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宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ

宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。

プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

大阪府生まれ。現在、埼玉大学教育学部にて教鞭をとる。
さいたま市障害者施策推進協議会会長等を務め、埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

台湾に行ってきた

 年度末の束の間に、娘と台湾に旅することになりました。ちょうど『親密圏と公共圏の再編成-アジア近代からの問い』(落合恵美子編著、京都大学学術出版会、2013年)を読んだ直後と重なったため、思わず日本を振り返る機会となりました。

台北101
國立故宮博物院の翠玉白菜

 台北は、地下鉄などの交通網が発達した素晴らしい都会です。高層ビルの台北101付近は、アジアにおける経済中枢の一つであることを実感させてくれる街並みです。それでいて、市内には、折り紙つきの泉質を誇る北投温泉もあり、台湾の「食」文化とともに観光都市としての魅力にもあふれています。

 台北の街中では、車いすの方を大勢見かけました。昼食や夕飯の時間帯、屋台で買い求めた食べ物を摂っている車いす障害者の方が街角のそこかしこにいて、障害のある無しに拘わらず賑わいを共にする光景がごく自然にみられました。

龍山寺近くの広場で

 龍山寺近くの広場に集まった高齢者の方々の様子は、さながら無料のデイサービスのように見えてくるのです。短期間の滞在で確かなことはとても言えませんが、同じアジアの国とは言え、親密圏と公共圏のあり方がわが国とは異なることを直感します。

 わが国は、北ヨーロッパから西ヨーロッパ全体に広がった血のつながりによらない親密圏を公共の福祉サービスが支えるという形の親密圏と公共圏を構成することはなく、だからといって、中国やシンガポールのように家族がケア役割を実際に果たすことのできるような政策を実行してきたわけでもありません。

 介護や子育ての負担を多くの家族が背負うことはできない実態があっても、家族主義をわが国の「美しい文化」とするイデオロギーを優先して、介護や子育てを社会サービスによって支える施策の拡充を後回しにしがちでした。1980年代の中曽根臨調が推し進めた家族主義にもとづく「社会福祉制度改革」の時代の福祉削減の挙句の果てが、「保育所落ちた日本死ね!」に結実したと言っていいのです。

 ただ、このような日本の貧しい福祉の実態を冷静に考察する必要を今ほど感じる時代はありません。西欧型の近代化とは異なるプロセスを経てきたわが国の、これからの暮らし向きをどのように支えていくことができるのかを展望しようとするとき、シリーズで刊行される『変容する親密圏/公共圏』(京都大学学術出版会)を福祉関係者は精読すべきだと考えます。

 台北の公共交通機関は、東京の感覚でいうと1/3から1/4くらいの料金です。台北メトロや台鉄を利用してみると、車内に吊り広告は一切なくてすっきりしているし、乗客の皆さんは落ち着いていて品性とアーバニティを感じます。

夜市の賑い
鳥の専門店

 それでいて、朝食のお粥の店や夜市の屋台に出かけてみると、日本がかつての高度経済成長とともに放り投げてしまった、顔見知りで密度の高い支え合いのある地域社会の人間関係が今日でも保持されているように思えます。

十分の天燈上げ

 十分(シーフェン)駅では、幸せを願った大勢の人たちが間断なく天燈上げをしています。これが何と鉄道の往来する線路の上でやっていて、列車が近づいてくると駅員とボランティアが笛を吹き鳴らして一斉に退散するという、まことに大らかな運び。駅構内には立ち入り禁止だとか、安全性に問題があるだろうなんて、「四の五の言うな!」という光景です。

 限られた滞在期間中にみた台北の人たちは、老若男女を問わず活気にあふれているように感じました。シャープは台湾のホンファイ精密工業の傘下に入りましたし、台湾に行ってみると、「日本はここが凄い」とわが国の優位性だけを取り上げて誇ろうとする一部のテレビ番組には、いささか違和感を覚えます。

 國立故宮博物院では、中国ならではの奥深い歴史と文化に圧倒されます。しかも、撮影自由です。青磁や白磁の展示もあって、このような中国の文化がわが国に伝播することによって、日本ならではの国づくりと文化の発展もあったことは間違いのない事実です。他国への畏敬の念とともに、自国への誇りもゆたかに育まれるのだと思います。

鳥のスープ-喉がなる
やはり小籠包

 さて、台湾と言えば「食」です。ここでもやはり、ガイドブックをあてにしてはいけません。日本のガイドブックに記されるマンゴーかき氷や小籠包は、不味いのではないでしょうが、お店が日本人で溢れかえっているだけで地元の人が行くお店ではありません。日本人観光客を当て込んだ高い料金設定になっている場合もあります。

こんなに美味い炒飯はじめて!
ネギ餅-皮はパイ生地

 だから、やはり地元の人の流れをよく観察してお店を突き止めて食べてみると、さすがに本場の台湾料理。さまざまな料理に使われている基本の出汁は、実に洗練された極上のスープです。直接スープを飲むだけでもため息が出るような旨さです。もちろん、このお店の小籠包も絶品。

 テレビ東京の「孤独のグルメ」にも出てきましたが、三星ネギを使ったネギ餅は確かに美味しい。これらをどこで食べたかは、ブログでは公開しません。日本人だらけになりますから(笑)