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和田行男の婆さんとともに

和田 行男 (和田 行男)

「大逆転の痴呆ケア」でお馴染みの和田行男(大起エンゼルヘルプ)がけあサポに登場!
全国の人々と接する中で感じたこと、和田さんならではの語り口でお伝えします。

プロフィール和田 行男 (わだ ゆきお)

高知県生まれ。1987年、国鉄の電車修理工から福祉の世界へ大転身。
特別養護老人ホームなどを経験したのち99年、東京都で初めてとなる「グループホームこもれび」の施設長に。現在は株式会社大起エンゼルヘルプ地域密着・地域包括事業部 入居・通所事業部部長。介護福祉士。2003年に書き下ろした『大逆転の痴呆ケア』(中央法規)が大ブレイクした。

「様」「さん」の摩訶不思議


 全国各地で婆さんから気づきをいただいている介護職がたくさんいることだろう。
 ただ、ある事柄から気づけて、その後の支援策に活かせているかどうかは別物でもあるようで、もったいない。

 今から7年前、グループホーム入居者が「私の部屋はどこ」と聞いてきたのでお部屋にご案内すると、「いいや、ここは私の部屋じゃない」と言われたので、居室の扉横に掲げている表札を見せて「ほら、お名前が書いてあるじゃないですか」と伝えると、「確かに私の名前だが、私の部屋じゃない」と。

 職員さんは「なんで違うのですか」と不審そうな顔をして問いかけると「私は自分の名前に『様』なんかつけない」と言われて初めて表札を眺めるとが、確かに「トメ様(仮名)」と表札に書いてあるではないか。

 そこで気づいてその後の支援に活かしていれば起こらなかったであろうことがまた起こった。

 つい最近のことのようだが、同じグループホームで、「私のモノがない」とヨネさん(仮名)が言うので「そこにあるじゃないですか」と目の前のものを手渡すと、「これは私のじゃない」と言うので、「これはヨネさんのモノですよ」と職員が念を押すと、「いいや、私は自分のモノに『さん』はつけない」と。

 そのモノには「ヨネさん」と書いてあったのだが、自分のモノに自分が「さん」をつけて書くはずもなく、職員は「確かに」と引き下がるしかなかった。

 ただ7年前を違うのは、コトのあと職員間で話し合い「ヨネさんの言う通り」と受け止め、それをきっかけに身近な「本人からみた摩訶不思議」を変えたそうだ。

 また、ある男性入居者は「さん」と書かれて、「俺は女じゃない」とかみつかれたそうだが、これも、ごもっともなこと。

 この話を聞かせてくれたのは、北海道のグループホーム仲間で、そやつは「7年前に気づけていれば」と言いつつも、7年前よりそのおかしさに気づけ、すべてのコトを見直していけた自分たちに誇りをもてていた。
 これを世間では「成長」なんて言うのだろうが、僕らは日々婆さんから学ぶべきことがたくさんあるということでもある。

 ただ、せっかく学んだことを活かしきれていないことも多々あり、もったいない限り。いや、申し訳ない限りである。

 こうした婆さんからみた摩訶不思議はゴロゴロしており、北海道の仲間たちは「身近なことから気づいて変えていこう」とみんなで取り組んでいるそうだが、すばらしいことだ。

 認知症になっても人として生きることを支援するってことの実践は、まだまだ身近なところにたくさんの課題が潜んでいるのかも。

追伸1

 中央法規出版から出させていただいた、NHKの小宮英美さんとの共著『ダメ出し認知症ケア』が増刷になりました。
 たくさんの方々に読んでいただけて嬉しいです。
 この本の中に書いてあることに反論のある方もたくさんいらっしゃることだと思いますが、どの分野の誰であれ、様々に議論をすることが必要で、これからもしっかり、いろいろな「場」を通じて議論をしていきたいと考えています。

追伸2

 北海道の仲間たちは、今日登別温泉に集まって勉強会。
 東海の仲間たちは、昨日名古屋に集まって勉強会。
 どこの業界に、全国各地で年に数度も同業者が集まって知恵と工夫を披露し合っている業界がありましょうか。
 真面目に一生懸命取り組んでいる者たちが報われる事業にしていかないと、国民にとって不幸なこと。
 私ごとですが、勉強会の前夜祭で「赤いちゃんちゃんこの還暦祝い」をしてくださった北海道の皆さん、本当にありがとうございました。
 7年前、結婚直後の研修会でも、タキシード&ウェディングドレス(連れ合いも同行)を準備して結婚式をしてくださった北海道の仲間たち。
 いつも、恥ずかしくて嫌なのですが、心の底から感謝と喜びを感じました。ありがとうございます。
 そんな仲間たちだからこそ、厳しい話もさせていただきますが、それもこれも国民生活の支え手としての自覚と誇りの賜物と受け止めていただければ幸いです。
 これからも共に歩んでいきましょう。

 また、登別温泉でミュージックライブをやらせていただきました。北海道の連中とはこれで三度目ですが、「バンド」の一員になっていけてる気がしています。
 相変わらずへたくそなボーカルですが、同じ介護業界に携わるメンバーとのひとときは、聞かされた人たちには迷惑な話でしょうが、僕にとっては格別でした。
 メンバーそれぞれが北海道という広い土地で暮らし、何度も御金と時間をかけて集まって準備してくれていると思うだけで涙が出るほど嬉しくありがたい話です。
 今年は薬品メーカーの新たなメンバーが加わり厚みを増した「バンド」。
 今度は春に苫小牧のライブハウスでやることを決め、その次は遠征計画を立てるなど話はつきません。
 介護業界には音楽をやっている連中がたくさんいますが、その音楽が業界に活かされないのはもったいない限り。
 全国各地で、音楽を取り入れた「仲間の集まり」と、その場を通して「婆さん支援」が語られ合う・考え合う、そんな「場」が増えることを願ってやみません。


ご案内

 NHK教育テレビ「楽ラクワンポイント介護」に出演させていただいていますので、ご案内します。

 「財布がない」「家に帰りたい」「車の運転をやめてもらうには」などなど、10の「どうしたらよいでしょうか」に僕なりの考え方や方法例をご紹介する内容です。
 少しでもお役にたてれば幸いです。

放送日:
  • 11月6日、13日、20日、27日
    12月4日、11日、18日、25日
    ※金曜日の21時55分から5分間
  • 11月10日、17日、24日
    12月1日、8日、15日、22日
    ※翌週の火曜日の15時25分から5分間 同内容を放送

 金曜日の放映分と同じ内容のものが火曜日にも放映されます。
 全10回ですが、あとの2回分は放送日が未定です。また、この番組は繰り返し放送されるようです。
 11月6日分は終わっていますが、10日に同内容が放送されるということです。

和田行男

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