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梶川義人の虐待相談の現場から

梶川 義人 (かじかわ よしと)

様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。

プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)

(仮称)日本虐待防止研究・研修センター開設準備室長、淑徳短期大学兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。

横領と搾取とポケモンGO

 私は、横領事件のニュースを見るといつも、搾取(経済的虐待)との共通性について考えてしまいます。

 経理担当者が、業務を一任されていたのをいいことに何千万円も着服したような事件なら、「一任されていたから、チェック(人目)のない状況が続き、密室性が高まったのだろう」とか、「密室性が高まると、犯人は『私だけの世界』に浸りながら、その秘められた性悪性が頭をもたげ易くなるのかもしれない」などです。

 また、考えはお金の使い方についても及び、ブランド品を買ったとか、遊興費に遣ったというと、「私だけの世界に浸っていると、性悪性だけではなく享楽性も刺激されるのではないだろうか。よく『悪銭身につかず』というし」とか、「もしそうなら、『色と金に皆迷う』と言われるように、性的虐待にも関わっているのかもしれない」といった具合です。

 さらには、享楽性自体についても考えてしまいます。たとえば、子どもから大人まで、実に多くの人々がハマるゲームの持つ享楽的な刺激の強さです。最近も、任天堂などが開発した「ポケモンGO」は、日本に先行して発売された米国で、物凄い人気だといいます。

 スマートフォンのGPS機能を使って街中を歩きまわると、実際の風景のそこかしこに潜むキャラクターが出現するので、それを獲得していくという、たわいもないゲームなのに、なぜそこまで人はハマるのでしょうか。

 以前、その道のプロから、ゲームアプリ設計の3つの条件というのを聞いたことがあります。

 第一に、ゲームの目的がハッキリしていいて「簡単」に始められること、第二に、課題のクリアと挑戦の繰り返しによりゲーマーが「熱中」できること、第三に、アイテム獲得などの“ご褒美”が段々グレードアップするのにつられて、ゲームをいつまでも「継続」できること、だそうです。

 なるほどポケモンGOはこれらの条件を見事の満たしているようですが、一方で、この条件は一連のプロセスであり、横領や搾取にも当てはまるように思えて、怖くなります。

 人目のない状態では、横領や搾取の「機会」と「手段」は簡単に手に入りますし、私だけの世界に浸ることで性悪性と享楽性は刺激され、出来心などの「動機」も生じ易くなります。結果的に、不正の3要素である機会・手段・動機は、案外容易く揃ってしまうものです。

 言わば、人様のお金に手をつけることは、「簡単」に始められるわけです。そして、手口をより巧妙にしようとすることが、ゲームように課題のクリアと挑戦の繰り返しとなるため「熱中」し、ゲームのご褒美にあたる金額が増えるのにつられて、発覚するまで「継続」できてしまう、という按配です。

 ゲームという虚構にでも悪事という現実にでも、とかく私たちはハマり易い生き物なのかもしれません。まったくクワバラクワバラです。

「虚構世界のカ・イ・カ・ン♪」
「私は、貴方の姿に震撼!」