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山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術

山口 晃弘(やまぐち あきひろ)

超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。

プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)

介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑にて人材育成担当。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)がある。

著書

『最強の介護職、最幸の介護術』
『最強の介護職、最幸の介護術』

本当の自立支援とは?

 平成12年に施行された介護保険法の第1条「目的」には、「有する能力に応じ自立した日常生活を営む…」とあります。つまり、私たち介護職の職業目的は、至れり尽くせりの介護ではなく、「自立支援」が目的なのです。

 自立支援といえば、リハビリが頭に浮かびます。確かに、専門職のリハビリを受けることは、加齢に伴う筋力低下、関節の拘縮などに抗うことにもなり、効果的だと思います。

 ただし、人間には感情というものがあります。健康のために身体を動かしたほうがいいことは分かっていても、年を取るとそれが億劫になるのです。40代の私ですら、20代の時よりも億劫になってますから(笑)。80代、90代ならばなおさらです。この億劫なことをわざわざ行うには「動機」が必要です。

 私が勤務するグループホームには、リハビリの専門職がいません。ただ、冒頭に書いたように、介護保険法で運営する事業所ですから、自立支援が目的であることに違いはありません。利用者の皆さまには毎日、体操や散歩、食事づくり、洗濯などいろいろやっていただきます。

 先日、自立支援の一環として(?)、お正月に『新春OKNo1決定戦!~OK初代女王は誰か~』という催しを行いました。芸能人やスポーツ選手がやっている番組のパクリです。ビーチフラッグ、モンスターボックス、ザ・ガロンスローの3種目で、その成績を競いました。特に、モンスターボックスなんて、跳び箱ですからね。

 他人からすれば子どもじみた遊びだと思われるかもしれません。しかし私たちは、ここにも自立支援に向けた目的がありました。

 よくこの業界では、ADL=日常生活動作というものがいわれますが、私たちは「非日常生活動作」に挑んでいるのです。毎日体操や、生活で活かせるリハビリをしていても、同じ筋肉、同じ関節ばかり動かしているだけでは、使わない部位が弱り、局所的に血流が悪くなったりします(と思ってます)。ですから時には、こんな非日常的な動きをして全身の健康を作り上げるのです。

 ただ、こういうことに利用者の皆さまに付き合っていただくには、「動機」が必要です。私たちは、この動機を「愛」と解釈しています。若い頃からそうですが、人間って好きな人に励まされると頑張るんですよね。いくら「あなたのため」と言っても、嫌いな人に強要されるようなリハビリでは、苦痛にしかなりません。

 以前、若い男性のリハビリ職員から、「はい!○○さん!もっと足を高く上げて!1、2、1、2!」と言われているお爺さまを見たことがあります。リハビリ終了後、そのお爺さまに「どうでしたか?」と聞いたら、「死にたくなったよ」と苦笑いしていました。

 好きな人に「一緒にやりましょう」なんて誘われるから、「よし!いっちょうやるか!」となるわけです。介護職の皆さんは、職業目的である「自立支援」のために、利用者にとって「大好きな人」になることも大事な要素ですね。