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梶川義人の虐待相談の現場から

梶川 義人 (かじかわ よしと)

様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。

プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)

日本虐待防止研究・研修センター代表、昭和女子大学・淑徳大学短期大学部兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。

事例検証からの教訓

 ある自治体が主催する高齢者虐待の事例検証会に参加してきました。何年間も継続しているため参加者の力量は向上し、1事例およそ30分ながら、中身はとても濃いものでした。得られた教訓を幾つかお伝えしたいと思います。

教訓1:ケアマネジャーの介入拒否には急がば回れ。

 行政と地域包括支援センターは「虐待事案として関わる必要がある」と考えても、ケアマネジャーが介入を拒否することがあります。こうした場合、ケアマネジャーが何を恐れて拒否するのかを明らかにしないまま説得を試みていると、時間がかかり介入が遅れます。恐れの中身は、「信頼関係が壊れる」とか「大事になるから」など様々ですが、説得より恐れの解消を目指すほうが「急がば回れ」で効果的です。

教訓2:生真面目介護の落とし穴は小規模多機能型居宅介護で解決。

 一時的に分離しても、家庭への復帰の可否判断は悩ましいものです。多くは、虐待の再発を恐れるからですが、「生真面目介護の落とし穴」のような事例なら、当事者の間を、物理的には距離を離し、心理的には距離を近くすると、効果的なことがあります。この点で、小規模多機能型居宅介護は、物理的距離と心理的距離の間合いをはかりやすくて便利です。

 ですから、事業所の数が増えたら嬉しいのですが、大規模施設のようなスケールメリットはないし、利用者は近距離の方に限られますから、増やすのは難しいのでしょうか。素人考えでは、小規模多機能型の代表格であるコンビニエンスストア同様、全事業所をネットワークでつなげば、かなり将来性があるように思えます。

 POSシステム(Point of sale;販売時点情報管理)同様、ビックデータを集めて分析して人工知能のような深層学習を施せば、利用者やその家族のニーズにきめ細やかに応えられ、利便性を飛躍的に向上できると考えるからです。

教訓3 子育て時期にまでさかのぼったアセスメントが必要な事例がある。

 父が早くに亡くなり、疑似的な夫婦関係の様相を呈する母と息子の関係や、児童虐待の被虐待児がAC(アダルト・チャイルド)となって虐待者となったなど、長い歴史を踏まえる必要のある事例があります。こうした場合、「アセスメント」イコール「物語」と考えれば、予後や終結、フォローアップにおける判断の精度は上がります。

教訓4 非典型的な事例もある。

 高齢期の夫婦関係では一般に、若年期には葛藤型であっても、力関係の不均衡が崩れ、干渉依存型か放任孤独型に傾くことが多くなります。しかし、この逆の道を辿ることもあります。つまり、干渉依存型か放任孤独型から葛藤型に至る場合です。したがって、典型例に囚われずにイレギュラーなことも想定できる、いわば余地は残しておかないといけません。

「(教訓を学ばないから)あなた素敵!」
「エヘヘ、僕は素敵?」