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山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術

山口 晃弘(やまぐち あきひろ)

超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。

プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)

介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑にて人材育成担当。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)がある。

著書

『最強の介護職、最幸の介護術』
『最強の介護職、最幸の介護術』

虐待のない社会へ

 厚生労働省の発表によると、2014年度、介護施設や居宅介護サービスで、介護職員による高齢者虐待は300件。前年度比35.7%増で、調査開始以来8年連続で最多を更新しているそうです。被害にあった方の77.3%が認知症でした。

 現在、私は特養の介護を十年ぶりに実践しています。
 グループホームに3年間勤務していたので、その違いを聞かれることが多いです。
 「どっちが大変?」
 この質問は、正直答えようがないです。違いは答えられますが、大変さは比べようがありません。

 グループホームで初めてお会いする入居者さんは、認知症はあるけど、身体的にはお元気な方が多い。できるだけ歩けるように、動けるように、認知症が進行しないように、そんな思いで日々考え、実践していました。

 特養の場合は、初めてお会いする段階ですでに要介護度が高く、グループホームにいる利用者の状態を過ぎてこられた方が多い。いわゆる「寝たきり」などと言われる状態も多いのが現状です。誤嚥しないように、感染症にならないように、事故が起きないように、そんな思いで実践しています。

 それでも、どちらのサービスにも共通しているものがあります。それは、「尊厳を守る」ことです。

 認知症になっても、人としての尊厳は守られるべきです。寝たきりになっても、人としての尊厳は守られるべきです。基本的人権の尊重は憲法の条文にあることですから、当たり前のことですが、規定されているから守られるべき…ではなく、人生は最後まで尊厳が守られるべきだと、誰しも心から思ってほしいのです。

 確かに、介護現場の労働環境は恵まれているとはいえません。雇用条件、労働内容、給与面などの問題から、人材が集まりにくい。慢性的な人手不足の中、職員の疲労、ストレスはたまりやすく、それが虐待の原因とも一部で言われています。

 しかし、職員の頭数だけ揃えばいいかといえば、それは違います。やはり、介護は質なのです。管理者である人、リーダーである人には、介護を大いに語ってもらいたい。人の晩年をお預かりする職業として、人生とは何かを考え、解いてもらいたいです。
 そうして、人材を『人財』へと育てていってほしい。
 人間は、いつか年を取ります。どうしても人の手を必要とする日が来るのです。家族の介護が基本かもしれませんが、たとえそれが叶わなかったとしても、苦労して生きてきた人生が報われる。優しさで包まれるような社会であってほしい。
 それを実現できるのが、介護職という仕事であり、その逆を実践してしまいかねないのも、介護職という仕事です。


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