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山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術

山口 晃弘(やまぐち あきひろ)

超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。

プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)

介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑にて人材育成担当。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)がある。

著書

『最強の介護職、最幸の介護術』
『最強の介護職、最幸の介護術』

母の日 父の日

 5月、6月には、母の日、父の日があります。
 私は特養に勤務していますが、この日は入居者の息子さん、娘さんがたくさん面会に来ます。

 特養に入居する方は、寝たきりといわれる状態が多く、家族が面会に来ていても、話をすることができないこともあります。家族はしばらく入居者のベッド脇に座った後、「よろしくお願いします」と職員に声をかけ、帰ることが多いです。

 以前、このような状況を見て、親子をつなぐ方法がないだろうか・・・と考えたことがありました。
 ある職員が思い付いたのは、お風呂の介助をしてもらうことでした。入居者の家族あてに「久しぶりにお父さま、お母さまの背中を流しませんか?」という手紙を出しました。

 何名かの家族が、おそるおそる参加してくれました。その中の一人は、母親が入居して10年が経つ娘さんでした。
 Tシャツと短パンを用意してもらい、介護職1名と一緒に母親の入浴介助が始まりました。娘さんはすごく緊張していました。何せ10年ぶりの介護です。介護職はリラックスしてもらえるよう話をしながら、介助を進めていきます。座位が安定するイスを使用して、娘さんは10年ぶりに母親の背中を流しました。

 身体を洗い終え、浴槽につかると、姿勢が安定しているのを確認し、職員はそっとお風呂場を出ました。家族水入らずにしたかったのです。

 入浴介助を終えた娘さんの顔は、とても晴れ晴れとしていました。
 「施設に母を預けて10年。職員の皆さんのおかげで十分満足しておりました。でも、心のどこかで、もう私が母にしてあげられることはないのだな…という淋しい気持ちがあったのも事実です。今回、このようなお話をもらい、その手があったか!と正直驚きました。10年ぶりに見る母の裸。正直、痩せたな~と思いました。でも、こうやって母の身体を洗うことができて、とてもうれしい気持ちです。本当にありがとうございました」と言ってくれました。

 それから時が経ち、母親が亡くなった時も、「私は、あの時お風呂の介助をしていなかったら、きっと後悔していたような気がします」と話していました。

 私たちの目の前にいる入居者は、一人ひとりが誰かの大切な母親、父親です。
 母の日そして父の日に、私たち介護職は何ができるでしょうか。