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梶川義人の虐待相談の現場から

梶川 義人 (かじかわ よしと)

様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。

プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)

(仮称)日本虐待防止研究・研修センター開設準備室長、淑徳短期大学兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。

協力する腕相撲!?

 最近の大きな出来事といえば、国際的には、フランスで起きたテロ事件、国内的には、食品への異物混入問題の続発でしょうか。「まさか」と思うようなことでもあり、かなりショッキングです。

 テロ事件の背景に、遺恨の歴史があるのは周知の事実としても、大きな勢力同士であればこそ、共存共栄を目指せば、とても建設的なのに、なぜ破壊的な未来に向けて舵を切るのでしょうか。

 双方の指導者層は、相当に知的な人々でしょうに、「弁証法的な止揚はどこにいった?」という感が拭い去れません。

 異物混入問題にしても、企業と消費者の関係が、腕相撲のエクサイズでいう「勝負」の様相に陥っていることが多く見受けられます。

 すなわち、100%完璧とはいかない現実を無視し、ことさら安全衛生管理能力をアピールする企業と、ことさら100%完璧な安全衛生管理を求める消費者や、おこぼれに与りたい一心で煽り立てる輩。そして、いざ真っ向勝負というわけです。

 テロ事件でも食品への異物混入の問題でも、双方の態度は、まるで「圧迫面接」の面接者のようです。圧迫面接は、威圧的に揚げ足取りの質問をたたみかけて、相手の適応力をみる方法です。採用面接でもよく用いられるので、経験された方もいらっしゃると思います。

 しかし、テロ事件や異物混入問題の当事者は、採用面接とは目指すところが違います。事態の収拾や再発防止に務めねばならず、争っている場合ではないのですが、それでも威圧一辺倒なのですから、私たち人間は、感情に任せて勝負に拘りやすいのもしれません。

 もっとも、「協力」して得られる利益の方がずっと大きいのに、目先の「勝負」で得た小さな利益に満足しているとしたら、それこそ漫画です。

 そこで、感情的にならず合理的に考えて、「勝負」と「協力」を上手に選べるようになりたいものです。

 役立ちそうなものとして、認知行動療法の「腕相撲のエクサイズ」があります。これは、対立しやすい二者を想定した腕相撲の役割演技を通して、建設的なコミュニケーションが、「勝負」ではなく「協力」にあることを体験的に学ぶものです。

 一般的な腕相撲のように、勝った者に得点が加算されるのではなく、両者が交互に勝つと得点が上がるルールだ、というところがミソなのですが、私たちには、こうした類のエクササイズが不足しているように思います。

 実は、虐待事例への対応においても、似たような状況は少なくありません。

 たとえば、「虐待なのか虐待ではないのか」「緊急性はあるのかないのか」「その見立ては正しいのか間違っているのか」「対決的な介入が良いのか懐柔的な介入が良いのか」「そもそも、それは誰がやるべきことか」など、意見が対立する場合です。

 研修内容への要望としても、ときどき「意見の対立の解消方法」が含まれるため、そのときは私も「腕相撲のエクササイズ」を行うのですが、評判は上々です。

「“身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ”で協力するわ
(でも、チックショー!)」