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野田明宏の「俺流オトコの介護」

母の肋骨が折れた2

 今回は12月10日掲載の続きとなるのだが、母の肋骨を折ってしまった経緯を書く。
 とりあえずもう一度、スクロールしてその折れている写真(12月10日掲載のブログ)を見て欲しい。整形外科で胸のレントゲンを撮って、それをカメラに納めたモノだ。素人目にもハッキリ分かるから余計に痛々しい。
 さて、この事件は本当にささやかなことが発端だった。この頃、外見だけから母を認知症と判断するのは難しい時期でもあった。会話にしても、「おはようございます」と近所の方から声かけされると「おはようございます」と頭を下げながら微笑んでいた。
 春先の深夜だった。日々の寒暖差が激しく、オレは母にスエットを着せることにした。万年床。布団二つ並べて寝ていたので、オレは隣の母に声を掛けた。
 「和ちゃん、寒いからスエット着ようやあ!」
 眠ってはいなかった。母は、夜になっても眠らないことが多くなっていたから。昼夜逆転の始まりではないか? その疑惑が恐怖となってイライラするオレもいた。
 母を起こし、スエットを差し出したが自分から率先しては着なかった。イライラは増長する。
 「和ちゃん、頼むから着てくれる? 風邪引いてしまうで」
 二度三度。お願いするように。それでも母は手を袖に通そうとしない。確かに、シャツを足から、ズボンを頭から、ということも少しづつ始まってはいた。
 イライラ イライラ
 オレはスエットを、母の頭から突っ込もうとした。途端、私の左手の甲に母の爪先が食い込んだ。
 母が故意にやったとは想像の外。偶然だったはず。でも、痛いことは痛かった。イライラへの上乗せでもあった。
 「イター!!」
 オレが声を上げたと同時、オレの右手は母の左脇腹に伸びていた。平手で、オレの感触では少し強めに叩いてしまった。ただし、この時点で特別、母に異常を見て感じることはなかったのだけれど…
 結局、スエットは着ず終い。
 明け方、母の息づかいが荒いことに気づく。苦悶にはほど遠いものの、それでも表情は厳しい。
 「和ちゃん、胸が痛いんか?」
 「痛いなあ!?」
 しかし、肋骨が折れているなどとは想いもしなかったオレは、デイサービスへ向かわせた。
 やれやれ。
 ところが、母が予定時間より早く帰宅してきた。
 「和子さん、午前中はさほどでもなかったんですが、午後から急に、胸を触って痛い 痛い を連発されはじめて。なにかありました?」
 オレは正直にデイサービス職員に話した。途端、
 「息子さん、それは確定診断へ直ぐに行かないと」
 タクシーで整形外科へ。レントゲン撮影後、医師から。
 「野田さん、こことここの2本。誰の目にも分かるでしょう?」
 シッカリ折れていた。
 肋骨というのは、クシャミでヒビが入ったり折れたりするほど弱いモノであることは承知していた。ましてや、母は骨粗相症でもある。
 病院から帰宅して、母に謝った。胸にベルトを締めた母は、オレの言葉に微笑み返した。今度は、オレの目から涙がこぼれはじめた。
 母子でなければ、ゴメンでは済まされない。
 細い身体に1ヶ月、ベルトを巻いた。時間が治療ということだったが、介護力の足りなさを痛感・露呈する際だった事件だった。
 とはいえ、介護地獄がすぐそこにまで迫ってきていたことに、オレはまだ気づいていなかった。

20101126.png

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コメント


 これは、おとこまえさんの言う”臨界点”へ到達するまでの序章だったのでしょうか。
わたしの場合はもう、想い出したくもありませんね。
介護が一番つらかった時のことなんて・・・
おとこまえさんは、振り返られるのは、さすがだと想います。



投稿者: セブン | 2010年12月17日 14:50

セブンさま

一言

一番辛かったこと
については、
誰にも話していません。
もちろん、どこにも書いてません。


投稿者: 野田明宏 | 2010年12月19日 19:12

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
野田明宏
(のだ あきひろ)
フリーライター。1956年生まれ。約50カ国をバックパックを背負って旅する。その後、グアテマラを中心に中央アメリカに約2年間滞在。内戦下のエルサルバドルでは、政府軍のパトロールにも同行取材等etc。2002年、母親の介護をきっかけに、老人介護を中心に執筆活動を開始。2010年現在、83歳になる母と二人暮らしで在宅介護を続ける。主な著書は『アルツハイマーの母をよろしく』『アルツハイマー在宅介護最前線』(以上、ミネルヴァ書房)など多数。『月刊ケアマネジメント』(環境新聞社)にて、「僕らはみんな生きている」連載中。
http://www.noda-akihiro.net/
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