メニュー(閉じる)
閉じる

ここから本文です

山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術

山口 晃弘(やまぐち あきひろ)

超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。

プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)

介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑にて人材育成担当。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)がある。

著書

『最強の介護職、最幸の介護術』
『最強の介護職、最幸の介護術』

「ハードよりハート」

 埼玉県では、特別養護老人ホーム(特養)の整備計画などを検証する県議会の特別委員会で、今後認可する特養について、ユニット型を実質減らす方針を示しました。特別委員会では、地域包括ケア局長より「施設を整備する場所の入居希望者の経済状況などを把握し、従来型が必要と確認できれば認める」という答弁があったそうです。国はユニット型の整備を重視していますが、この埼玉県の方針が今後どのような影響を及ぼすか注視したいところです。

 個人的な意見ですが、ユニットケアは良いと思います。所帯は小さくした方がいい。職員は大人数の方を把握するよりも、少ない人数の方をしっかり理解し、寄り添い、質の高いケアをするべきです。しかし、これはあくまで「理解し、寄り添い、質の高いケア」をする職員があってこそです。

 私がかつて勤めていた特養さつき荘は、従来型でした。築40年のさつき荘は、雨漏りはするし、体重の重い職員が2階を歩くと建物が揺れるし、個室はないし、ハード面では決して誇れるものはありませんでした。でも、ご利用者から愛されていました。ご家族から愛されていました。地域から愛されていました。職員たちも、自分たちの施設を愛し、誇りを持っていました。
 「ハードよりハート」
 これは当時の施設長をしていた橋本さんの口癖でした。

 現在、私の勤務する特養千歳敬心苑も、従来型です。
 先日、元々食の細い女性入居者Мさんが、さらに食べなくなってしまいました。Мさんは、食堂で他の入居者と食べることを好まず、自身のお部屋で食事をします。
 そんなМさんを心配した女性職員のカナちゃんは、『突撃!Мさん家の昼ご飯!』と題し、アポなしでМさんの部屋に乱入?し、Мさんの大好きな海苔巻きとおでんを一緒につくり、一緒に食べました。
 匂いを嗅ぎつけた?入居者さんや職員が、次々Мさんのお部屋にやって来て、一緒に食事をつくり、一緒に食べていきました。いつも静かなМさんのお部屋は、賑やかなパーティーのようでした。

 いつもの何倍も食べたМさんは「みんなに良くしてもらって…みんなが優しいからなかなかあの世に行かなくてごめんなさい」と、はにかんで笑いました。

 大切なのは、ユニット型か、従来型か、ということではありません。
 「ハードよりハート」
 そこに愛があることが大切だと思います。