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岩本ゆりの「病気との付き合い方~医療コーディネーターからの手紙~」

Letter67「複数の治療法から一つを選ぶようにいわれたが…その7」

 前回の続きです。前立腺がんのGさんの治療法について、手術をするかしないかの考え方が医療機関で分かれてしまいました。どうすべきか自分だけでは決められず、医療コーディネーターに相談していたGさんですが、余命一年と宣告されたことをきっかけに、手術を受けてみようと考えはじめました。

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 自分の余命があと一年と聞いたGさんは、「手術をしてはなぜいけないのでしょうか? 根拠を基に手術できないと言うけれど、その根拠は平均的な人を集めて出した根拠でしょう? 私のがんは普通のがんではありません。ですから、普通の治療をしてもだめだと思うのです」と言いました。

 私は「おっしゃることはもっともだと思います。では今、手術をためらう理由は何ですか?」と聞きました。Gさんは、「手術をしてはいけない理由を知りたいのです。副作用や後遺症は具体的にどんなものがあるのでしょう? 手術をすると免疫力が落ちるのでしょうか? 例えば、手術をしたことによって免疫が下がり、再発を呼び起こしてしまっては無理をして手術をする意味がありません。また、私は抗がん剤治療に関して非常に恐怖心を持っています。昔、叔母が抗がん剤治療をしている姿は非常に辛そうだったので、あんな治療はしたくないという思いがあります。その思いが手術を選択させているのかもしれません。抗がん剤の正しい知識がほしいのです」と答えました。娘さんも「書店でいろいろな本を読んでいると頭が混乱してきます。抗がん剤は毒だから受けないほうがよいと書いている書籍も買いました。どれが真実なのでしょう?」と訴えました。

 そこで、Gさんと奥さん、娘さんと一緒に、最新の前立腺がんの治療ガイドライン(標準治療)を読んでみることにしました。まずはガイドラインとは何かという話から始め、リンパ節転移があるとなぜ手術を勧めないのか、手術のデメリット、麻酔のデメリット、後遺症が与える生活面への影響、免疫とがんに関する話など。また、読み進めていくうえで分からないことがあればじっくりとそれに答えながらページを進めていったのです。


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プロフィール
岩本ゆり
(いわもと ゆり)
看護師・医療コーディネーター、NPO法人楽患ねっと副理事長。楽患ナース株式会社取締役。1995年東京医科大学病院産科病棟、1999年東京大学病院婦人科病棟、特別室・緩和ケア病室を経て、2002年NPO法人楽患ねっと開設、2003年医療コーディネーター開業、現在に至る。
2008年フジサンケイ・大和証券グループ Woman Power Project 第7回ビジネスプランコンテスト優秀賞2003年日本看護協会広報委員就任。
主な著書は『あなたの家にかえろう』(共著、2006年)、『患者と作る医学の教科書』(共著、日総研出版2009年)など。

私は看護師として、患者さんが落ち込んだ時も、前向きな時も、患者さんの人生の傍らに寄り添い、その力となる存在であり続けたいと思います。読者の方々のご相談もお待ちしています。
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