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宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ

宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。

プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

大阪府生まれ。現在、埼玉大学教育学部にて教鞭をとる。
さいたま市障害者施策推進協議会会長等を務め、埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

子ども食堂

 4月4日の新聞各紙は、「こども食堂安心・安全向上委員会」(代表湯浅誠)が調査した子ども食堂数の結果を報じました。この結果に、平成26年の都道府県別の生活保護実人員・保護率・子ども食堂1ヵ所当りの保護人員を加えたものが、次の表です(子ども食堂数は4月4日読売新聞朝刊による。生活保護に関するデータは、厚労省厚生統計要覧(平成28年度)にある平成26年データをもとに政令市・中核市分を都道府県単位に集計し直し、同年の総務省人口推計と併せて宗澤が作成した)。

表 都道府県別生活保護率と子ども食堂数
都道府県人口
(千人)
生活保護
実人員
保護率
人口千対
子ども食堂
か所数
子ども食堂
1か所当り
保護人員数
全 国127,0832,165,89517.02,286947.5
北海道5,400170,861 31.61131512.0
青森県1,32130,40623.03800.8
岩手県1,28414,21411.117836.1
宮城県2,32827,79011.944631.6
秋田県1,03715,38314.8111398.5
山形県1,1317,4086.5926
福島県1,93516,8308.7 131294.6
茨城県2,91926,1679.0 191377.2
栃木県1,98021,35010.823928.3
群馬県1,97614,7197.4 26566.1
埼玉県7,23996,22913.3831159.4
千葉県6,19781,41613.1621313.2
東京都13,390294,87722.0335880.2
神奈川県9,096157,45717.3169931.7
新潟県2,31321,0929.128753.3
富山県1,0703,5143.3439.3
石川県1,1567,6266.620381.3
福井県7904,1045.215273.6
山梨県8416,7268.012560.5
長野県2,10911,5285.568169.5
岐阜県1,07012,1323.322551.5
静岡県1,15630,4566.640761.4
愛知県79079,5485.2661205.3
三重県84117,5618.026675.4
滋賀県2,10911,6525.595122.7
京都府2,61062,08023.894660.4
大阪府8,836301,53934.12191376.9
兵庫県5,541107,76719.4532033.3
奈良県1,37620,65415.034607.5
和歌山県97115,13715.620756.9
鳥取県5747,64813.327288.3
島根県6976,1458.819323.4
岡山県1,92426,25213.6251050.1
広島県2,83347,94216.9261843.9
山口県1,40816,77411.9141198.1
徳島県76414,56619.12080.9
香川県98111,41411.615760.9
愛媛県1,39522,30913.6131716.1
高知県73820,88216.051409.5
福岡県5,091132,02926.0901467.0
佐賀県8358,0499.611731.7
長崎県1,38630,95422.34422.0
熊本県1,79426,80414.931864.6
大分県1,17120,52517.530684.2
宮崎県1,11418,05516.2181003.1
鹿児島県1,66832,49319.5241353.8
沖縄県1,42134,83924.5127274.3

 子ども食堂は、子どもの貧困が大きな社会問題となって子どもの貧困対策法(平成26年1月施行)が成立した頃から全国各地で取り組まれるようになりました。地域社会の力を合わせて子どもに食事を提供するための活動であり、場所づくりのことを指しています。

 子ども食堂という名称のはじまりは、東京都大田区の「気まぐれ八百屋だんだん 子ども食堂」だと言われています。現在、運営主体の実態はNPO、ボランティア団体、企業等とさまざまで、活動のスタイルも、学習支援と一体のもの、貧困家庭に限定しないもの等といろいろで、食事を提供する回数(朝昼晩、曜日)も食堂によって異なります。

 「こども食堂安心・安全向上委員会」は、ひとまず、子ども食堂における食の安全と事故防止のための保険加入を目指した取り組みを進めています。その他にも、事業継続のための安定した財源収入、食事作りを質と量の両面で支えることのできるスタッフ、子どもの貧困に対応しうる支援スキルの確保など、課題は山のようにあります。

 しかし、地域社会が子どもの貧困の問題を直視し、地域社会でできる限りのことを追求しながら、子どもの貧困問題の克服に向けた社会の仕組みづくりと制度改善につなげていく展望を共有するためには、はかしれない意義があると思います。

 「とりあえず子どもの食事をなんとかしなければならない」という課題は、19世紀末から20世紀初頭にかけて問題とされた古典的貧困の最たるものです。生理的な生存の維持に必要な最低限度の食事さえ、「民間の力」で提供しなければならない事態に、わが国の社会保障・社会福祉の水準が表れていることを私たちは正視しなければならない。

 先の表の右端には、子ども食堂1か所当りの生活保護人員数があります。都道府県によって少子高齢化の実態は異なり、子ども食堂1か所当りの食事提供人数も不明ですから、あくまでも目安程度に受け止めるべき資料であることをお断りしておきます。

 しかし、比較的子ども人口の割合が高いと思われる都市部において、保護実人員に対する子ども食堂の数は少ないことは明らかです。首都圏の埼玉・千葉・東京・神奈川、関西の大阪・兵庫、九州の福岡です。また、背景に何があるのかは不明ですが、長崎県は保護実人員に対する子ども食堂数では全国最下位となっています。

 この表の示している事実を端的に言うと、現状の子ども食堂は、子どもの貧困の実態に即した取り組みにはなっていないということです。18~19世紀ヨーロッパの慈善事業や19世紀末のロンドン慈善組織協会の活動に指摘されていた問題がそのまま指摘できる一面を持っています。

 つまり、本当に食事を必要としている子どもにこの活動が届いているかどうかはまったくわからない活動だということです。懐かしい用語を使うと、「漏救」(ろうきゅう-必要な人に支援が届いていないこと)に「濫救」(らんきゅう-支援が不必要な人が支援を受けていること)が当たり前の状態になっていることはほぼ間違いありません。

 現状を俯瞰すると、事業継続のための場所・資金・スタッフの確保など、食事を提供する側のマネジメントの課題が論じられる傾向が強く、子どもの貧困問題の克服に向けた展望をもつまでには程遠いと言わなければならないでしょう。

 子ども食堂の数が新聞各紙で報じられた同じ日に、西日本新聞は「『子ども食堂』急増の陰に“大人の都合”で休止も 資金や人手不足 継続へ模索続く」と題する記事を配信しています。この記事には異論があります。

 生活保護受給世帯の子どもたちへの学習支援の取り組みとして、かつて埼玉県が実施していたアスポート事業というものがありました。現在は、市町村の事業に引き継がれていますが、最初の事業化に当たり、もっとも細やかな注意を払ったのは個人情報の保護でした。

 「学習支援の場に通っている=生活保護・貧困世帯の子ども」という事実が地域住民に明らかにされるような形で実施すると、子どもたちは学習支援教室に来ることができなくなってしまいます。いわゆる生活保護や貧困支援につきまとうスティグマの問題です。

 ところが、子ども食堂の中には、このような貧困支援をめぐるスティグマの問題に対してあまりにも無頓着なところが多いのではありませんか。自治体の生活保護担当課等と連携して、食事提供の必要性の高い子どもにアプローチするならば、子ども食堂に子どもたちを集めるよりも食事の宅配にする方が、個人情報は守られやすいでしょう。いうなら選別主義的支援です。

 「お腹が減っている」子どもなら誰でも受け入れるように間口を広げて、貧しさのあるなしにかかわらずすべての子どもを受け入れるようにすると、貧しい子どもたちだけが利用することにつきまとうスティグマの軽減には有効ですが、子ども食堂の維持には莫大な資金がいるようになるでしょう。こちらは普遍主義的支援です。

 まともな食事をとることの必要なすべての子どもたちに食事を提供するためには、両方のアプローチがあっていいと思います。しかし、普遍主義的な地域支援システムの追求は、地域全体で子どもを育む営みの再建に向けた展望につなぐことができるのではありませんか。

 「子ども誰でも地域食堂」は、共働きの父母のいる家庭、単親家庭、そして貧困や虐待を含めた食に関する多様なニーズと困難のある子どもたちに食事を提供する取り組みにしていく。多様な子どもの問題に対応できるスタッフと自治体行政・専門機関・市民による地域連携によって食堂が継続的に安定して支えられる仕組みをつくる。

 そして、家庭に閉じられた親密圏を地域と共にある親密圏に作り替えていく展望の中で、貧しさのあるなしにかかわらず、すべての子どもたちを育むスフェアとしての地域社会を再構築していくのです。

ツツジの蜜を求めるミツバチ

 さて、ツツジが満開です。花蜜を求める西洋ミツバチが大学構内のツツジにたくさんやって来ました。様々な花を観察してみると、種類の異なる多様なハチがやってくる花と、西洋ミツバチしか来ない花があるように思うようになりました。今回のツツジは西洋ミツバチだけのようです。

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