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梶川義人の虐待相談の現場から

梶川 義人 (かじかわ よしと)

様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。

プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)

(仮称)日本虐待防止研究・研修センター開設準備室長、淑徳短期大学兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。

「介入の好機は、思うよりずっと早期」再び

 NHKスペシャル「私は家族を殺した“介護殺人”当事者たちの告白」(7月3日放送)によると、未遂も含め過去6年間で少なくとも138件あったといいます(NHK調べ)。国の対応状況等の調査でも、毎年、件数程度は発表されており、平成26年度は25件でした。

 NHKの調査はもう少し踏み込んでいて、介護殺人は、虐待全体の傾向と同じく、加害者の7割以上が男性で、被害者の7割以上は女性だそうです。

 しかし気になるのは、介護期間が短い事例が多いという点です。最も多いのは1年未満の26%で、全体の53%は3年以内だそうです。また、全体の75%はデイサービスなどの介護サービスを利用している点も気になります。

 私は、いくつかある介護殺人のタイプに共通する特徴が、これら気になる点を読み解く鍵であるように思います。

 まずはタイプ別にみていきます。

 1つは「夫婦の心中型」です。心中では、リードする者とそれについていく者がいると言われますが、たとえば、要介護状態になったことが受容できず希死念慮を抱く妻が、要介護状態では自ら命を絶てず、それを夫に託すような例です。夫は逡巡の末に妻の希望を受けいれ、自分も後を追おうとするものの死にきれず、殺人者となってしまいます。

 2つは「夫婦の葛藤型」です。たとえば、妻が認知症となり夫には受け容れがたい言動をするようになり、夫婦で衝突することが増え、夫は思い余って妻を手にかける、といった例です。

 3つは「息子介護の破綻型」です。息子は認知症となった母親の激変ぶりを受容できず、また、離職を余儀なくされた末に、思い余って母に手をかける、というような例です。

 共通点として第一に注目したいのは、要介護状態の「受容」の問題です。要介護状態を受け容れるのは、被害者にとっても加害者にとっても時間を要します。しかも、その間、とても不安定になります。「案外介護期間が短い」のはこのためではないかと思います。

 第ニに注目したいのは、加害者と被害者は、過度に結びつく状況にある、という点です。これは、当事者個人に関する要因と、外部的な要因によって作りだされます。前者なら、「介護しなければならない」という義務感など、後者なら、加害者以外に介護する者がいないという事情などが思い浮かびます。

 第三に注目したいのは、孤独・孤立化している例が多いという点です。誰にも相談できず、追い詰められてしまうわけです。

 したがって、単純にサービスを使えば良いというものではなく、要介護状態となった初期に介入し、当事者が「これならやっていける」と思える体制を整えるお手伝いがとても大切なのだと言えます。まさに、「介入の好機は、思うよりずっと早期」です。

 具体的には、要介護状態の受容は、精神科医のロス氏のいう「死の受容プロセス」同様、「否認→怒り→取引→抑うつ→受容」という過程を辿りますから、介護者が抱く過度の義務感の低減も含め、この過程に寄り添いながら支援展開する必要があります。

社員たち「気分はもう夏休み!」
社長「早過ぎる!!」