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宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ

宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。

プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

大阪府生まれ。現在、日本障害者虐待防止研究研修センター代表。
長年、埼玉大学教育学部で教鞭を勤めた。さいたま市社会福祉審議会会長や障害者施策推進協議会会長等を務めた経験を持つ。埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)、『障害者虐待-その理解と防止のために』『地域共生ホーム』(いずれも中央法規)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

みんなで受けとめて考えよう

 千葉県社会福祉事業団袖ヶ浦福祉センターで明るみに出た虐待問題について、千葉県社会福祉審議会第三者検証委員会は、この3月25日に中間報告を提出しました。障害領域にとどまらず、社会福祉に係るすべての関係者は、この報告を受け止めて共有し、検討を重ねるべきだと考えます。

 中間報告は千葉県のホームページからダウンロードすることができますので、ぜひ一読して下さい。新年度の体制づくりに間に合わせるというタイムリミットのある中で、検証作業を進めて中間報告まで作成することには、委員会に大変なご苦労があったものと推察します。

 次のような4つの論点から報告書は構成されています。

  • Ⅰ.なぜ虐待(暴行)が行われていたのか。
  • Ⅱ.なぜ受診が遅れたのか。
  • Ⅲ.事件後の対応は適切か。
  • Ⅳ.センターは今後どうあるべきか。

 虐待行為に走った職員の個人的問題に還元することなく、施設の管理運営と管理職の問題を含めた虐待問題の構造に踏み込んだアプローチをしている点は、筋が通っており支持できます。

 社会福祉領域の支援者と管理職には、虐待防止に向けた積極的で実務的な対応が必要不可欠であることを明らかにする報告書でもあります。「虐待や暴力はしてはいけませんよ」というような口頭による注意喚起だけでは、何もしていないことと同じだということを肝に銘じるべきです。

 このような支持と納得の一方で、この中間報告を読み終えると、私にはどうしても釈然としない気持ちも残りました。それは3点あります。

 一つ目は、虐待そのものが著しく深刻である点です。何年も前から、「先輩がやっているのをまねて」(先輩職員は否定するので「疑義がある」と報告されている)、見られてはまずい職員の前では暴力を振るわないという悪質な隠蔽性も確認されています。報告ではふれていませんが、一部報道によると、職員による男性利用者への性的虐待もあったようです。「負の悪循環」が発生していたというだけでは説明がつかないのではないでしょうか。

 たとえば、ミルグラムのアイヒマン実験で明らかにされたように、「権威への服従」に由来する暴力を招くまでの職場環境の問題があったのか、現代の「いじめ」「パワハラ」と同じように、支援につきまとう不安・緊張を自己愛的に暴力として吐き出すような日常が職場で作られていたのかなど、疑問が尽きないのです。

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