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山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術

山口 晃弘(やまぐち あきひろ)

超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。

プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)

介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑にて人材育成担当。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)がある。

著書

『最強の介護職、最幸の介護術』
『最強の介護職、最幸の介護術』

介護職よ、最後の砦であれ!

 早いもので、4月も中旬になりました。気温も上がり、すっかり春の陽気ですが、聞くところによると、まだインフルエンザが発症している施設もあるそうです。これから食中毒の流行る時期にもなりますし、次は熱中症、脱水…一年中、なかなか気が抜けないですね。
 この冬も、かなり猛威を振るったインフルエンザ。まだ入院している方や、そのまま帰ることができなかった人もいたと思うと胸が痛みます。

 肺炎や骨折など、高齢者が入院する原因はさまざまですが、現代医学の進歩により、多くの方の命が救われるようになりました。ありがたいことです。
 しかし、入院の原因となった病気や症状が治ったにもかかわらず、退院できない、もしくは帰らぬ人になることがあります。それは、医療では治すことのできない「気力」が関係しています。

 気力とは「何かを行なおうとする精神力」、「気持ちの張り」などと言われます。ただ、80代、90代となった要介護状態にある高齢者にとって、病気を治し再び気力を戻すのは、簡単なことではない気がします。
 私たちもそうですが、気力をもつというのは、充実した日常や未来への希望があってのことではないでしょうか。希望が少ないなかで、「食べて」「歩いて」と周りから強要されることは、もしかしたら苦痛かもしれません。

 ただ、ご家族――息子さん、娘さん、お孫さんからすると、大事なお父さん、お母さんであり、大好きなお爺ちゃん、お婆ちゃんです。生きていてほしいと願うものです。しかし、食べてくれない。つまり、生きる気力が戻らないその時に、「助けて!」とご家族が手を伸ばしたのは、介護職でした。
 ご家族は施設に「大好きな○○さん(介護職)の顔を見たら、元気になるかもしれない。食べてくれるかもしれない」と、藁にもすがる思いでお願いしました。

 病院に入院中の入居者Aさん。目を開けることも億劫そうなAさんに、ベッド脇から声を掛けたのは、Aさんの大好きな介護職でした。うっすら開いた目は、次第に大きく開き、「あらーッ!」と、入院後初めて大きな声を出しました。
 「Aさん、ご飯食べてないんだって?ダメじゃねえか。ご飯食べてくれないと、退院できなくて、俺たちの所に帰られないよ。アイスクリーム買ってきたから、食べるかい?」と聞くと、Aさんは「食べる!」と力強く答え、アイスをペロリと食べました。

 ご家族からすると、複雑な思いもあるでしょう。でも、大事な人の命を救ってもらえるなら……その最後の砦が介護職なのです。

 以前にも書きましたが、医療で命を救い、介護で心を救うのです。
 ただし、これはすべての介護職にできることではありません。Aさんの事例から、日頃の関係性がいかに大事か、理解できると思います。
 介護保険法の第一条「目的」では、自立支援が謳われています。利用者さんに「生きていてほしい」「元気でいてほしい」と願うなら、利用者さんの生きる気力、未来への希望になるような「大好きな人」になってください。


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