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梶川義人の虐待相談の現場から

梶川 義人 (かじかわ よしと)

様々な要素が絡み合って発生する福祉現場での「虐待」。
長年の経験から得られた梶川さんの現場の言葉をお届けします。

プロフィール梶川 義人 (かじかわ よしと)

(仮称)日本虐待防止研究・研修センター開設準備室長、淑徳短期大学兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。

あしたのために(その2)=虐待対応の基礎練習=

 練習というのは、案外難しいテーマです。誰でも上手く虐待対応できるノウハウ自体が確立されていないからです。そこで、私なりの考えを書きたいと思います。

 一つには、虐待対応は、推理力、洞察力、予測力、実現力という4つの力に支えられているのではないか、という点です。

 つまり、発見から事前評価は、推理力と洞察力、計画立案は予測力、計画実行は実現力、といった具合です。そして、これら4つの力を養えるなら、虐待対応とかかわりはなさそうでも、有効な練習方法はあると思います。

 以前、何かの雑誌に「米国の医大が、医学生の観察力を向上させるために、名画鑑賞コースを受講させたところ、医学的な気付きの能力が向上した。絵から情報を読み取る能力と、読み取った情報を統合する能力が養われたらしい」という記事が載っていました。

 だとすれば、予測力は、競馬・競輪や株・相場でも、実現力は、アルバイトやデートの掛け持ちでも、養われるのかもしれません。むろん、認知行動療法のように、科学的な根拠に基づいて体系化されていれば、練習はずっと効果的だとは思いますが。

 二つには、今述べた4つの力が、より細かくとか、より正確にとか、どちらかというと「量的」な面を養うのに対し、「質的」な面も鍛えるとよい、という点です。

 すなわち、このブログ「虐待防止ミッション:インポッシブル」でご紹介した、主体性の強化ですが、より具体的には、主体性を支える意欲性、克服性、転換性、耐性という4つの性質を鍛えたいところです。

 意欲性は、文字通り「何とかしよう」という意欲のことですが、私は、苦手意識を持ったり自信を失いかけたりしたときは、「大丈夫、何とかなる!」と自己暗示をかけ、自らを鼓舞するようにしています。

 克服性は、逃げをうたずに「問題を乗り越えて前に進む逞しさ」のことです。まさに禅宗でいう「日日是好日」の境地だと言えますが、私は、自らが抱く志に向かい、自分の強みを活かしながら進んでいく、というのが望ましいような気がします。

 転換性は、困難に際して「別の道を探す」ことを意味します。言わば、死中に活を求める、といったところでしょうか。

 耐性とは、あれこれやっても上手くいかないとき、「じっと耐える」ことです。もちろん、支援者にだって限界はありますから、「潰れない」ようにする緊急避難として、「これは実験だ」と考えることもあり得ると思います。

 三つには、基礎練習とはいっても、はやり本番(実践)とのつながりを意識することも重要だと、いう点です。そうでないと、基礎練習が目的化しかねないからです。

 相談職である私の場合、初学者の頃は、面接の様子を録音して逐語録に起こし、スーパーバイザーとともに、クライエントとのやり取りを正に逐一検証し、これを実践と練習の軸としていました。

 ところが、成功事例を経験するようになると、口頭でのスーパービジョンは受けてはいるものの、逐語録に起こすことを怠けるようになるので、暫くすると、何だかバランスが悪くなってきます。つまり、自分を甘めに客観視するようになり、「偏ってくる」感じです。

 ですから、年に何回かでも良いから、逐語録を元にしたスーパービジョンを受けるようにしたいものです。

 因みに、「身体のバランスが崩れていると、その負担は腰に蓄積していき、やがて臨界点を超えたときに腰痛になる」という説があります。

 身体のバランスは、座る、歩く、寝るといった日常の何気ない動作の繰り返しのうちに崩れてきますから、時々チェックしないといけない、というのですが、同じようなものかもしれません。

「ホームズと呼んでくれ!」
「カタチから入るタイプなのネ」