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山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術

山口 晃弘(やまぐち あきひろ)

超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。

プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)

介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑にて人材育成担当。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)がある。

著書

『最強の介護職、最幸の介護術』
『最強の介護職、最幸の介護術』

ユーモアは地球を救う ~認知症の見方(味方)~

 ここ数年で、社会の認知症への関心は、とても高まっています。新聞、雑誌…テレビは、ニュースだけでなく、バラエティに近い情報番組でも、認知症の特集が組まれたりしています。その多くは、認知症の親を在宅で介護し、介護というものがどれだけ大変であるかを伝えるもの。または、認知症にならないために、どのような生活スタイルが良いか、食べ物は○○が認知症予防に効果がある、など。要は、認知症になったらどれだけ大変かと伝えているものが多い気がします。

 確かに、認知症にはならないほうがいいかもしれませんけど…。でも、きっとなりますよ。だって、医学や食文化などが発達したことで、日本は長生きすることが義務づけられたような国ですから。だとしたら、認知症になっても、幸せに生きられる社会を作るほうが得策ではないでしょうか。

 私は、この仕事を15年続けてきて、多くの人の「死」にかかわってきました。人は、死のタイミングを自分で選択することはできないのだろうとは思いますが、自分で「もういい」と思い、死に向かって自分のスイッチを入れる人も見てきた気がします。

 現在、グループホームで働き、毎日大笑いしながら生活している入居者の皆さんを見ていると、「これだけ毎日楽しければ、自分からスイッチを入れることはないだろうな」と思うことがあります。

 認知症は、初期の段階では自覚があると聞きます。私は、初期じゃなくても、少なからず自覚のある人は多いと思います。「私、なんでここにいるんだっけ?」「息子はどうしてるの?」「お母さんは?」こんなことが頭をよぎる時、自分の中で「何かがおかしい」と思うのは当然のこと。いわば「不安」です。

 こんな時、その不安を聞き流されたり、「大丈夫ですよ」と根拠のない励ましをされて、誰が安心していられるでしょうか。説明されなきゃ、納得がいきません。認知症ケアに関しては「※諸説あります」ですが、私は、その人の中の「今」を共にするようにしています。だって、レビー小体型認知症の方なんて、ものすごくはっきりした幻覚が見えるそうですよ。その人に、「何言ってるんですか? 何もありませんよ」なんて言うのは残酷じゃないですか。だから、その人の「今」を共にするようにしているのです。

 でも、混乱している状態をそのままにするのは良くありません。その人だって、不安よりも笑いたい。私たちも、その人の不安な顔より、笑った顔が見たい。そんな時、ユーモアが不安を取り除くことがあります。

 100歳前後の人の健康診断。病院に行くというだけで、不安になる人も多いのです。ベッドに横になって機械をポチポチ付けられる心電図。不安そうにしているお婆ちゃんに、「○○さん、今夜が山ですね」「残念ながら、心臓に毛が生えていて測定できません」なんて言うと、「何を~!この~!」なんて怒られたりします。

 「次はレントゲンです。妊娠はしていませんか?」と聞くと、「してるぞ!」なんて返されたり。そのやり取りを見ていたドクターが、「素晴らしいね!」と感心していました。要は、病院という「悪い所が無いなら来ない場所」で不安になっている人に、「本当に悪ければ、こんな冗談言えるはずがない」と、逆説的にユーモアを使ったのです。(注!諸説ありますからね:笑)

 私はよく、みんなで楽しそうにゲラゲラ笑っている入居者のみなさんも見ながら、「こんな幸せな時間がずっと続けばいいな」なんて思います。

 人に永遠はない。だからこそ、悲しみや不安の中生きるよりも、楽しく笑って生きてほしい。そう願うのです。

 みなさん、自分からスイッチを入れないでね。