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和田行男の婆さんとともに

和田 行男 (和田 行男)

「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。

プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)

高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

意思確認


 本人に聞いているか?

 本人不在であれこれやっていることが僕らには多いが、本当にそれでいいのだろうか。

 グループホームに入居してきた人たちに聞いた。
 「まさこさん、いま歩いているでしょ」
 「はい、歩いていますよ」
 「もう年やから歩くのをやめて、これ(車いす)に乗っけてもらって僕に押してもらいたい?」
 「何言ってるんですか、歩きますよー」

 「みっちゃん、いま自分でご飯食べてるけど、もう面倒やから僕に食べさせてもらいたいって思わへん?」
 「何言うかと思ったら困った先生だね。いくつになっても自分で食べますから、遠慮しますよ」

 「きみさん、いま便所に行ってうんこしたら自分で拭いてるでしょ。自分で拭くのをやめて僕に拭いてもらうようになりたい?」
 バシン!!! 叩かれました。

 だから僕は、婆さん達に伝えた。

 「だったら、できることは何でも自分でするようにして身体をいっぱい使いましょうね。いっぱい喋りましょうね。いっぱい泣いたり笑ったり怒ったり感情表現しましょうね」と。

 こんなことも聞いているだろうか。

 「ここに来たら、布団で寝ますか、ベッドで寝ますか?」

 行政は施設にベッド導入を義務づけたりするが、そもそも就寝形態には「和式か洋式か」の選択肢があり、人々は自分の意思に基づいてどちらかにしている。選択肢がないのは病院とか刑務所?

 その選択権を保障するためには、画一的にベッド生活を前提とした建物や調度品の設えはおかしい。

 僕が施設づくりをするときは、居室は和室でつくるようにして、和式でも洋式でも就寝形態は入居者の選択に委ね、それに違和感がない設えにしている。また入居者の状態を見極めて、専門職として和式生活を推奨している。

 合わせて洋式生活になった場合でも、「ベッドは寝具」であり、日常生活に必要な道具で、居室で使用する物は、自分の好きなもの使ってもらうようにしている。だから「介護用ベッド」にこだわらない。どうしてもこちらの事情で介護用ベッドにしてもらいたいときは、選択権を奪うので僕ら事業者が提供する。

 もちろん食事も、「何を食べたいですか」とグループホームでは意思を確認するし、特定施設のようにあらかじめ決められた献立を画一的に提供する仕組みになっているところでも「2メニュー択一」とし、選択できるようにしている。

 ある事例検討会のグループワークに出させてもらったが、事例発表をした人の話の中に「ご本人の意思は…」という話はなく、事例を聞いた時点で「ご本人の意思はどうなんでしょうか」という質問もなく、グループワークの発表を聞く限り「本人の意思はどうなんだろうか」という疑問もなく話し合いが進められた結果「こうするのがよい、ああするのがよい」という答えの発表になっており「まずはご本人がどうしたいかを知らなければ話にならないが…」という発表はなかった。これには驚いた。

 この仕事に就いた27年前、特別養護老人ホームで仕事をし始めた時から、うちの施設では、寝間着から日中衣に着替える際に「○○さん、今日はどの服にしましょうか」と声をかけ「本人の意思を確認」することをしていた。

 全国各地の介護現場で「意思の確認」が行われるようになってはきたが、まだまだ限定的。

 もちろん、意思のままできるわけでもないし、意思のままにしてよいだけでもないが、本人の意思確認がない介護なんて存在しないのではないか。

 そう思えるほど「生活の主体者は本人」だということを思考していける専門職にならねばである。

 専門学校の最後の授業では、これを後輩たちに伝えることにしよう。

写真

 隠岐の島の「ろうそく岩」

 これは釣り船から撮ったので単なる「ローソクの形をした岩」だが、沈む太陽が背景にくると全く様相が変わり、まさにローソクになるそうだ。

 僕は、ちょっぴり早い夏のバカンス。初めてヒラメが釣れ、二匹目は特大でした。他にも、ヒラマサ、ワラサ、カサゴ(特大)、チカメキントキと愉しいひと時でした。

 隠岐の島は高齢化率36%、年々人口が減り続く深刻さ。でも、この島には観光資源もいっぱい。

 民宿のオヤジさんの言っていた「昔は子どもがいっぱい生まれて赤い袋を配り歩いたもんさ。今頃は黒い袋ばっかり配っとる」を国全体が深刻に真剣に考えないと「未来図」が描けない。人口問題は大事であるはずなのだが…。人も減り、魚も減り、そういや腹も減ってきた。これで完了とし、アップします。