
第89回 長寿遺伝子と食事
私たちのいのちの長さは、さまざまな要因によって変わってきます。
最近、遺伝子の研究が目覚ましい勢いで進んでいますが、その一つに老化を制御する遺伝子があることがわかってきました。
遺伝子の中にテロメアというDNA構造があります。このテロメアは、人間の細胞が分裂するたびに、その末端が短くなるのですが、ある程度の回数を細胞分裂しますと、分裂が止まってしまうのです。このような状態になると寿命がくるというわけです。そこで、このテロメアの末端が分裂して短くなるのを防ぐことによって、寿命を長くすることができるのではないかという研究がなされています。これが解明されればおそらくノーベル賞をとるのではないでしょうか。
京都大学では、テロメアの研究が線虫を用いて行われました。人間の小腸の中には線虫という体長1mmぐらいの小さな寄生虫がいて人間の腸の中の栄養で生きていますが、体に害を与えるものではありません。人間が1〜2週間断食をすると、腸の中の線虫の寿命も長くなることがわかったのです。どうやら、栄養を遮断することによってテロメアの末端が分裂して短くなるのが防がれるというのです。
米国にはマッカーサー財団(MacArthur Foundation)という有名な研究機関がありますが、主な研究目的はサクセスフル・エイジング(successful aging)、つまり、「いかにしてサクセスフル・エイジングを実現するか」ということです。この財団の委員長は、ニューヨークのマウント・サイナイ医学校のロウ博士(John W. Rowe)で、もとはハーバード大学の老年医学の教授でした。医学、工学、経済学、心理学、社会学など学際的な研究チームを組織して、10年間に及ぶ研究結果をまとめ、1998年にカーン博士(Robert Kahn)と共著で『Successful Aging』という本が出版されました(日本語訳『年齢の嘘―医学が覆した6つの常識』日経BP社刊、2000)。
私たち人間は、父親から1万1000、母親から1万1000、あわせて2万2000の遺伝子をもらっていますが、心身の機能に対して遺伝子はどういう役割を果たすかについて研究したものでした。その研究では、サクセスフル・エイジングのためには、遺伝子よりも環境や生活習慣のほうがもっと強い影響を持っているとしています。そして、齢をとるにつれて遺伝子の影響力が低下し、環境や生活習慣による影響が増していくという学説です。つまり、皆さんはどのような環境の中で生活しているのか、その環境をサクセスフル・エイジングに向けてどのように変えていけばいいかということが問題になるのです。
環境の一つに食事を挙げることができます。どういうものを食べるかということです。ショウジョウバエに関する実験では、栄養を与えないショウジョウバエと栄養を与えたショウジョウバエでは、寿命が違うということがわかっています。栄養を制限して少なくするほうが長生きするというのです。つまり、低カロリーにすると寿命が延びるというのです。またマウスやサルの実験でも、十分に栄養を与えたマウスやアカザルよりも、エサを控えめに与えたほうが長生きをするということも明らかにされています。
これらの実験から、人間も摂取する量は少し控えたほうがいいのではないかという説があり、日本では昔から断食療法という健康療法が行われたりしています。断食療法というのは先に述べたテロメアの遺伝子と関連があるのではないかと興味をもっています。
私は100歳を超えましたが、今でも体重は30歳のときの60kgを維持しています。腹囲も30歳のときと変わっていません。長寿のためには、30歳のときの腹囲と体重を保持すること、そのためには腹八分にして、太りすぎないように気をつけることです。ちなみに、私の一日の摂取カロリーは1300キロカロリー、多く摂り過ぎた時には、そのあと2、3日で元に戻るように食事量をコントロールしています。
最近、遺伝子の研究が目覚ましい勢いで進んでいますが、その一つに老化を制御する遺伝子があることがわかってきました。
遺伝子の中にテロメアというDNA構造があります。このテロメアは、人間の細胞が分裂するたびに、その末端が短くなるのですが、ある程度の回数を細胞分裂しますと、分裂が止まってしまうのです。このような状態になると寿命がくるというわけです。そこで、このテロメアの末端が分裂して短くなるのを防ぐことによって、寿命を長くすることができるのではないかという研究がなされています。これが解明されればおそらくノーベル賞をとるのではないでしょうか。
京都大学では、テロメアの研究が線虫を用いて行われました。人間の小腸の中には線虫という体長1mmぐらいの小さな寄生虫がいて人間の腸の中の栄養で生きていますが、体に害を与えるものではありません。人間が1〜2週間断食をすると、腸の中の線虫の寿命も長くなることがわかったのです。どうやら、栄養を遮断することによってテロメアの末端が分裂して短くなるのが防がれるというのです。
米国にはマッカーサー財団(MacArthur Foundation)という有名な研究機関がありますが、主な研究目的はサクセスフル・エイジング(successful aging)、つまり、「いかにしてサクセスフル・エイジングを実現するか」ということです。この財団の委員長は、ニューヨークのマウント・サイナイ医学校のロウ博士(John W. Rowe)で、もとはハーバード大学の老年医学の教授でした。医学、工学、経済学、心理学、社会学など学際的な研究チームを組織して、10年間に及ぶ研究結果をまとめ、1998年にカーン博士(Robert Kahn)と共著で『Successful Aging』という本が出版されました(日本語訳『年齢の嘘―医学が覆した6つの常識』日経BP社刊、2000)。
私たち人間は、父親から1万1000、母親から1万1000、あわせて2万2000の遺伝子をもらっていますが、心身の機能に対して遺伝子はどういう役割を果たすかについて研究したものでした。その研究では、サクセスフル・エイジングのためには、遺伝子よりも環境や生活習慣のほうがもっと強い影響を持っているとしています。そして、齢をとるにつれて遺伝子の影響力が低下し、環境や生活習慣による影響が増していくという学説です。つまり、皆さんはどのような環境の中で生活しているのか、その環境をサクセスフル・エイジングに向けてどのように変えていけばいいかということが問題になるのです。
環境の一つに食事を挙げることができます。どういうものを食べるかということです。ショウジョウバエに関する実験では、栄養を与えないショウジョウバエと栄養を与えたショウジョウバエでは、寿命が違うということがわかっています。栄養を制限して少なくするほうが長生きするというのです。つまり、低カロリーにすると寿命が延びるというのです。またマウスやサルの実験でも、十分に栄養を与えたマウスやアカザルよりも、エサを控えめに与えたほうが長生きをするということも明らかにされています。
これらの実験から、人間も摂取する量は少し控えたほうがいいのではないかという説があり、日本では昔から断食療法という健康療法が行われたりしています。断食療法というのは先に述べたテロメアの遺伝子と関連があるのではないかと興味をもっています。
私は100歳を超えましたが、今でも体重は30歳のときの60kgを維持しています。腹囲も30歳のときと変わっていません。長寿のためには、30歳のときの腹囲と体重を保持すること、そのためには腹八分にして、太りすぎないように気をつけることです。ちなみに、私の一日の摂取カロリーは1300キロカロリー、多く摂り過ぎた時には、そのあと2、3日で元に戻るように食事量をコントロールしています。
(2012年3月19日)
■セミナーのお知らせ
【テーマ】 | 基礎から学ぶフィジカルアセスメント2011――(2)呼吸器総論/胸部の打診・聴診 |
【講師】 | 馬島徹先生((財)化学療法研究会化研病院呼吸器センター長/国際医療福祉大学教授) |
【対象】 | 看護師、保健師、看護教員、介護支援専門員など |
【日程】 | 6月30日(土)10:00〜16:00 |
【会場】 | 健康教育サービスセンター(地下鉄・永田町駅下車徒歩4分) |
【参加費】 | 7,000円(LPC会員5,000円) |
【関連URL】 | http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm |
【主催・問い合わせ先(平日9:00〜17:30)】 (財)ライフ・プランニング・センター TEL(03)3265-1907 FAX(03)3265-1909 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-5砂防会館5階 HP:http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm メールアドレス:lpc_seminar@lpc.or.jp |
■セミナーのお知らせ
【テーマ】 | 基礎から学ぶフィジカルアセスメント2011――(1)バイタルサインの異常からアセスメントできること |
【講師】 | 徳田安春先生(筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター総合診療科教授) |
【対象】 | 看護師、保健師、看護教員、介護支援専門員など |
【日程】 | 5月26日(土)10:00〜16:00 |
【会場】 | 健康教育サービスセンター(地下鉄・永田町駅下車徒歩4分) |
【参加費】 | 7,000円(LPC会員5,000円) |
【関連URL】 | http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm |
【主催・問い合わせ先(平日9:00〜17:30)】 (財)ライフ・プランニング・センター TEL(03)3265-1907 FAX(03)3265-1909 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-5砂防会館5階 HP:http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm メールアドレス:lpc_seminar@lpc.or.jp |
■セミナーのお知らせ
【テーマ】 | 第39回財団設立記念講演会――「いのち」つなげる「いのち」つながる |
【講師】 |
日野原 重明(ひのはら しげあき)先生 聖路加国際病院理事長・同名誉院長。(財)ライフ・プランニング・センター理事長。東京都名誉都民、文化功労者、文化勲章を受章。2000年秋「新老人の会」を立ち上げ会長に。作年からは日本ユニセフ協会大使を務める。 |
【日程】 | 2012年5月19日(土)13:30〜16:30 |
【会場】 | 笹川記念会館 国際会議場(都営浅草線・泉岳寺駅より徒歩5分・JR田町駅より徒歩10分) |
【参加費】 | 1,000円。事前に往復ハガキでの申し込み(5/12消印有効、ただし満席になり次第締め切り)。 |
【定員】 | 800名 |
【関連URL】 | http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm |
【主催・問い合わせ先(平日9:00〜17:30)】 (財)ライフ・プランニング・センター TEL(03)3265-1907 FAX(03)3265-1909 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-5砂防会館5階 HP:http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm メールアドレス:lpc_seminar@lpc.or.jp |
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【参加要綱】 ひとり1枚の往復ハガキに、(1)郵便番号・住所、(2)氏名(ふりがな)、(3)電話番号、(4)会員の方は会員番号(LPC会員・新老人の会)を、会員で無い方は非会員と明記、返信用には住所・氏名を明記の上、下記までお送り下さい。 |
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【申し込み先】(5/12消印有効、ただし満席になり次第締め切り) 〒102−0093 東京都千代田区平河町2−7−5 砂防会館5階 ライフ・プランニング・センター 「財団設立記念講演会」 係 |
■セミナーのお知らせ
【テーマ】 | 日野原重明先生の指導による東京都訪問介護員養成研修2級課程 |
【日程】 | 2012年4月24日(火)〜10月9日(火) |
【会場】 | 健康教育サービスセンター(地下鉄・永田町駅下車徒歩4分) |
【講師】 | 各領域の専門職 |
【関連URL】 | http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm |
【詳細】 | ファイルをダウンロード |
【主催・問い合わせ先(平日9:00〜17:30)】 (財)ライフ・プランニング・センター TEL(03)3265-1907 FAX(03)3265-1909 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-5砂防会館5階 HP:http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm メールアドレス:lpc_seminar@lpc.or.jp |
■セミナーのお知らせ
【テーマ】 | 薬はリスク?―臨床薬理学的な薬の裏話― |
【日程】 | 2012年4月13日(金)14:00〜16:00 |
【会場】 | 健康教育サービスセンター(地下鉄・永田町駅下車徒歩4分) |
【参加費】 | 1,500円(会員1,000円) |
【講師】 | 高橋敦彦(医学博士、日本大学医学部総合健診センター医長) |
【関連URL】 | http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm |
【主催・問い合わせ先(平日9:00〜17:30)】 (財)ライフ・プランニング・センター TEL(03)3265-1907 FAX(03)3265-1909 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-5砂防会館5階 HP:http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm メールアドレス:lpc_seminar@lpc.or.jp |
- この連載に関するお問い合わせ先
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◆「新老人の会」に関するお問い合わせ先◆
財団法人ライフ・プランニング・センター「新老人の会」事業部
〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-5 砂防会館5F
TEL:03-3265-1907
FAX:03-3265-1909
ホームページ:http://www.lpc.or.jp/senior_soc/ -
◆日野原重明先生が顧問をつとめている「NPO法人医療教育情報センター」に関するお問い合わせ先◆
医療教育情報センター事務所
〒151-0053 東京都渋谷区代々木2-27-16 ハイシティ代々木303
TEL:03-5333-0083
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