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ほじょ犬って、なあに?

橋爪 智子 (はしづめ ともこ)

身体障がい者の生活を支える、「盲導犬」「介助犬」「聴導犬」。そんな補助犬たちにまつわる話を紹介するコーナーです。

プロフィール橋爪 智子 (はしづめ ともこ)

NPO法人日本補助犬情報センター専務理事 兼 事務局長。
OL時代にAAT(Animal Assisted Therapy:動物介在療法)に関心を持ち、ボランティアをしながら国内外で勉強を始める。1998年、米国DELTA協会(現・米国Pet Partners協会)の「Pet Partners® program」修了。2002年より現職。身体障害者補助犬法には、法律の準備段階からかかわっている。

第132回 「防災と補助犬~障害インクルーシブ防災から学ぶ~」報告(1)

 2016年5月20日、補助犬議連主催 第4回【ほじょ犬の日啓発シンポジウム2016】「防災と補助犬~障害インクルーシブ防災から学ぶ~」が無事に終了いたしました。今年も、多くの方にご参加賜り、非常に有意義な会となりましたこと、心より感謝申し上げます。今回と次回、2回に分けて、シンポジウムの報告をさせて頂きます。

議員会館の会議室。ふかふかの絨毯が気持ちよく、足下に居ることを忘れてしまうくらい、補助犬たちはみな、爆睡モードでした・・・さすがです!

 第一部は、日本障害者フォーラム(JDF)幹事会議長の藤井克徳先生より、「防災と補助犬~障害インクルーシブ防災から学ぶ~」の基調講演がありました。
 以下に、抜粋してご紹介いたします。

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 東日本大震災の中ではっきりしたことは、NHKとの共同調査で岩手、宮城、福島の沿岸部の統計をとったところ、2倍、死亡率が高かったという結果が出ました。今度の熊本でも、5年前の東日本大震災があの教訓がどれくらい生かされたか。残念ながら福祉避難所はその建物自体が被災し、機能を発揮できなかった。また、多くの避難所は、1、2日は肩を寄せ合っても、2、3日目になると発達障害、精神障害の人は去っていく。そして、車中泊していらっしゃることがわかりました。
 今、JDFでは現地の障害者団体と組んで、熊本市とも力を合わせて、1日15人ずつ人を送りながらローラー作戦で、ニーズ把握に努めています。行政では手が回らない状況。残念ながら、政令都市の熊本市でも要援護者リストができていなかった。まだまだだなという感じがします。

 「津波てんでんこ」という言葉が東北では有名です。津波が来たら、親子といえどもまず逃げて、自分の家を誰かが継ぐ、という、有名な言葉です。一面、的を射ているかもしれませんが、障害を持つ人からすると、置いてきぼりということになる。つらい言葉でもあります。
 この間、分かってきたことは、よく言われることですが、2倍の死亡率というのは、たまたま極限状況で数字があらわれただけであり、日本列島のそこかしこに、日常的にその数字は潜んでいる。震災に関係なく、補助犬の問題も同様に、日常的に取り組んでおかないといざというときに間に合わない。
 改めて震災問題は、日常の、平時の障害者のおかれている問題とどう向き合うかに直結します。震災問題にもどると、東日本大震災はまず記憶し続け、忘れないということが、最短の支援です。同時に熊本・大分で今起こっている問題もあります。東日本大震災、熊本の大地震は、もしかしたらもっと大きな地震の予行演習だったのかもしれない。やはりある意味、首都直下型、東南海を含め、近未来を視野に入れ、改めて過去の東日本に記憶をとどめていくことが大事に思います。
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 障害者権利条約を知ることで、本質を深めたいと思います。この条約の素晴らしい点は、障害問題に関する初の世界ルールができあがったこと。たとえば障害者への差別、合理的配慮とは、意思疎通とは、言語とは。これを定義として決めました。やっと障害問題が同じテーブルで語られるようになりました。
 そして、誰もが納得できるものになりました。私は、「障害分野の北極星」と呼んでいます。

 また、もう1つ評価できる点として、社会へのイエローカードです。やはり経済主義ということがあります。なんとなく、効率や生産性、いいかえれば屈強な男性中心社会に少しずつ傾斜している。その警鐘を鳴らしているのが権利条約。もう一度社会の標準値を、障害をもった人を含めて、人間中心にとりもどそうと言っているのが、権利条約でもあります。こういう点で、この条約は、障害者のためだけじゃなく、社会のありようを提示しています。これも権利条約の素晴らしい面だと思います。

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 権利条約は、機能障害を持つ本人と、本人を取り巻いている環境の両方から考えます。環境を具体的にいうと、「障害」または「障壁」となります。制度上のものあれば、物理的な段差もあれば、おかしなならわし、人の意識もあります。こうした環境との関係で、障害は重くもなれば軽くもなります。つまり「障害」とは、本人の機能障害としてある部分と、もう1つは社会側にひそんでいる障害なのです。これまでは本人の側にあまりにウエイトが置かれていました。機能障害だけに着目するやりかたを医学モデル、個人モデルといいます。環境から見る視点は、社会モデルや生活モデルといいます。バランスもあるけれど、社会モデルのほうにもう少し軸足を置きましょう、と。環境要因の多くは、政策面からくるものが大きく、大事だと思います。大切なのは「障害の捉え方」なのです。
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 今回の権利条約の中の、新しい仕掛けは『合理的配慮』という言葉です。一般市民と平等にするために具体化していくための考え方、方法として今回は入れましょうとなりました。この『合理的配慮』という言葉は、ADAというアメリカ差別禁止法で産声を上げました。女性差別撤廃条約、こどもの権利条約にも入っていませんでした。今度の障害者権利条約で、初めてきちんと明示されました。(中略)
 『合理的配慮』の大事な点は、個別に応じた「障害をもたない人との平等」という視点で、個別的支援を行うこと。これを怠ったら差別だよ、と条約は言いました。

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 去年、ドイツに2回行き、戦時下の障害者状況をNHKと共同取材しました。17回の放送がありましたが、その一部の番組を振り返り、それで結びに入ります。
 戦時中のドイツで、精神障害者や知的障害者が大量虐殺されていたT4計画(動画で紹介)。生きる価値がないとされ、殺された犠牲者は20万人以上。殺害には医師たちが自主的にかかわり、のちにユダヤ人の大虐殺につながりました。(中略)

 日本とドイツは1万キロ弱離れています。時間、空間、遠いですが、単純に過去の問題、遠い問題として片付けられるか。これは現代に何を示しているのか。私自身も考えていこうと思っています。
 1つ言えるのは、どんな悪事や戦争にも前触れがあるということです。この段階でどう察知するか。私は障害を持った人は、察知能力が高いと思う。前触れ段階で気づくことができます。障害者を仮に全員を抹殺したにしても、今度は次に、高齢者など、弱者探しが始まります。対象は障害者だけじゃないんだ、と。今日のテーマである震災問題などで、極限状況ですが、戦争もそれ以上だと思います。この極限状況になったときにどうか。少しイメージ力をもつことも現代人に問われているかと。

 会の冒頭、補助犬同伴拒否のパーセンテージを言われました。私は、あのパーセンテージが多いうちは、震災が起こっても被害の集中はあると思います。パーセンテージが減った時に、自然災害でも同じく障害者の被害が減っていく。補助犬の問題を深めるポイントは、もっと普遍化していくということで、ぜひ今日は両面から迫るということで、あの同伴拒否率の問題と、いざ災害が起こった場合の不利益率を考えてください。またこれ以降も、議論してもらいたいと思います。
 補助犬の社会での壁、拒否率は1つの障害者問題のバロメーターという位置づけで、これからの障害問題の活動や事業のベースにしてほしいと思います。
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 藤井先生は、とても優しい口調で、しかしとても深く大切なことをたくさん示してくださいました。改めて「災害時の障害者の2倍の死亡率というのは、たまたま極限状況で数字があらわれただけであり、日本列島のそこかしこに、日常的にその数字は潜んでいる。震災に関係なく、補助犬の問題も同様に、日常的に取り組んでおかないといざというときに間に合わない。」という言葉に、ドキッとしました。改めて震災問題も含め、日常の障害のある方々がおかれている問題とどう向き合うか? それに尽きるのだ、ということを突きつけられ、今後の普及啓発活動も、そこまでの深さで伝えて行きたいと感じました。
 補助犬問題に関して語る時、それは、補助犬のことだけ、補助犬ユーザーのことだけではなく、あくまでも「補助犬」というキーワードの切口であるだけで、最終的に伝えるべきは、全ての障害のある方々のこと、それ以外のあらゆるマイノリティの方々のこと、それらに関する発信が大切なのだと思いました。

 藤井先生、このたびは本当に素晴らしいご講演をありがとうございました。

ご寄付のお願い「日本補助犬情報センター」より

 当会のビジョンは、全国民が正しく補助犬法を理解することで、すべての人が安心して活躍できる社会を実現することです。補助犬ユーザーの社会参加推進活動、普及活動、最新情報収集、資料等作成配布、講演会・イベント等、当会の活動はすべて無償で行われております。
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