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宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ

宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。

プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

大阪府生まれ。現在、埼玉大学教育学部にて教鞭をとる。
さいたま市障害者施策推進協議会会長等を務め、埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

日本人は絶滅危惧種?!

 「保育所落ちた日本死ね」の匿名ブログから1年余りが経ちました。現在、上野動物園でパンダの赤ちゃんが生まれてすくすく育つ様子を祝福する報道がある一方で、待機児童解消加速化プランは保育所の待機児童解消の達成目標を政府は2017年度末から3年先送りし、2020年度末にすると発表しました。

みんなの宝です

 人間はパンダのように野生生物ではありませんが、日本人については、ひょっとすると絶滅危惧種になりつつあるのではありませんか?

 子どもを産み育てる合理的配慮があまりにも欠如しています。長時間労働の克服は進まず、家族手当(児童扶養手当)の乏しさ、子どもをやっとの思いで授かっても保育所になかなか入れない。子どもたちが遊ぶために作った公園を潰して保育所を設置するという究極の矛盾。そして、保育所を利用するためには親自身の責任で「保活」しなければならないのは制度的欠陥です。

 子育てと所得の長期的安定性を見通すことができ、親の働き方を多様に選択することができ、多様な子育て支援策が必要十分な質と量で提供されていることが、「保活」の成立する前提条件です。この場合、子育て支援サービスや保育所を親の判断で選択できることにリアリティがあるからです。

 ところが、保育所を選択できるどころではなく、入れない事態に遭遇するのですから、「早朝から配給のために並ぶだけ並ばされて結局はありつけない」徒労のことを「保活」と称するのです。

 子どもと子育てが社会的に保障されていないだけで、経済や日本文化の存立基盤を解体している上に、子どもを育もうとする父母の労力と時間を「保活」に割かせて落胆を強いることは、容認すべからざる人権侵害ではありませんか。子育て支援策の不十分さを財政問題に帰結する議論は、倒錯した議論だと思います。

 6月14日付朝日新聞朝刊は、「待機児童ゼロ『3年後じゃ遅い』」と題し、「保育所落ちた」親3人の語る記事を報じています。

 Aさんは「フルタイムの共働きだからどこかに入れると思っていたので、区役所から(落選を示す)『保留』と書かれた通知を受け取ったときはびっくり」と言い、待機児童ゼロを3年後に先送りしたことについては「3年経ったら息子は4歳になるので、もう遅い。3年後じゃなく来月。と言うか、今すぐ預けて働きたい」と。ごもっともです。

 Bさんは「認可保育園を第19希望まで書き、すべて落ちた。認可外の4園も落選」。「フルタイムの会社勤めでないと『(入園選考の)ポイント』が低い。区役所の窓口で担当者に苦笑いされ、申し込んでも無駄かもしれない状況を知って深く傷ついた」と。まったくやり切れませんね。

 Cさんは「7年前に長男が認可保育園にすべて落ち、認可外の保育園に預けた。次男、長女も併せて計5回の保活をしたが、7年経っても改善されず、むしろ厳しくなっていることに憤りを感じ続けている」。「自治体は住民の要望を取り違えている。うわべの数字で待機児童が『ゼロ』になればいいのではない」と。そうです、表面的な数字の操作でごまかすやり方は、詐欺に等しい。

 「待機児童数」については、厚生労働省が今年の3月末に新たな定義を提示しました。従来の定義では、「保護者が育児休業中」の子どもを待機児童に含めるかどうかは、自治体の判断次第で分かれていたものが、新しい定義では「保護者に復職の意思があれば待機児童に含める」こととなりました。

 このような基本的な定義のあり方を今更いじることに納得できる父母はいないと断言します。

 現在は、自治体の待機児童の数え方に新旧の定義が混在しており、父母にとっては苛立ちを招く混乱が続いています。6月17日付の朝日新聞朝刊の埼玉版では、志木市子ども家庭課が「数字だけが独り歩きされては困る」声が紹介され、この5~6月に3か所保育所が整備されて待機児童数が半減することを強調したとあります。

 どこの自治体の保育所整備の担当課も大変な努力を続けていることとは思います。しかし、エンゼルプラン以来、ニーズ調査に立脚して、数値目標を明記した計画行政をすすめてきた経緯は何であったのかに、父母と地域住民が疑問と憤りを抱くことに答える義務もあるのです。

 1994年「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について(エンゼルプラン)」が策定されて少子化対策を進めたのを皮切りに、1999年12月「少子化対策推進基本方針」に基づいて「新エンゼルプラン」((1)保育等子育て支援サービスの充実、(2)仕事と子育て両立のための雇用環境整備、(3)働き方についての固定的な性別役割や職場優先の企業風土の是正等)を打ち出します。

 それでも少子化に歯止めがかからないために、2003年には「次世代育成支援対策推進法」と「少子化社会対策基本法」を定めて、新エンゼルプランの後継バージョンを策定して、施策を推進してきたのです。

 エンゼルプラン以来、20年以上の歳月を越えて、待機児童はゼロにならない。いわば、20年1日という厳しい現実。

 そこに、計画行政の基本である「待機児童数」の定義を実情に合わせたのが今年の3月であるというのは、今「保活」にあえいでいる父母の立場からすれば、怒りとやり切れなさを越えて、子どもを出産することと子育てをすることそのものへの諦観に行き着くほかないでしょう。

わが国の現在が、もし子どもを産み育てることを諦観しかねない社会になったとすれば、日本人が絶滅危惧種にあるとするのは果たして言い過ぎなのでしょうか。

四万十鳥せせりネギ焼き
アスパラの天ぷら

 さて、先日、四万十市で戴いた「孤独のグルメ」をちょっと紹介しておきましょう。一つは、四万十鶏のせせりの甘辛醤油だれのネギ焼き。これは、旨い!! もう一つは、取れたてアスパラの天ぷら。鮮度のいいアスパラの天ぷらは、繊維分が先立つことなくホクホクの食感に仕上がります。これは塩でしょう!!

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