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野田明宏の「俺流オトコの介護」

母が通うデイサービス

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 一生懸命に母がヨーグルトを食べている。デイサービス職員が母の口元にスプーンを差し出すと、本能的であるかのように口を空ける。
 本当に一生懸命。写真を撮りながら、オレはなんだか胸が熱くなり切なくもなった。とはいえ、ヨーグルトだけだけれど、まだまだ口から入る現実に喜びが切なさを駆逐する。
 さて、写真は七月中頃に撮ったものだ。母はオモイッキリ髪を切っている。夏。これでいいのだ。最初は少し違和感もあったけれど、慣れてくると短毛の和ちゃんもなかなか良いではないか。
 で、今回は母が通うデイサービスのお話なのだが、まずはヨーグルト。母の便秘症はかなり頑固。胃ろうで経管栄養にすると下痢をしやすくなる、とも聞いていた。とんでもない。母の便秘症に変化なし。お通じを良くするため、口から食べるを忘れないためにデイサービスは頑張ってくれているのだ。
 今のデイサービスへ通い始めて丸三年が経過した。胃ろうを造設してからだ。
 実は、ここに通い始めて以降、オレは母の排便処理をしていない。全てお任せ状態。一週間に一度、浣腸等をしてからトイレに座って出してくれている。もちろんサイクルが狂うこともあるのだが、そこは臨機応変に行ってくれる。排便については、今、オレより母を把握してくれていること間違いなし。
 「今日はなあ、ホンマにええのが出たんよ。『写真に撮って、息子さんに見せてあげたいなあ!』言うて職員皆で大笑いしよったんよ」
 楽しそうに報告してくれる。ありがたいことだ。
 先にも記したが、母の便秘症はスコブル頑固。半月出なかったこともある。もっとも、浣腸などはせず自然排便に任せていたのだけれど、オレが母の肛門から指を入れても直腸に下りてきていないのだ。直腸にあれば掘り出す。摘便だ。数え切れないほどに母のウンコを掘りました。まあ、在宅介護者であれば誰でもすること。
 ただなあ! 今、突然に母がウンコを肛門にぶら下げている状態と遭遇したら、オレはかなりパニックかも? なんせ、3年間も母の排便処理という実践から遠ざかってしまっているのだから。ヒェー!!
 ところで、8月も終わろうとしている頃に、なぜ7月に撮った写真なのか? ヨーグルトを食べている写真など、いつでも撮れるだろうに? と疑問符の読者方々も少なくないと想像する。
 この写真を撮った日、母以外に胃ろうの利用者さん二人。利用者さん九人中三人が胃ろう造設者だった。この日は利用されていなかったけれど、もうお一人胃ろうの方が。四人も胃ろう造設者を受け入れているデイサービスは珍しい。定員九名の小規模デイサービスでだ。他利用者さんも要介護度が高く、オレがパチパチするためにアチコチ動いたら狭いデイサービスなので迷惑を掛けること必至。オレも、そこら辺りは配慮しなければならない。
 実は、このデイサービスは介護保険が始動する以前から稼働していた。岡山市というより岡山県下で、介護の世界では一目置かれていた。今も、研修という名目で勉強に来る介護職は少なくない。当然、オレも噂は聞いていた。
 母がアルツハイマーを宣告されて、まず頭に浮かんだのがここだった。デイサービスへ通わせながら在宅介護。
 翌日には直接訪ねた。ところが、どの日も定員イッパイ。空きが全くなかったのだ。仕方ないな。というのが実感だった。しかし、失望も大きかった。
 そして、四つのデイサービスを経験して、改めて今のデイサービスへ通い始めて三年だが、胃ろう造設して後のデイサービスが決まらず、悩んでいたところへケアマネジャーからの朗報だった。
 驚いた。ここは無理だ、と最初から諦めていたから。
 今、デイサービスへ出してるとき、オレは全く心配していない。もし、なにかあっても、それは母の運命なんだと思えるようになった。そこまで信頼しきっている。
 時々、介護保険枠外で母の時間延長をお願いする。一時間千円。相場だろう。だけど、母に対応する職員は二人。不測の事態があったとき、一人では対応仕切れないからと管理者のTさんは言ってくれる。感謝!
 認知症在宅介護。なかなかじゃないけれど、暖かくも優しい人たちに囲まれている。
 幸せ。
 オレにはあまり縁がなかったけれど、最近、この二文字が直ぐそばにいてこれることを実感することも多くなった。

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コメント


はじめまして。
一通り全部読ませていただきました。
お母さん、全力で頑張っていますね。
これからもお母さん頑張ってください。


投稿者: 熊夫 | 2010年09月10日 15:51

熊夫さま

はじめまして。
全て読まれましたか?
お疲れさまでした。
そして、ありがとうございます。
そうなんですよ。本当に一生懸命です。息子として辛くなるほどに!
でも、ヨーグルトなら口から入るんです。
まだまだ頑張って欲しいです。
これからもヨロシクお願いします。


投稿者: 野田明宏 | 2010年09月13日 20:10

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プロフィール
野田明宏
(のだ あきひろ)
フリーライター。1956年生まれ。約50カ国をバックパックを背負って旅する。その後、グアテマラを中心に中央アメリカに約2年間滞在。内戦下のエルサルバドルでは、政府軍のパトロールにも同行取材等etc。2002年、母親の介護をきっかけに、老人介護を中心に執筆活動を開始。2010年現在、83歳になる母と二人暮らしで在宅介護を続ける。主な著書は『アルツハイマーの母をよろしく』『アルツハイマー在宅介護最前線』(以上、ミネルヴァ書房)など多数。『月刊ケアマネジメント』(環境新聞社)にて、「僕らはみんな生きている」連載中。
http://www.noda-akihiro.net/
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