果的には地元の高輪の方が半分くらい、残りもその周辺の地域の方が多いですね。穏やかな方が多くて、みんなわきあいあいとやっています。僕の今の仕事は、ご利用者の方のためというのは一番ですが、ここで働く人のためにも考えなくてはいけません。働いている人にとっても良い環境でなければ、よいサービスはできないと思っています。近隣に住んでいる方もここで働いてくれていて、地域で成り立っているというのは、理想的です。だから、こういう人たちにとっても働きやすい環境を整えることが僕の大切な仕事のひとつだと思っています。結局、人のために何かをするのが好きなんですね。
 利用者の方には自然体で接していきたいなと思っていて、細かいルールもつくっていません。そのほうが、利用者の方との距離も縮まって、それぞれの生活パターンや性格などもわかってくるんじゃないかと思っています。

理想は看取りまでかかわっていきたい

 ここは、リハビリを中心にしたデイで、元気な方が多い。けがや病気などで介護度があがると、通えなくなってしまう方もいるんですね。できることならば、看取りまで看ていけたらな、という願いがあります。人生を細切れじゃなくて、ずっと看たいという気持ちがあるんです。もっと気持ちのところで寄り添いたい。そういうトータルで看られる人になりたいと思っています。

利用者の方にマッサージをする宮島さん

【久田恵の視点】
 サービスを受ける人とサービスを提供する人、そのお互いの思いがマッチングすること、それが新しいデイサービスの場を開かせてきているのですね。行き場のない高齢者の居場所ではなく、目標を持って暮らす高齢者を支える場所に。介護の新しい時代が、来ていることを実感させます。