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梶川義人の虐待相談の現場から

梶川 義人 (かじかわ よしと)

様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。

プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)

日本虐待防止研究・研修センター代表、昭和女子大学・淑徳大学短期大学部兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。

知恵の輪を解く鍵は、情緒と意志

 私は、知恵の輪が大好きです。その意表を突いた解法は、ひねくれた性格の私に、ある種の爽快感をもたらしてくれるからです。そのせいか、高齢者虐待との関連も深い2025年問題についても、意表を突く解法を求めたい気持ちに駆られます。

 言うまでもなく、わが国は、医療や介護への需要の高まりに、在宅生活を支える方向で、新オレンジプランや介護保険制度の改正など、正攻法(知性)で解こうとしています。

 しかし私は、まるで知恵の輪のように解けそうで解けず、売り手と買い手や行政と市民などの間にウインウイン(Win-Win)の関係を築けないのでは、と危惧しています。

 たとえば、正攻法では、商売なら原資(売り手の資産)と対価(買い手の支払い)、行政サービスなら原資(税金)と対価(利用者の支払い)、社会保険なら原資(保険料と税金)と対価(給付と利用者の支払い)といった原資と対価のバランスを取ろうとします。

 ところが、どんなことにも「不公平だ」と思う人はいます。たとえば勝ち組は、たとえ不公平ゆえに「儲かり過ぎている」にせよ、「正当な報酬なのだから、自分の自由にして何が悪い」と言い、負け組は「勝ち組が儲かり過ぎた分を、社会に還元するのは当然だ」と言う、といった具合です。

 ですから、数字以上に、「納得する」という人の「意志」への配慮が必要になるのですが、私たちはこの点で、既に幾つか下手を打っている気がします。

 一つは、介護保険では、保険者を市町村とし、要支援者対策をも保険の財源で賄ってきたことです。社会保険の大前提である、「大数の原則」とモラルハザード対策の禁忌を破っているからです。

 二つは、サービス事業者のインセンティブを、許認可や介護報酬によって操作する方法には、副作用があるという点です。健全な自由競争を妨げる側面があると同時に、少しの操作ミスが、業界全体に大きなマイナスのインパクトを与えることがあるからです。

 現に、それなりの規模の事業者でないと生き残れない一方、許認可を逃れて不正を働く事業者の出現は防げずに、対策は後手に回るなど、与えたインパクトを収拾するのは容易ではありません。

 三つは、行政サービスや社会保険のメリットと思われてきた点にも、副作用はあるという点です。たとえば、利用者は、無料または極めて廉価でサービスを受けられたり、法定代理受領システムによって請求事務の煩わしさから解放される反面、サービスの実費を意識できなくなります。

 そのため、私たちの数字をはじき出す知性も、それに納得する意志も、カオスのようにもつれていると思うのです。これでは知恵の輪は解けません。では、どうすれば良いのか。

 私は、「情緒」が鍵になると考えます。とくに、「期待」は重要だと思います。期待する情緒が加われば、知・情・意のバランスは、格段に取り易くなります。

 あるいは、2025年問題という知恵の輪は、知・情・意、全体のバランスを取ることではじめて解ける、とさえ言えるのではないでしょうか。

「だから、知・情・意のバランスだってば!!」