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マンガでわかる 介護のキーワード

梅澤 誠 (うめざわ まこと)

介護の常識は世間の非常識といわれることがありますが、介護現場で語られる言葉に違和感を覚える人もいるようです。
この連載では、こうした「介護の常識」をマンガで考えていきます。

プロフィール梅熊 大介 (うめくま だいすけ)

1980年生まれ、群馬県出身。
東京で漫画家アシスタントをしながら雑誌、ウェブにて作品を発表。2009年第6回マンサン漫画大賞(実業之日本社主催)佳作受賞。デジタルマンガ・コンテスト2012(デジタルマンガ協会主催)優秀賞受賞。9年間のアシスタント修業の後、32歳で介護職員となり、以後介護を中心とした企業広報マンガを執筆。2015年現在、所属する大起エンゼルヘルプのホームページに新規採用者向け介護マンガを連載。著書に『マンガ ボクは介護職員一年生』(宝島社、2015年)がある。

第12回 上半年の、しめくくり

 今年の夏は、2010年の夏を上回る酷暑になるとの長期予想がでましたね。
 脱水、熱中症は利用者さんのみならず職員さんもかかりやすいですよね。毎年のことではありますが、今年はさらに厳しい夏になりそうです。
 それにしても2010年は、観測史上最も暑い夏で「百年に一度の異常気象」と言っていましたが・・・あれからまだ6年しか経っていません(苦笑)。異常が異常でなくなりつつあり、何が「正常」なのかわからなくなってきます。

 「介護の常識は世間の非常識」と言われるそうですが、このコーナーでは逆にさまざまな時事報道を介護職員の目から見て、思うところを書いてまいりました。

 虐待、事故、法律、政治経済、自然災害・・・。「介護職員の目」からみると一見バラバラなこうした報道も、介護に関係のないものはひとつもありませんでした。
 考えてみれば介護とは「生活支援」なのですから、生活に関わること全てに関連があるのは当たり前ですね。

 私自身、介護職員となった4年前までは、政治経済のニュースや法律の話など、ほとんど関心がありませんでした。ですが介護の現場に入り、「なんでこんな風にするんだろう」「どうしてこんな決まりがあるんだろう」・・・と考えれば元は法律に行き着き、その法律ができた社会背景には政治や経済があり、それを知るとさまざまな事故や事件が自分と無関係ではないとわかるようになってきました。

 ことに「正常」な人たちから「異常」な病気の人と見なされがちな「認知症」の方々と接するうち、一体どっちが「異常」なのかわからなくなることがよくありました。いえ、今もよくわかりません。

 今まで疑問にも思わなかったことが「変だぞ?」とひっかかり、別に介護に限らず世間にも「非常識」なことはたくさんあるじゃないかと思えてきます。

 「介護の常識は世間の非常識」・・・世間と介護の世界は別という前提で成り立つ言葉ですが、繰り返し言うように大して変わらないんじゃないかなあ、というのが半年間ニュースに意見してきた私の感想です(笑)。(おりしもこの文章を書いているたった今、ラジオが東京都知事の辞職を報じました。認知症でない人だって、「非常識」な失敗、しますよね。普通に。)

 最後にひとつ。

 認知症の社会的な理解が進んできたといわれる昨今ですが。介護の本、売り上げランキングにはまだ必ずと言っていいほど、介護の不安を煽るようなタイトルが散見されますね。目立つようにショッキングな書名にするのはわかりますが、モノには程度があるでしょうと思わずにおれません(苦笑)。『楢山節考』じゃないんだから・・・。

 確かに介護は発展途上で、不備な面もあるでしょう。苦しい思いをしておられる方もいらっしゃるでしょう。が、なにも本をだしてまで不安を煽ることは・・・ないんじゃないでしょうか? 同じ書くなら、地域包括の電話番号でも書いてくれれば、それで安心を得る人もありましょう。

 不景気とはいえ、少子高齢化とはいえ、日本は社会保障が完備され70年以上戦争のない、豊かで安全な国です。介護も日々だんだんと、少しづつ改善しているわけで・・・そう不安ばかり煽られても困ります。また情報として不正確です。姥捨て山の時代はとっくに去っているのですから(苦笑)。そうならないために働いている、全国の介護職員の方々がたくさんおられるのですから。

 この「けあサポ」を読まれる方は、現役介護職員の方が大変多いと聞いています。現場で働き、家のこともやり、かつ忙しいなか、疲れているなか、さらに勉強しようという・・・お世辞でなくほんとに大変だと思います。しかもアクセス数を聞く限り、そんな方が5千人も6千人もあるというじゃありませんか。私は感情的な悲観論より、頑張る介護職員が大勢いる、という事実のほうを信用します。

 ですので拙著『ボクは介護職員一年生』(宝島社)で描いたように、介護の未来を常に楽観視しています。なんとかしようと意志する人がいて、なんとかしようと行動を起こしているのですから、きっとなんとかなるのがモノの道理ではありませんか。

 「悲観主義は気分に属し、楽観主義は意志に属する」(編集部注:フランスの哲学者アランの言葉)というように、必ずいいほうに変わっていくと思っております。

 またそのお手伝いができるよう、私もマンガを描いたり、(ニガテな)内部監査に行ったり・・・頑張ってみようかなと思っています。

 拙文に半年間のお付き合い、ありがとうございました! またお目にかかれますよう。

梅熊 大介

追記

 それにしても怖いのは熱中症ですね。私は夏の夜勤(17時間拘束)には、4時間おきに梅干をひとつ食べていました。塩分補給と、気休めというか暗示というかのためです。「梅はその日の難逃れ」とも言いますしね。

 しかし懐中に梅干を忍ばせて歩くのはそれはそれで「戦国時代の足軽か」という気持ちも拭い去れぬものがありましたが・・・。

 くれぐれもお気をつけ下さい。

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