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梶川義人の虐待相談の現場から

梶川 義人 (かじかわ よしと)

様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。

プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)

日本虐待防止研究・研修センター代表、桜美林大学・淑徳大学短期大学部兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。

経済オンチの戯言

 先日、新しい高齢社会対策大綱をナナメ読みしました。年金の受給開始年齢を70歳以降も可能にする、介護職員の処遇改善による人材確保、介護基盤やサービス付き高齢者向け住宅の整備、仕事と介護を両立できる雇用・就業環境の整備など、基本的施策が示されていました。

 また、数値目標も示されていたのですが、こうした数字を見るといつも「介護や医療の経済効果はどのように見積もられているのだろう」と思います。たとえば、医療サービスにより病気が治って復職できたり、介護サービスにより介護離職を免れたりできるなら、それは大きな経済効果だと考えるからです。

 むろん、家政婦代わりのヘルパー利用や残薬など、経済効果としてマイナスになることもあるでしょうし、波及効果も勘定に入れるなら、計算はとても複雑になります。しかし、社会保障の支え手であると同時に受益者でもある国民が、医療や介護の経済効果を知ることができたなら、皆が納得できる制度を設計するのに大いに役立ちます。

 こうしたことは、介護や医療の分野に限らず、多種多様の行政サービス全般にもボランティア活動にも当てはまります。自分で業者に頼んだら、それこそとんでもない額を請求されそうなことが少なくありません。

 そして、このブログ「ケアの質を数値化、新時代」のなかで、行政サービスのアウトカム評価について述べましたが、経済効果を計算できれば、それは有力なアウトカム指標になります。

 ところで、マスコミはよく、社会福祉や地方創生の分野の成功例を紹介しています。私は、この成功のキーワードもまた、経済効果にあるように思います。たとえば、障害者雇用において、彼らの卓越した作業への集中力を活かし、強い競争力を持つ製品を製作・販売している会社の例や、補助金を頼らず、地域の特産品を用いた新商品のブランド化に成功している地域の例などです。

 どちらの例も、「稼ぐこと」換言すれば「経済効果」がちゃんと示されています。おそらく、経営者やリーダーのビジネス・センスが優れているのだろうとは思いますが、介護や医療などの分野はもっと、自分たちの仕事の経済効果に関心を向ける必要があるように思います。

 一般に、介護や医療の分野は、消費するだけのように思われがちです。しかし、経済効果を産み出しもするというビジネス・センスをも併せ持てば、アウトカムのハッキリとした、より良い事業展開が可能になります。世の人々は、どのような商品であれサービスであれ、そのアウトカムに納得すればお金を出してくれるからです。

 大きなお金の行方を左右する、テレビの視聴率やネットのアクセス数と同じようなものかもしれません。ですから、私も、自分の専門である虐待防止について、一体どんな経済効果が見込めるか、本気で考えていきたいと思います。

「私、経済効果大好き!」
「お金に目が眩んでいるだけネ」