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梶川義人の虐待相談の現場から

梶川 義人 (かじかわ よしと)

様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。

プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)

(仮称)日本虐待防止研究・研修センター開設準備室長、淑徳短期大学兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。

都道府県単位の虐待対応チーム

 2月6日、国による平成25年度高齢者虐待防止法に基づく対応状況等に関する調査(以下、対応状況調査)の結果が発表されました。介護保険制度の改正など、いろいろあって、例年より遅れて、年をまたぎました。

 しかし、今回は、注目すべきことがあります。それは、調査結果の発表と併せて「対応の強化」に関する、都道府県知事あての厚生労働省健局長通知が出たことです。その内容は、高齢者虐待の「未然防止」「早期発見」「迅速・適切な対応」を骨子とし、7頁に及びます。

 「未然防止」では、従事者への研修、地域住民への啓発、介護保険サービスの適切な援用、認知症への理解を深めるための普及啓発と認知症の人の介護者への支援、「早期発見」では、早期発見・見守りネットワークの構築促進について述べられています。

 研修に関しては、「養介護施設従事者等による高齢者虐待の防止及びストレスマネジメント支援に向けた教育システム」(認知症介護情報ネットワークのホームページ「研究報告書/センター研究報告書(仙台センター)」平成20年度の欄をご参照ください。教材を含むすべての資料がダウンロード可能です)を紹介していますから、なかなか具体的です。

 そして、「迅速・適切な対応」関しては、初動期段階の体制整備、対応ネットワークの構築、市町村の対応力強化、やむを得ない事由による措置等、市町村に対する都道府県の支援について述べ、「その他」として、成年後見制度の利用促進と権利擁護人材の育成、都道府県・市町村における調査結果の分析・活用、高齢者虐待の防止に関する取組状況の把握についても言及しています。

 国の対応状況調査は、平成24年度からは事例ベースで集計されるようなり、科学的な分析が可能になったことは、このブログでも以前お伝えしましたが、老健局長通知でも、調査結果を根拠とした記述が随所にみられます。国が、科学的な分析を踏まえて主体的に発したメッセージとして、評価できるものだと思います。

 しかし、相変わらず、気になることもあります。たとえば、老人福祉法や介護保険法の適用外である「実態施設」における虐待にどう対応するかなど、高齢者虐待防止法の改正にかかわるようなことにまでは踏み込んでいない点です。

 もちろん、高齢者虐待防止法は議員立法であるため、厚生労働省としては、法律の主要な部分には手がつけにくい事情も分かります。

 ですから、私は、この生活習慣病に蝕まれた身体に鞭打って、ソーシャル・アクションを起こさねばならないか、という気持ちを新たにしています。

 また私は、わが国の高齢者福祉や介護サービスの社会システムを、スポーツになぞらえれば、都道府県は監督、政令指定都市はヘッドコーチ、市区町村はコーチ、施設や事業所は選手である、といえるように思います。つまり、都道府県単位の虐待対応チームのようなものです。

 ですから、募集しても人が集まらないなど、故障を抱えた選手たちが、監督の目標設定と進捗管理のもと、コーチにいたわれ育てられることで本領を発揮し、老健局長通知にある内容を実現していく、そんな流れになってほしいと願います。

「フレーッ、フレーッ!都道府県単位の虐待対応チーム!」
「って、お前、誰だよ?」