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先輩介護者に聞こう 認知症在宅介護 お悩み相談

認知症の初期、本人や近所の人に、どう対応したらよいでしょうか。

【質問】
近所の商店から「お母さん、お金のやりとりがむずかしくなったみたいだけれど。心配で……」と連絡が来ました。どう対応したらいいのでしょうか。

【回答】
認知症の症状は、まず家族が気づき、次に世間が気づくようです。心配の連絡をして下さったご近所でよかったですね。きっと、日頃のお母様やあなたのご近所づきあいがよかったのでしょう。

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 私の妻にも同じようなご注意がありました。「財布を広げて、お金を取ってちょうだい」とお店で言ったのです。「ウチみたいな昔からのお付き合いの店なら奥さんをよく知っているからいいけれど、新しいお店でよそからの店員だと、何か間違いがあるとお互いにいやな心地になるから」とのご忠告です。妻が買い物でお金のやりとりが難しくなっていると初めて知りました。その前から、財布をお店に置き忘れ大騒ぎで探し回ったこともあったのですが、まさか勘定までとは。「異変が起きているのでよろしく」とお店に話し、妻は一人にしないで、なるたけ付き添って行動するようにしました。銀行に妻と行って、ATMの操作を妻がフロアの係員に頼むのに唖然としたこともあります。機器の操作が難しくなっていたのです。
 妻といっしょに行動すると、妻の難儀さや支え方が分かってきます。「温かくなったわね」と挨拶されて「寒いわね」と応じたときは、怪訝な顔のご近所衆にその場を言いつくろい、後からよろしくとご挨拶しました。お友達と喫茶店に行ったり、一人で美容室に行くのも、前からの知り合いで以心伝心で通じ合える仲なら大丈夫ですが、そうではない、例えば新しく入った太極拳サークルでは、妻はあっというまに一人寂しく孤立してしまいました。夫婦で参加しても、例えばそば打ち会では会話がうまくできないので寡黙になって私にくっついてばかりでした。
 うまく人の輪の中に入れない、入れてもらえない。これが認知症の初期の、本人が一番寂しく思い不安になり苦しむことです。そこをうまく支える、それが家族の役割ではないでしょうか。

 質問のお母様の件では、ご近所の行きつけの商店なり仲良しの主婦、お付き合いのサークルの友達とかに様子をひそかに聞いてみるといいでしょう。働いている人の場合は、職場で異変が噂になっているかも知れません。世間は親切なようで残酷ですが、窮状を訴えればまた親切なものです。とくに介護保険制度が平成12年に始まってからはガラリと世間の雰囲気が変わりました。認知症サポーターも全国で100万人を超え、認知症の人と家族はぐんと地域で暮らしやすくなっています。ひるまず、愛するご本人のため様子を聞き心配を訴え助力を頼みましょう。
 耳にしたことは家族が気づいたこととともにメモにしましょう。受診するとき役立ちます。

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春を告げるまんさくの花

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プロフィール
長谷川正
(はせがわ ただし)
東京都立高校の英語教員時代に、8歳年上のマリ子さんと出会い結婚。4人の子どもに恵まれる。 平成6年、マリ子さんが68歳のときに記憶障害が現れはじめ、2年後にアルツハイマー病と診断される。それから11年間、精一杯認知症と戦い、平成18年1月に自宅で看取る。 現在は、「認知症家族の会・青梅ネット」代表および認知症キャラバンメイトとして、東京を中心に各地で講演するとともに、家族会を開催し相談にのっている。
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