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梶川義人の虐待相談の現場から

梶川 義人 (かじかわ よしと)

様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。

プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)

日本虐待防止研究・研修センター代表、桜美林大学・淑徳大学短期大学部兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。

ハッキリ言って今回は宣伝です!

 故あって、放課後児童支援員対象の研修の講師を務めることになりました。研修目的の1つが「苦情を生まない保護者とのコミュニケーションの方法」なので、考え方を工夫してみました。

 整理の起点を、児童間のトラブルや事故などよくある苦情ではなく、対人援助の基本的な技術に難があると、保護者の「期待はずれ」感を高め苦情につながりやすい、という点にしたところ、以下の6つに集約できました。

(1)親の批判子どもの前で批判されると親のメンツはまる潰れです
(2)親の負担何かを依頼するなら親の負担を計算に入れないと苦情につながります。とくに、依頼が正論だと親は抗い難いため、負担感は一気に高まります
(3)親への説教「何様だ」感や「そんなの分かっている」感など、親の反発を招きやすく、(1)や(2)にもつながります
(4)コミュニケーション波長が合わないと信頼関係が揺らぎやすくなります。言語的な面だけはなく非言語的な面にも配慮するのがポイントです
(5)時間の浪費無駄な会話は「時間の無駄」と感じさせたり気疲れを感じさせたりします
(6)役立たず感子どもにまつわるトラブルなどを速やかに解決できないと、この感情を抱かれます。また、解決にあたって依怙贔屓を感じると不満が生じます

 これらを、支援シナリオのタイプ別にみると、介入拒否(嫌々)タイプ、パーソナリティー障害タイプ、対立的介入タイプの場合は(1)から(5)の全部が危険だと言えます。不平不満タイプの場合、(1)(2)(3)ならケンカを売るようなものですし、(4)(5)(6)は揚げ足取りの格好の材料です。また、よき来談者タイプなら、(1)(3)は、主体性を損ない依存性を高めます。

 しかし、(1)から(5)は対人援助の基本の真逆ですから、「褒める・労う・教えて貰う・真似る・まとめる・役立つ何かをしてあげる」技術を磨けばよいわけです。

 ちなみに、冒頭の研修の枠組みは、上記に苦情対応のポイント(必要即応、客観的事実と主観的事実、戦略的、連携)を加えて無事出来上がりました。スピード感をもって動き、相手の主訴や希望の次第により謝罪か対立的介入かを戦略立て、報連相は抜かりなく行う、イメージです。

 ところで、私は、この記事同様、整理の起点を変える発想で「これって虐待?こんなときどうする?”不適切なケア”改善のポイント」という原稿を書き上げたばかりです。中央法規出版様の雑誌「おはよう21」7月号の特集「あなたはやっていませんか?不適切なケア・グレーゾーンなケア」という記事です。

 読者が自前で研修を行うときにも使えるように配慮されています。不適切なケアの疑われる9つの漫画を軸に、チェックリスト、虐待との線引きを含めた考え方、改善のポイント、Q&A、ルーブリック自己評価表などを用いて解説しました。

 漫画を使ってグループワークを行い、解説の読み合わせをし、ディスカッションする構成にすれば、アレンジ次第でいろいろな研修を行うことができます。是非お試し下さい。

「『おはよう21』の立ち読み
止めてもらえますか!」