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山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術

山口 晃弘(やまぐち あきひろ)

超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。

プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)

介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑にて人材育成担当。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)がある。

著書

『最強の介護職、最幸の介護術』
『最強の介護職、最幸の介護術』

特養だからできない?

 私の所属する特別養護老人ホーム千歳敬心苑。今年は20周年記念として、新たなビジョンを掲げました。年度末には大規模な事業報告会を予定しています。
 そして、介護現場の業務も仕組みも大きく変化しようとしています。その一環として、10月から大所帯のフロアを分割し、小集団化することで徹底的にカスタマイズしたケアを目指すことになりました。
 個別ケアは理想です。入居者側はもちろん、多くの職員もそれを望んでいます。しかし、特養入居者の重度化が進み、介助量は増えています。そのせいで大人数を少ない職員で切り盛りする特養では、個別ケアが難しいと思われがちです。
 だから職員たちは「入居者と向き合う時間がない」と言います。

 では、向き合う時間が実際にできたら、職員たちは何をするのでしょうか。
 それを学ぶために、職員たちにグループホームでの実習をさせてあげたいと思っていました。認知症対応型共同生活介護といわれるグループホームでは、文字通り認知症の方が入居し、掃除や洗濯、食事づくりなどをしながら、できるだけ自宅に近い生活をします。今回、同じ世田谷区にある『グループホームももちゃん』が実習を引き受けてくれました。

 特養で働いた経験しかない職員たちにとって、カルチャーショックというか、本当によい刺激になったようです。
 入居者がお化粧をして、お買い物に出かけたり、喫茶店でお茶をしたり、洗濯物をたたんだり、ご飯を作ったり・・・。こう書けば当たり前の生活のように感じるかもしれませんが、当たり前を維持するというのは当たり前じゃありません。
 この環境を維持するのは、ハード面や体制などだけではなく、職員の志。どんなに素晴らしい建物で、どれだけの職員数がいたとしても、このような環境がつくれるわけではないのです。

 実習を終えて帰ってきた職員たちの第一声は、「楽しかった~」でした。千歳敬心苑の職員をゲストとして心よく迎えてくださり、グループホームももちゃんの皆さまに、感謝の気持ちでいっぱいです。

 そして職員たちは、「グループホームだからできて、特養ではできない。それは、私たちの言い訳です。今回の経験を、必ず特養で活かしてみせます!」と力強く宣言してくれました。

 入居者の方たちが、サービスの種別によって幸せだったり、そうじゃなかったりしてはいけません。どのサービス、どの施設に入居しても幸せに過ごせる環境をつくることが大事です。
 それには、それぞれのサービスのよい所を活かし合う交流が必要かもしれませんね。