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宗澤忠雄の福祉の世界に夢うつつ

宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

疲労が溜まりやすい福祉の現場。
皆さんは過度な疲労やストレスを溜めていませんか?
そんな日常のストレスを和らげる、チョットほっとする話を毎週お届けします。

プロフィール宗澤 忠雄 (むねさわ ただお)

大阪府生まれ。現在、埼玉大学教育学部にて教鞭をとる。
さいたま市障害者施策推進協議会会長等を務め、埼玉県内の市町村障害者計画・障害福祉計画の策定・管理等に取り組む。著書に、『医療福祉相談ガイド』(中央法規)、『成人期障害者の虐待または不適切な行為に関する実態調査報告』(やどかり出版)等。青年時代にキリスト教会のオルガン演奏者をつとめたこともある音楽通。特技は、料理。趣味は、ピアノ、写真、登山、バードウォッチング。

10万件を超えた児童虐待対応件数

 昨年度における児童相談所の児童虐待対応件数は、ついに10万件を超えました(詳しくは、http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000132785.html)。

平成27年度における児童虐待対応件数速報値

 今年度の全国児童福祉主管課長・児童相談所長会議の資料は、児童福祉法と児童虐待防止法の改正があったため、広範多岐にわたる内容が盛りだくさんとなっています。市町村や児童相談所の職員体制に係る資料、親子関係再構築と今後の社会的養護のあり方に係る資料など、児童虐待防止に係る節目を示す内容があると受け止めました。

 1,03,260件という児童虐待対応件数は、この統計データの開始年度である平成2年度の1,101件の約94倍に上ります。とくに、心理的虐待は著しい増大です。

 DVが子どもに対する心理的虐待にカウントされるようになったことなどから、心理的虐待は、平成18年度に6,414件(全体の17.2%)だったものが、平成27年度には38,755件(43.6%)と絶対数と構成比がともに、急増しています。

 本来であれば、子どもがもっとも安心することができ、もっとも大切に慈しんでもらえるはずの家庭が、暴力とネグレクトにまみれて子どもの居場所とはかけ離れたものになっている現実はまことに深刻です。

 しかも、少子化が進んで子どもの絶対数が減少している時代になって、子どもが先行世代から大切にされていない事実を露わにしているのですから、大人全体が受け止めて事態の改善について考えるべきでしょう。ここで、政府と社会が、子ども虐待の抜本的に克服に向けた取り組みを進めることができないのであれば、わが国の「持続可能性」はゼロに接近していくほかありません。

 さて、今回の資料で注目する点は、児童虐待に対応する職員の実態を示す資料にあります。児童相談所に配置されている児童福祉司と児童心理司の数を都道府県・政令市・設置市ごとに示した資料や、児童福祉司をスーパーバイズする児童福祉司の配置状況、市町村担当職員の経験年数別実態・正規非正規職員の実態など、職員体制の見直しと改善に資する資料が明らかにされています。

 児童福祉司をスーパーバイズする児童福祉司の配置状況については、都道府県・市によって天地の開きがあります。スーパーバイザー配置ゼロのところは、石川県、岐阜県、佐賀県、新潟市、広島市、北九州市、金沢市となっています。それぞれの自治体に独自の取り組みがあるのかも知れませんが、大阪府のスーパーバイザーの配置が32人(平成28年4月1日現在)である事実からすると、職員体制に関する看過することのできない自治体間格差があるように思えて仕方ありません。

 また、市町村における虐待対応担当窓口職員の実態は次のようです。

資格を有する者の割合

 資格についてのグラフは、左側が専門資格を有し、右側が有しないものの割合で町村部は過半数が無資格者で対応する実態となっています。

正規職員と非正規職員の割合

 正規・非正規の割合に関するグラフは、左側か正規で、右側が非正規です。町村部は9割が正規であるのに対し、政令指定都市・児童相談所設置市は約1/4が非正規、人口30万人以上の市で4割近くが非正規、それより人口規模の小さい市となると半数近くが非正規となっています。

 市町村の虐待担当職員の体制は、専門性と雇用形態の両面で、児童虐待の深刻な実態にふさわしいとはとても言うことができません。このように次の世代を大切にしていない市町村行政の問題は、事態の改善に向けて、真っ先に市町村議会で議論されるべきでしょう。

台風一過の青空

 さて、東日本の全体が、相次ぐ台風の接近・通過で、突然の豪雨や雷など、荒れた天候の日が続いています。台風一過の合間にみせた青空に、一抹の安堵を感じますね。