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野田明宏の「俺流オトコの介護」

父 6人部屋入院

 父を10ヶ月、母と交代で毎日、市民病院の六人部屋で24時間介護したのはオレが36歳から37歳にかけての頃だった。
 1週間や10日そこらなら、厳しい家計からでもなんとか個室を確保しようと努力したかもしれない。ただ、担当医師からは“少し長期の視点で”と最初に説明を受けたので、個室での介護は無視せざるをえない覚悟をした。父は、血液の血小板が著しく減少した状態だった。
 覚悟。大袈裟な表現ではない。6人部屋とはいえ、いつでも空きベッドがあるわけではない。逆に、緊急を要する場合、大部屋に空きがなく個室に空きがあるときなどは経済状況と相談せず心で泣いて個室入院ということもある。
 個室。当然、全額自己負担。保険適用ではない。疾病保険には多くの人が加入はしているが、家計の苦しい人ほど無加入というケースが目立つ。なかなか難しい問題。オレ自身で説明するなら、高血圧の持病があるため疾病・入院時保険は掛け捨てで加入している。
 そうだった。覚悟について。父が治療を受ける6人部屋でのベッドは確保できた。しかし、病棟看護師長(当時は看護婦と呼称。ここでは看護師に統一)から簡単な説明があった。この時点では、母が最初に付き添いをする予定でいた。
 「今、部屋のベッドの空きは一つです。そのベッドは、片側三つあるうちの真ん中にあるベッドです。一週間、とりあえず我慢してください。一週間後、窓際のベッドにお父さん、移動してもらえますから」
 真ん中。介護する立場からは最悪だった。今はどうか知らない。しかし、父の入院時、隣のベッドとの空間幅は1メートルにかなり満たなかったように記憶する。とにかく狭かった。寝袋がやっと敷けるほどだったから。
 どうしよう? 瞬時悩んだ。悩んだ理由は、やはり幅の狭さ。ここに母を泊まらせることに抵抗があった。まだ、隣人の入院患者さんがどんな人だかも分からない。父を部屋に連れていったときには不在だったから。一応、母もオンナであったし。
 決断。了解。オレがここで一週間泊まり込もう。父をベッドに寝させ、オレは院内の公衆電話へ。ウーム!? 今振り返ると、当時は至る所に公衆電話があったなあ!
 母に電話を入れた。とりあえず、母には着替えなどを持参してもらい、帰宅してもらう。母も了解した。排便・排尿は父が自力で行えていたから母も納得したのだと推測できる。
 じゃあ、なんで付き添い? 父は、かなり緑内障が進んでおり、歩けるのだけれど、視野狭窄になっており幅感覚が把握できなくなっていた。円形の筒を覗いて見て欲しい。そのまん丸の範囲以外は視野が欠けているのだ。これは恐い!
 だから、他人様と肩がぶつかることも頻繁。当然、お叱り頂戴。
 しかし、この1週間はキツカッタ。正直、お隣のベッドの方がどんな人だったかは記憶の外だけれど、スコブル気遣いした。床へ直に寝袋だったから身体も痛んだ。
 1週間経過。看護師さんからは、
 「息子さん、よう頑張ったなあ!」
 と誉められながら窓際へ移動。そして、母の到着。窓際はベッドと壁までの幅が身体二つ以上はあった。それが超ワイドに見えてしまったから不思議だ。
 入院となるといろいろだ。病棟名主のような人も存在する。ハルシオンを看護師さんに頼んでは、飲まないで貯めていた人もいた。
 お隣が常識に欠けた患者・介護者だとストレスは急上昇。例えば、テレビをイヤホーンなしで見る。音はデカイ。そのテレビは、父の頭の直ぐそば。
 「スミマセン。イヤホーン着用で見るようになってます」
 オレは、部屋に貼られたイヤホーン着用の紙を指しながらお願いする。お隣とは仲良くしたいけれど、父に忍耐も要求できない。
 夏。クーラーが効きすぎ、効いてないで患者間でケンカにもなる。
 病院大部屋。今も、いろんな泣き笑いドラマが展開されているはずだ。
 
PS
お見舞いの多い患者さんは、個室を選択される方がベスト。大部屋の場合、ただただウルサイだけの雑音。

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母の入院時 夜間声掛け
Photo 蜂谷秀人

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コメント


こんにちは。
野田さん、良く頑張りましたね。
ただただウルサイだけの雑音。
厳しい意見ですが、お見舞いの少ない患者さまのお気持ちを察するとそうですね。
でも、お財布が個室を許してくれない患者さまも多いです。
難しい問いかけですが、これからも、あれこれ発信お願いします。


投稿者: 老看護師 | 2010年09月26日 12:39

野田さま

当時、野田さんがお父さんを介護していたことを知っている看護師です。何度か、会話もさせてもらいました。
一度、ここにコメントさせてもらいましたが、なぜか、載りません。
改めて。
いろいろありましたけど、野田さん、よく頑張りました。
お母様、お大事に。


投稿者: 老看護師 | 2010年09月28日 10:39

老看護師さま

お手間かけました。
そして、ありがとうございます。
O病院の!
10ヶ月も病院で母と交代で寝泊まりしてましたからね。
病棟以外の看護師さんともお話ししてますし。
とはいえ、親しく会話していた方はだいたい記憶に残ってます。
17年〜19年ほど前のことですから 老いますね! お互いに。
老看護師さんも、お身体ご自愛ください。」


投稿者: 野田明宏 | 2010年09月29日 07:53

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
野田明宏
(のだ あきひろ)
フリーライター。1956年生まれ。約50カ国をバックパックを背負って旅する。その後、グアテマラを中心に中央アメリカに約2年間滞在。内戦下のエルサルバドルでは、政府軍のパトロールにも同行取材等etc。2002年、母親の介護をきっかけに、老人介護を中心に執筆活動を開始。2010年現在、83歳になる母と二人暮らしで在宅介護を続ける。主な著書は『アルツハイマーの母をよろしく』『アルツハイマー在宅介護最前線』(以上、ミネルヴァ書房)など多数。『月刊ケアマネジメント』(環境新聞社)にて、「僕らはみんな生きている」連載中。
http://www.noda-akihiro.net/
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